• 株主手帳編集部

ウィルズ【4482・マザ】上場企業と投資家を繋ぐ株主管理プラットフォーム運営株式市場の活性化と企業価値の最大化目指す

 ウィルズは株式市場における個人投資家の積極的な参加を促すマーケティングwebサイト「プレミアム優待倶楽部」を運営する企業だ。海外の機関投資家などの株保有状況がわかる情報サービス「IR─navi」も展開。効率的な資本市場の実現と企業価値の最大化を目指している。


杉本光生社長

PROFILE◉すぎもと・みつお

リクルートコスモス、インテリジェンスを経て、アイ・アールジャパンに入社。その後ストラテジック・アイアールの経営に参画。2001年ジー・アイアール・コーポレーション取締役。2004年10月、当社を設立し代表取締役社長に就任。




個人株主の存在感低下

機関投資家が市場を占有


 日本はバブル崩壊後、海外の大口機関投資家が市場を占有し、企業にとって最良の長期安定株主である個人投資家の存在感が低下した。一方で上場企業は外国ファンドなどからの買収や様々な圧力のリスクにもさらされている。

 そこで、こうした課題に対応して、同社が独自に開発したサービスが、個人投資家向けプラットフォーム「プレミアム優待倶楽部」と、企業向け株式保有情報プラットフォーム「IR─navi」だ。

 同社の2019年度の売上高は前年度比54・4%増の17億9300万円、営業利益は181・7%増の3億1000万円。うち「プレミアム優待倶楽部」事業の売上高が前年度比82

・4%増の12億2500万円と7割近くで「IR─navi」事業が2億6000万円。

 また主力サービス以外には、IRコンサルティングを行う「ESGソリューション」事業も展開し、売上は2億8600万円となっている。


ポイントを自由設計

投資家の動向を促す


「プレミアム優待倶楽部」は上場企業の株式ポートフォリオの最適化を支援する目的から誕生した。

 同サービスを導入した企業は自社の株主に対し、ポイント付与という特典によって航空会社のマイレージ会員のように囲い込みができる。これを利用する個人株主は配当や優待に加えてポイント付与のメリットがある。現在は時価総額が数百億円の新興企業を中心に43社が導入している。

 多くの上場企業は配当や優待によって個人投資家に自社株を所有するメリットをアピールし、その人数・持ち株数を増やそうとしている。しかし配当取りやクオカードが目当ての短期保有が多いのが実情だ。その上、最低単位株の個人株主ばかりが増え、本来目指している層の拡大に結び付かないという問題もある。

「プレミアム優待倶楽部ではポイント還元率を自由に設計できます。例えば『長期で自社株を保有してほしい』『もっと保有株数を増やしてもらいたい』『議決権の電子化を進めたい』など企業によってニーズは様々です。これらにポイント還元でインセンティブを付けることで、株主の動向を一定方向に促すことができます」(杉本光生社長)

 ポイントで交換できる商品は5大シャトーのワイン、高級和牛など高額品を中心に約4400種類用意。ポイントは合算して様々な商品と交換できる。また同サービスを導入する他社の株保有で得たポイントも合算して使用でき、まさにマイレージ同様だ。

「安定株主層の多い50代以上の富裕層に合わせた品揃えが人気ですが、投資家に魅力なのは実質利回りのアップ効果です。株配当に加え、ポイント付与によってさらに実質利回りが増え、2%台だったのが計算上4%にアップすることもあるからです」(同氏)


自社株の保有状況を把握

IRナビ上でデータベース構築


 第二の軸となる「IR─navi」は機関投資家、特に外国人の自社株の保有状況がわかる情報サービスだ。同社の専任スタッフが国内外の機関投資家のレポートや企業の決算短信をチェックし、随時情報を更新する。主に時価総額の大きい上場企業など281社が利用している。

 日本ではバブル崩壊、金融ビッグバンの後、持ち合い株の解消が進み、代わって外国人投資家の大株主が増えた。こうした海外勢による企業支配や圧力を恐れる企業は同サービスを使えば自社株の取得状況を迅速に把握できる。

 さらに証券会社、海外の機関投資家、10万件以上のアナリスト・ファンドマネージャーのデータベースがIRナビ上でつながり、情報配信ができるのも強みだ。「プレミアム優待倶楽部」に登録した株主データもIRナビ上の「株主ポスト」で一括管理され、一大クラウドを築く。


▼「プレミアム優待倶楽部」PORTALサイト



金融ビッグバンを機に起業

リーマンショックで新事業へ


 杉本社長は1990年、社会人になった年にバブル崩壊を経験し、自分の実生活に影響を及ぼす株に興味を持った。その後数社のIRコンサルティング会社で経験を積んだ後、金融ビッグバンの時に「IR─navi」を思いつき、2004年に創業した。

 初年度はアニュアルレポート作成で開発資金を捻出し、翌年IRナビをリリース。当初は実績もなく苦戦したが、パナソニックの採用を機に半年で100社と契約するなど、順調に成長し上場も目前だった。その矢先のリーマンショックで会社は大打撃を受けた。その苦境の中で閃いたのが2015年にリリースした「プレミアム優待倶楽部」だ。

「株主総会の議決権行使を電子化したいが会員登録率が伸びないと悩む大手企業から相談を受けました。時価総額が数千億円以上の大企業となると、株主数が10万人を超えることもあり、議決権行使の取りまとめは大作業です。そこでインセンティブとして会員登録でポイントを付け、優待と連動させるスキームを思いつき、商品化しました」(同氏)

 サービスを開始してみると、まず1部上場などへの昇格を目指すマザーズやジャスダックの企業などの新興企業が採用し始めた。結果、これが成長ドライバとなり、昨年12月にマザーズ上場を果たした。

 プレミアム優待倶楽部、IR─naviともに潜在マーケットは大きい。特に業績の牽引役となっているプレミアム優待倶楽部の導入企業はまだ50社にも満たない。現在、上場企業3700社のうち優待制度を採用する企業は全体の4割近いが、同社のシェアは3%ほどでしかない。また利用している個人株主の会員数もまだ10数万人。国内で2000万人が株式売買をしており、その100分の1にも満たない。伸びしろは大きいという。

「今後は大手企業にも積極的に拡販していきたい」(同氏)

 1000社以上の導入を視野に入れ、最近は、オンライン決算説明会やブロックチェーン技術を活用したバーチャル株主総会の運営サービスも提供している。

 同社は両サービスを繋いだ上場企業、機関投資家、個人投資家の架け橋となる株主管理プラットフォームを運営し、顧客企業のステータスに合わせて、実効性のあるプランを提案できる企業を目指す。

 政府が進める「貯蓄から投資へ」が叫ばれて久しいが、「個人株主層が拡大し、最終的には株式市場の活性化に貢献したい」(同氏)