• 株主手帳編集部

はるやまホールディングス【7416・東1】多角化経営あらためスーツに回帰「健康」焦点に精力的な開発行う

 はるやまホールディングスは、1974年の設立から地元・岡山を中心に、全国へ店舗を展開、商品開発力を強みに業績を拡大してきた。アパレル業界全体が厳しい冬の時代に、「スーツで日本を健康にする」を旗印として掲げ、新たな市場を創出しようとしている。

治山正史社長

PROFILE はるやま・まさし

1964年12月生まれ、岡山県出身。89年立教大学経済学部卒業後、伊藤忠商事入社。94年6月はるやま商事(現はるやまホールディングス)入社。取締役社長室室長、常務取締役などを経て、2003年6月代表取締役社長。11年7月代表取締役社長執行役員(現任)。




前期売上高555億円 有名企業と次々コラボ


 同業他社が多角化経営へと舵を切る中、主力の紳士服に回帰、事業の選択と集中を深めているのが、はるやまHDだ。過去にはカジュアル衣料分野や飲食業にも進出したが、利益率の低さや、紳士服とは異なる商品サイクル等を鑑み、主力事業へ経営資源を集中させる方向に方針を転換した。2019年3月期の売上高は555億円。紳士服市場で、青山商事、AOKI、コナカと共に、4強のうちの一角を占める。

 同社が近年注力しているのが、「健康」だ。大阪府立大と組み開発をした、着用行動時のカロリー消費のサポートを目指す「スラテクノスーツ」、衣服圧を軽減し着用者のストレスを感じにくくする「ストレス対策スーツ」や、タニタやファイテンとコラボレーションしたものなど、健康というワードを軸に、精力的な商品発表を行ってきた。

 治山正史社長が「健康」に注目したきっかけは、2011年の東日本大震災。東北地区40

店舗が被災したばかりか、人的被害も被った。それを機に、「生活や人生で一番大切なのは命であり健康。それに対して何か我々が支援していけたら」という考えに至ったという。

「2015年には健康宣言を出しました。ひとつ目は、お客様が健康になるような商品を開発し、販売すること。二つ目は、お店をお客様が健康になるような拠点にすること。三つ目は、社員を健康にすることです」(治山社長)

 現在、店舗の一角に健康ステーションを設け、血圧や体脂肪等の計測機器やサプリメントを置くなどしている。社員に対しては、退職者から聞き取りを行い、その理由に対応した制度設計を行うことで退職者を減らす「退職者ヒアリング」や、シニア就業支援制度、残業をしない生産性の高い社員にお金を支給する「NO残業手当」というユニークな試みも行う。2018年には、女性の積極採用や、女性が働きやすい環境を作るための取り組みが評価され、女性活躍推進法に基づく厚生労働省のえるぼし認定も取得している。


累計450万着を突破「アイシャツ」がヒット


「元々、商品開発は好きだし得意な分野」(同氏)という同社のワイシャツ分野でのヒット商品に、「iーShirt(アイシャツ)」がある。今秋には、累計450万枚を突破した。元々は2008年の北京オリンピックで、日本選手団の公式服を製作することになったのが開発のきっかけだ。JOCからの要望は、「猛暑の北京で着用する、吸汗速乾に優れ、ストレッチが効いてストレスがかからないもので、なおかつ記者会見でもカッチリ見えるシャツであること」。この高いハードルをクリアするために、2002年の日韓ワールドカップで日本代表が着用したユニフォームの「糸」を、アイシャツに使用した。アイロンをかける必要がない手軽さが消費者に受け、Amazonランキング ワイシャツ部門売れ筋ランキング(※)1位を獲得(2019年9月3日時点)というヒット商品に成長した。

 今年の4月には、進化系の「ECO iーShirt(エコアイシャツ)」も発売。ペットボトルが原材料の再生ポリエステル100%生地で、アイシャツ同様、ノーアイロンで吸水速乾性を持つ。

「ノーアイロンの基準は5段階で示され、一般的に3・5や3・7といった商品も多いですが、5段階中5と『完全ノーアイロン』表記がOKの評価をいただいているのは世の中で当社の製品だけです。また、梱包の際、プラスチック製の留め具など余分なものは徹底的に省き、紙箱での包装にしています。ポストにも入り再配達防止にもなるパッケージの開発も検討中です」(同氏)

 この商品は、2019年のグッドデザイン賞も受賞している。



M&A戦略を加速化 業界シェア拡大目指す


同社は昨年、一昨年と、次々にM&Aを実施。ビッグサイズメーカーのマンチェス、ビッグサイズ専門のeコマースであるミッド・インターナショナル、スーツ工場の田原コンサートなどを買収した。スーツ全体のクオリティを上げ、新しい物づくりをしていくためだ。近年国内市場では、ファストファッションや、メルカリのようなリユースを利用する消費者が増加。アパレル業界の市況悪化と同様に、紳士服の国内マーケットも苦境が続くが、「紳士服の業界ではシェアはまだまだ発展できるポジションにある」(同氏)とみる。

「スーツ離れが起きていて、そもそもモノの消費自体、皆さん考えるようになったということだと思います。しかし、iPhoneが電話の市場を変え、固定電話は死滅したけれども携帯電話では新たな市場が創出されたように、スーツ業界でもスーツそのものの定義を変えることで、まだまだマーケットボリュームを増やすことができると考えています」(同氏)


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