アサヒホールディングス【5857・東1】貴金属リサイクル、産廃、北米精錬の3本柱 22年3月期は5期連続過去最高益更新へ


 アサヒホールディングスは、貴金属を含むスクラップを回収しリサイクルする貴金属リサイクル事業、産業廃棄物の適正処理を行う環境保全事業、鉱山会社などから金・銀の原材料を入荷して高純度地金に精製する貴金属精錬事業の3本柱を展開している。2021年3月期の営業利益は4期連続過去最高益を更新。22年3月期も5期連続過去最高益更新の見込みだ。中長期的には、北米で展開中の貴金属精錬事業をグローバル展開する計画であり、第9次中期経営計画ではその基礎固めに注力する。


 

東浦 知哉社長

Profile◉ひがしうら・ともや 1961年1月26日生まれ、大阪府出身。84年大阪大学人間科学部卒業後、日本電気(NEC)に入社。2001年アサヒプリテック入社、06年同社取締役に就任(現任)。11年アサヒホールディングス取締役、18年同社代表取締役社長(現任)、20年同社最高経営責任者(CEO)に就任(現任)。





 

顧客に密着した営業体制と

高度な技術、ノウハウが強み


 アサヒホールディングスは、貴金属事業(貴金属リサイクル・貴金属精錬)と環境保全事業の2つのセグメントを展開している。2021年3月期の売上収益は1647億7600万円であり、売上比率は貴金属事業が87・9%、環境保全事業が12・1%を占めている。

 貴金属事業のベースとなっているのが、祖業の写真感材事業から発展した貴金属リサイクル事業だ。

 顧客(回収先)は、エレクトロニクス分野、デンタル分野、宝飾分野、触媒分野など多岐にわたる。エレクトロニクス分野では、電子基板や端材を回収し、粉砕・選別などのプロセスを経て貴金属リサイクルを行っている。デンタル分野では、歯の治療に使われるクラウンやインレーなどの補綴(ほてつ)物を歯科医院などから回収してリサイクルを行っている。

 強みの1つは正社員による顧客に密着した営業体制だ。同社正社員が直接、原材料の回収先である顧客を訪問し直接回収している。

 2つめの強みは高度な技術とノウハウの蓄積にある。幅広い分野から回収される原材料を最適な方法で効率的に回収しリサイクルする技術を確立。デンタル分野ではシェア約7割弱、他の事業分野でも4割近くのトップシェアを獲得している(シェアはアサヒホールディングス調べ)。

 また近年は、IT活用に注力。デンタル分野では、歯科医院などの顧客からリサイクル原料として提供される貴金属を電子通帳上で預かり、預けた顧客はパソコンやスマートフォンで残高を確認しながら任意のタイミングで売却決済できる『アサヒメタルアカウントシステム』という独自システムを運用している。

「かつて歯科分野では、金だけを目利きで算定してその場で現金で買い取る取引が主流でした。しかし、当社は歯科用合金に含まれている銀やパラジウム、プラチナにも着目しました。最新装置を用いた正確な分析と貴金属相場を基準とする透明性の高い取引方法を導入したことで高く評価され、ここから事業の多角化を進めました」(東浦知哉社長)


日本で唯一産廃処理を全国展開

約150人の営業員配置


 第二の柱の環境保全事業では、産業廃棄物処理事業を展開している。教育機関、研究所、病院、官公庁、製造業などを取引先とし、収集運搬から処分まで顧客のニーズに合わせた幅広いソリューションを提供している。

 産廃処理の市場規模は約5・3兆円と比較的規模の大きい業界ではあるが、市場構造を見ると、中小零細規模の事業者が全体の9割以上を占めている。日本では自治体ごと、また取り扱い物ごとに申請許可が必要であり、地域ごとに分散した各社の営業は自社の施設や許可のみに依存する傾向にあるという。

 こうした業界において、同社は日本で唯一、47都道府県すべてにおいて産業廃棄物および特別管理産業廃棄物の収集運搬業許可を取得。また、全国に約150人の営業員を配置し、顧客ニーズを起点とするコンサルティング営業を行うことで、自社工場だけでなくグループ外の協業先と連携し、安全性、コストやCO2削減など様々な観点から最適なソリューションを提供している。

「前期はコロナ禍の中、病院や老健施設から多くの医療系廃棄物の処理を、また製薬や半導体などの業界からは多くの化学系廃液の処理を委託されました。工場をノンストップで稼働したことで産業活動や市民生活の安定と持続に貢献できたと考えています」(同氏)

 現在、同事業の強みをさらに活かすためデジタル化に努めている。当面の取り組みとして、顧客の廃棄物関連事務をデジタルで作り直し、それを媒介して適正処理や資源循環を促す社会的土台を築くプロジェクトを進めている。


世界最大規模の

北米貴金属精錬事業を買収


 第三の柱であり中長期視点で成長を見込んでいるのが、北米で展開している貴金属精錬事業だ。

 15年に英国のジョンソンマッセイ社から米国・ユタ州とカナダ・オンタリオ州に事業拠点を持つ金・銀の精錬事業を買収。さらに19年には米国・フロリダ州のリパブリックメタル社の資産買収を行い、精錬した地金をコインやバー形状に加工するミンティング事業などの資産を取得した。

「当社の北米精錬事業は世界5大リファイナリー(貴金属精錬事業者)の一つであり、米国とカナダの両施設を合わせると世界最大規模です。金・銀ともに北中南米市場トップシェアを有しています。これまで当社の事業は日本とアジアを拠点としていましたが、成長の土台を維持するため北米での事業買収に踏み切りました」(同氏)

 買収直後、精錬事業は取引先である鉱山会社からの精錬業界に対するプライシングプレッシャー(精製料値引きなどの取引条件圧迫)が厳しく業績は低迷した。しかし、精錬事業をプラットフォームとした収益源泉の多様化に舵を切り、17年度(18年3月期)には黒字転換を果たした。そのきっかけとなったのが、「前渡し取引」に代表される金融サービスの拡大だ。

「前渡し取引」は、鉱山会社から金・銀の原材料を預かる時点で、同社が金融機関から調達した製品地金を返却する取引。通常、原材料入荷から高純度の製品地金に精製して返却するまで約1週間を要するが、顧客によってはそれよりも早期で返却を要望することがある。この要望を受けて通常の納期よりも早期に製品を返却する取引であり、同社は鉱山会社から前渡し期間に応じた金利を受領する。

「前渡しは貸し付けと同じであり、安定した金利収入が得られます。一方で、当社の工場に入荷されている原材料はヘッジ済みの金・銀なので貸し倒れのリスクはありません」(同氏)


『北米モデル』世界展開へ

現中計で基礎固めに注力


 18~20年度の第8次中期経営計画では、すべての年度で計画を上回る実績を達成。特に20年度は貴金属リサイクル事業の市場シェア向上や貴金属価格の上昇、北米の金融サービス事業やミンティング事業などが業績に貢献した。

 一方、この期間はスクラップ&ビルドによるポートフォリオ刷新を実施。祖業の写真感材事業からの撤退、ライフ&ヘルス事業セグメントの廃止などを実施し、事業基盤の強化を図った。

 21年度(22年3月期)の連結業績予想は、売上収益1900億円、営業利益260億円の増収増益、5期連続の最高益更新となる見込みだ。

 21~23年度の第9次中計は「独創性と成長を追求するグローバル企業へ」をスローガンに掲げる。中長期的には、北米精錬事業をグローバル展開する計画であり、現中計ではその基礎固めに注力する。

 その1つとして、倉庫事業に進出。コメックス(ニューヨーク商品取引所)と連動した倉庫をニューヨークで運営し、取引分野での新しい収益基盤を確立する。ミンティング事業において、各国政府が計画的に発行するソブリンミント(1オンス金貨)の製造受託を目指す。リサイクル由来の原料から生産する「グリーンゴールド」など付加価値の高い製品供給にも注力していく。

「金銀の精錬事業をプラットフォームとした金融サービス事業やミンティング事業の拡充に加えて、倉庫事業の立ち上げなどを通して収益性をさらに高めます。この『北米モデル』をいずれは世界展開したいと考えています。国内事業においては、今以上にシェアを高め、より支配的な市場ポジションを達成したい」(同氏)

 また、国内における新事業プロジェクトとして、廃棄物発電によって生み出された電力を用いて水素を製造・供給するビジネスに挑んでいる。低炭素化社会への貢献ポテンシャルは高く、環境省のCO2排出削減対策に関する事業に採択された。


株主還元は配当性向40%

安定的に継続していく


 同社の株主還元は、配当性向40%を目処とし、安定的に配当を継続することを基本方針としている。21年度は1株当たり90円を予想している。

「16年度は北米精錬事業の不調の影響などで赤字でしたが、減配することなく配当を維持しました。成長戦略のための設備投資やM&Aに必要な内部留保を図りながら、現在の年間配当水準から目減りさせることなく、安定した株主還元を確実に実施していきたいと考えています」(同氏)










▲貴金属リサイクルの事業分野(写真上から)Eスクラップ、デンタル、宝飾、精密洗浄、表面処理、触媒







▲環境保全事業では︎各種廃棄物の無害化や適正処理を行っている


 

2021年3月期 連結業績

売上高

1647億7600万円

前期比 21.5%増

営業利益

251億2600万円

同 39.5%増

経常利益

261億3600万円

同 48.1%増

当期純利益

257億2500万円

同 161.3%増


2022年3月期 連結業績予想

売上高

1900億円

前期比 15.3%増

営業利益

260億円

同 3.5%増

経常利益

260億円

同 0.5%減

当期純利益

182億円

同 29.3%減

※株主手帳4月号発売日時点