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いであ【9768・東1】600人の環境コンサル専門集団AI導入等で23年に売上高200億円へ

環境コンサルタント首位のいであ9768)が、新技術開発に力を入れている。昨今話題となる海洋ゴミ・マイクロプラスチック分野には、深海でも活動できる自律型無人潜水機等を開発。また、AIやロボットといった新技術も積極的に導入する。武器の技術力に磨きをかけ、創立70周年に当たる2023年に連結売上高200億円を目指す。



田畑彰久社長

プロフィール:たばた・あきひさ

1970年8月、東京都出身。1996年東

京水産大学(現東京海洋大)院修了、

いであに入社。13年取締役経営企画

本部長、16年常務取締役経営企画本

部長。17年、取締役副社長経営企画

本部長海外事業担当を経て、19年代

表取締役社長(兼)経営企画本部長

に就任(現任)。



多数のスペシャリスト抱える

環境と建設の総合コンサル


 民間初の気象予報会社として1953年に創立した同社は、1968年から環境コンサルタント分野に参入。以来、同分野でリーディングカンパニーであり続けている。

「環境コンサルタント」とは、環境保全に関する提案や調査といったコンサルティング業務を行う仕事だ。日本では、ある一定規模の開発事業等を行う場合、事前に周辺環境への影響を予測、評価する環境影響評価を実施しなければならない。例えば港を建設する場合、環境コンサルタントは魚や貝、水生昆虫等の生態系や水質、物理環境、水流等を把握し、構造物によってどのような影響が出るかを予測。それに基づき、改善策の提案や地域住民への説明等を実施している。

 建設コンサルタント等土木の総合情報誌「日経コンストラクション」によると、いであの2018年12月期における建設環境分野の売上高は、2位に約50億円の差をつけ、堂々の1位。同社が同分野で他を圧倒する理由は、主に2点。1つ目は、技術部門ではあらゆる分野のスペシャリスト約600人が在籍することだ。

「1つの案件を評価するには、様々な専門家が協働しなくてはなりません。同業界では、例えば水質調査、理化学分析、生物同定等、それぞれ専門分野に特化した会社が多い。一方、当社はあらゆる分野で専門家がいるため、もし分析結果がおかしければすぐに社内の調査部門にサンプル採取時に何か特別な状況がなかったか問い合わせることができます」(田畑彰久社長)

 2つ目は、同社の建設コンサルタント事業と協業できる点だ。建設コンサルタントはインフラの企画や調査、管理等を行う仕事。同社は2006年、同業界の草分け的存在の「日本建設コンサルタント」と合併。このため、環境コンサルタントと建設コンサルタントは「ダム建設時、どんな魚道を作れば魚が遡上できるか」や「貝が付かない海の構造物をどう作るか」等、様々な分野で協業できる。



技術力で高利益率案件を獲得


 同社の前期連結業績は、売上高が前期比5・4%増の185億円、営業利益が同22・1%増の14億円。売上高をセグメント別にみると、環境コンサルタント事業が全体の64%、建設コンサルタント事業が32%を占めた。

 特筆すべきは、技術力が重視される契約方式による受注高が高いこと。業種上、同社の取引先は国や地方自治体等が多いが、その際の受注形式は「競争入札」「総合評価落札方式」「プロポーザル方式」「随意契約」に大きく分かれる。「競争入札」は基本的に価格勝負のため、時には予算の3割や半額で入札してくる会社と闘わなくてはならない。一方「総合評価落札方式」では、予算や提案書等が点数に換算され、総合点数で競う。

「プロポーザル方式」は提案書のみで勝負するため、「競争入札」と比較すると利益率が高い。「随意契約」は特殊な技術が必要な場合等に、任意で契約を受ける。

 いであの前期業績は、「競争入札」以外の方式による受注額が、全体の76%に達している。「76%が何らかの技術が評価されているということ。高付加価値の業務を受注するように心がけています」(同氏)



海洋ゴミ・マイクロプラスチック

問題向け技術開発を推進


今年から始動した第4次中期経営計画では、最終年となる2021年12月期の連結売上高で194億円を目指す。一見保守的に見えるが、これは2023年に連結売上高200億円を達成するための布石だ。


水深2000mまで潜行できる自律型 無人潜水機「YOUZAN」

「足元の事業環境が良いうちに、さらなる飛躍に向けて人材育成や技術開発、新規事業等に注力します。将来の新たな収益基盤構築に向けた準備期間という位置づけですね」(同氏)

 目標達成に向けた重点課題は、「新規事業の創出・新市場の開拓と技術開発の推進」や「海外事業の拡大と海外展開の推進」、「IoT・ロボット・AIなど先端技術の利活用」等8つ。

「技術開発」では、水深2000mまで潜航できるAUV(自律型無人潜水機)「YOUZAN」を開発。昨今問題になっている海洋ゴミ問題にも活用できると注目され、6月に開催されたG20大阪サミットに展示された


3Dスキャナーを搭載した水中ロ ボット「ROV」


また、3Dスキャナーを搭載した水中ロボット「ROV」も開発。音響を利用して水中の地形や魚礁等の構造物の形状が計測できるため、ダムや橋等のインフラ点検や水生生物の調査にも活用している。

「海外事業」については、地球規模の環境汚染に関わる事業に注力。近年は水銀に関する水俣条約関連業務の受注が増えている他、マイクロプラスチックの分析業務等も増加している。 






リカレント教育取り入れデジタル技術の普及進める


「IoT・ロボット・AIなど先端技術の利活用」では、リカレント教育を代表する人材教育制度と組み合わせて導入を進める。同社は3年前から、社員を大学院のIoT・ロボット・AI分野の学科に通わせる取り組みを開始。その社員が講師となり、他の社員に対し研修を実施している。

「この前も、当社の富士イノベーションセンターに素質のある人を20名程度集め、1週間缶詰で研修を行いました。AIの使い方は、1日か2日でそれなりの知識があれば結構覚えられるそうです。ワードやエクセルの感覚で、みんなが使えるようAI等デジタル技術の普及には力を入れています」(同氏)

 今後も、同社は人材育成や新技術開発等を推進することで、更なる成長を図る構えだ。

「様々な専門家が社内にいて、協業できる。これにより非常に高い品質が確保できることが、弊社の最大の強みとなっています」(同氏)