• 株主手帳編集部

いちご【2337・東1】サステナブルインフラを通じて人や企業を主役に安定した事業基盤で 株主還元も重視の姿勢

いちごは、駅前など大型ビルのオーナーとして知られる。社名は『一期一会』を由来にし、2000年3月に設立した。安定した事業基盤を構築しながら、株主還元も重視している同社。今期からは新たな長期VISIONを策定しており、これからの取り組みについて取材した。





長谷川拓磨社長

プロフィール はせがわ・たくま

2002年11月に入社。2007年上席執行役CMO、2008年上席執行役、2009年取締役兼執行役副社長不動産部門責任者を経て、2015年に執行役副社長となる。同年、取締役(現任)兼代表執行役社長(現任)に就任。









│まず、事業内容を簡略に説明して下さい。


長谷川拓磨 取締役代表執行役社長(以下、長谷川社長)

 当社は、サステナブルインフラ企業として3本柱の事業で展開しています。1番の柱は「心築(しんちく)」事業。もうひとつがJREITや私募ファンドの運用を行うAM(アセットマネジメント)事業。3本目がクリーンエネルギー事業となります。不動産や陽光発電所を通して新たな価値の創造と、社会貢献をしていくという事業構造です。収益でいうと心築事業からなる収益が全体の約85%。残りの15%をAM事業とクリーンエネルギー事業で構成されています。


│心築事業にはどのような特徴があるのでしょうか。


長谷川社長 日本だと通常建て替えてしまうような築30〜40年の鉄筋コンクリートのビルを、建て替えずに付加価値をつけていくという事業モデルです。前期は総還元性向38%と、株主重視の姿勢が見受けられますが、株主還元方針について教えてください。

長谷川社長 累進的配当政策というものを掲げています。原則的に減配せず、増配もしくは配当を維持します。不動産業界は外部環境に左右されやすい業界ですが、その影響を受けない強い事業モデルをっていくという意味でも掲げています。

 もう一つは、株主の皆様からお預かりした資金をいかに効率的に運用して利益を出すかという意味で、DOE(株主資本配当率:株主資本に対して、企業がどの程度の利益配分を行っているかを示す財務指標。配当性向とROEを掛けて算出される数値)3%以上としています。期ごとの利益変動に左右されず、長期にわたって安定的な配当の成

長を目指しています。


│自社株買いも積極的なようですが。


長谷川社長 昨年、一昨年と30億円ずつ自社株買いを実施しました。これからの長期ⅤISIONの中でも、機動的な自社株買いというのは実施していきたいと思っています。これらの結果、40%近くの総還元性向に繋がっていると理解しています。


│長期VISIONについて教えてください。


長谷川社長 長期VISION『いちご2030』として、11年先に向けた長期VISI

ONを策定しました。

 前中計で掲げたKPIはすべて達成をしました。KPIを掲げたものに関しては、しっかりと実現していく会社だと認識いただいております。一方で想定していた事業の拡大とは違う形に着地をしました。

は、増資ができる市場環境ったことから心築事業は好調でしたが、REIT事業の拡大をイメージしていたAM事業は、増資ができる市場環境になく、そこまで伸ばすことができませんでした。3カ年の中計は必ずしもイメージ通りにいくとは限らない部分もあり、これから

10年先にどういった企業を目指すのかというものを作った方がいいだろうと考えました。


│長期VISIONの最終的な数値目標をお伺いしたい。


長谷川社長 前・前々中期経営計画から継続しROE15%以上を謳っております。長期VISIONでは、積極的なIT投資や事業への先行投資を行い、初期はROEの低下

が見込まれますが、11年間の期間平均が15%以上を目標としております。

 もう一つは、エコノミック営業キャッシュフローという考え方。不動産売買のためのキャッシュフローを差し引いて、当期利益に対してキャッシュフローがしっかりと上回っていくということを掲げています。

 また、外部環境に左右されやすい業界ですので、ストック収益の比率を上げていきま

す。私共の収益モデルにおけるストック収益は、AM事業からのAMフィーと心築事業での不動産を保有していることによる賃貸収入、クリーンエネルギー事業で保有している発電所からの売電収入。フロー収入は、主に不動産の売却で得られたキャピタルゲインです。今はおよそ半々ですが、このうちストックを6割くらいまで持っていきたいと思っています。

 最後に、引き続きJPX日経400へ組み入れを続けていきたいと考えております。


│長期VISION達成に向けて、特に重要ととらえている点はどういった部分でしょうか。


長谷川社長 「サステナブルインフラのいちご」と謳っています。サステナブルというのは「持続可能な」という意味です。私共としては、不動産は人々が生活するための大事な生活インフラそのものだと考えています。不動産を通して展開している事業以上に、提供できるサービスや付加価値があるのではないかと考え、そこにコミットしていく企業という意味でサステナブルインフラと掲げています。


│具合的にはどのようなイメージでしょうか。


長谷川社長 不動産を通して、いちごのビルに入居しているテナント様や、利用していた

だいている方を主役とした、プラスアルファの事業展開をできたらいいなと思っています。そういったものをITやシステムを活用し、お客様の需要に答えていきたい。

 例えば、新宿に『THEKNOT(ノット)』というブランドのホテルを保有しています。ホテルのサービスやホスピタリティに力を入れていくうえで、手間になるのが客室の予約の管理・仕組み。部屋が空いていれば旅行代理店に開放するほか、ネットで空室情報を出して予約を埋めます。ここで予約システムの管理・運営をしますが、このシステム自体を実はいちごが自社で開発をしています。ホテルというのはレベニューマネジメント(日々の客室単価設定)といって、同じ部屋でも日によって料金が違っていたりしますよね。これをAI(人工知能)を使って自動的に在庫の状況と、マーケットに出ている価格の状況を見な

がら、適正価格を常にネット上で自動的に公開していく仕組みを富士通と共同で開発し、この春にほぼ完成しました。テスト運用を始めています。


│今年からはJリーグのトップパートナーとなっていますね。


長谷川社長 今シーズンからJリーグのトップパートナーになりました。スタジアムの運営、練習場、選手の寮などの部分をソリューションとして解決できる企業にスポンサーになってほしいというJリーグの要望と、当社としての地方活性化などで日本を世界一豊かにするという理念と合致しました。

 ゆくゆくはスタジアム(ボールパーク)への投資をしていきたいと思います。世界的にみると、商業施設が併設されていたり、公共サービスが受けられる施設が入っていたり、街とスタジアムが一体となっているものが世界中にはたくさんあります。

 Jリーグのスタジアムは駅から遠い立地に多くあります。周りに何もないというケースが珍しくなく、2〜3万人収容できるスタジアムだと、試合だけ見て帰るというのはもったいない。見に来たサポーターの方にとっても、スタジアム周辺で観戦以外の楽しみがあれば一日を楽しく過ごしていただけるのではないかと思っています。

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