エイジア【2352・東1】11期連続増収、5期連続増益の電子メール配信システム大手資本提携で、革新的な成長を目指す
エイジア(2352)は、大手のEC運営会社、化粧品、自動車メーカー、航空会社
といったB to C企業に向けて、インターネットを活用した販売促進のためのソフト
ウェアサービスを提供している。当初はライセンス販売をメインとしていたが、美濃
和男社長の就任から、高収益なストック型サービスにシフト。以来、連続増収を続け、
2020年3月期には過去最高の売上と利益を実現した。

Profile◉みの・かずお
1965年5月生まれ、京都府出身。
1989年に明治大学を卒業後、第一勧業銀行(現みずほ銀行)に入行。2005年7月、同社に入社し取締役ソリューション事業部担当に就任。経営企画室、経理部、総務人事部担当などを経て、2009年4月に代
表取締役社長に就任(現任)。
高性能で高速な
CRMソフトウェアが強み
同社のビジネスは、アプリケーション事業、コンサルティング事業、オーダーメイド事業、EC事業で構成されている。主力のアプリケーション事業は、企業がインターネットやメールを介して顧客に効率的なコミュニケーションを行うためのCRMソフトウェア※『WEBCAS(ウェブキャス)』シリーズを開発、提供している。標準機能の廉価なASP型(Application Service Provider)とカスタマイズ可能な高価格のSaaS型(Software as a Service)との2つプランがあり、とく
にSaaS型プランは、送付相手によって最適化したOne to Oneの“パーソナライズメール”を、業界トップレベルの1時間に300万通という高速で配信する。そのため、同シリーズはディノスやセシールなどの大手EC運営会社のほか、資生堂、トヨタ自動車、全日空などの業界を代表する大手企業や自治体など累計6000社以上の多様な企業で採用されている。
「顧客の属性や購買履歴、アンケート回答結果などにより、内容を変えたメッセージをメー
ル、LINE、SMS(ショートメールサービス)などの複数のチャネルで、数十~100万件という大量、高速で配信できる性能が当社の強みです。この領域では競合がいない、リーディングカンパニーになっています」(美濃社長)
コンサルティング事業は、『WEBCAS』システムを、より効果的に活用するためのコ
ンサルティングサービスとして、主に子会社のFUCA(フーカ)が手掛けている。
オーダーメイド開発事業は、受注販売したソフトウェアの保守管理サービスを行うが、現在は新規の受注は行っていない。過去に販売しサポート契約がある顧客向けの事業となっている。ェア※『WEBCAS(ウェブキャス)』シリーズを開発、提供している。標準機能
の廉価なASP型(Application Service Provider)と
カスタマイズ可能な高価格のSaaS型(Software as a Service)との2つプランがあり、とくにSaaS型プランは、送付相手によって最適化したOn
EC事業は、2018年にハモンズ社のベビー服のECサイト『べびちゅ』をM&Aで子会社化して参入した。
「主要顧客にEC運営企業が多く、自ら事業を手掛けてお客様のニーズを知るためにグループに迎え入れました。ノウハウを教えてもらったり、テストマーケティングをしたりしています」(同氏)
高収益のストック型
ビジネスモデルに転換
2020年3月期の連結売上高は、前期比10・1%増の18億7500万円、営業利益は同
24・5%増の4億6200万円、経常利益は同27・0%増の4億7000万円。またセグメント別の売上高構成比は、主力のアプリケーション事業が約77%を占め、コンサルティング事業が約15%、EC事業が7%、オーダーメイド事業が約1%となっている。
同社は、以前はオーダーメイド開発によるライセンス販売に注力し、10年ほど前までは売上高の4割弱を占めていた。しかし美濃社長の就任以降、高収益なクラウドサービスによるアプリケーション事業に転換。現在は利益の95%超を同事業が占め、成長エンジンとなっている。
「粗利率が平均70~80%、高い案件では90%と高収益です。またチャーンレート(解約率)も高価格のSaaS型で0・4%と業界でも極めて低い水準。毎月の利用料がストックとして積み上がっていくため、今はそこに経営資源を集中させています」(同氏)
既存事業の成長と
M&Aによる新事業開発
2020年5月14日、同社は2023年3月期までの中期経営計画を発表。『既存事業の飛躍的成長』『新規事業“もう1つの柱づくり”』『財務戦略の最適化』を重要戦略に掲げるとともに、日本成長投資アライアンス(以下J─GIA)との業務提携を公表した。
「『既存事業の飛躍的成長』は、顧客を成功に導く“カスタマ―サクセス”を強化することにより、解約率の低減や顧客単価の上昇、また同じお客様に合わせて別の商品も購入いただける効率的な“クロスセル”の実現などで、事業の成長率を高め、現在の既存事業の年成長率10 ~15%を25%まで引き上げていきたいと考えています」(同氏)
また、提携先のJ─GIAのアライアンス・パートナーであるJT(日本たばこ産業)と博報堂が持つリソースは、プロモーション強化などにシナジーがあるという。
「これまで当社の営業体制は、お客様の方から広告などを見てお問い合わせいただく『プル型営業』でした。効率が良いというメリットもありましたが、一方でこちらが売りたいものを売るためには力が足りないと感じていました。今後は売り込んでいくためのプロモーション施策や営業ルートの強化をパートナーと一緒に図っていきたいと思います」(同氏)
さらに既存事業に並ぶ『新規事業“もう1つの柱づくり”』では、J─GIAからの10億円の出資とふさわしいM&A候補の情報を得て、早い時期の実現を狙っている。
「今まで当社は、お客様のデータには触らない方針でした。しかしM&Aによってデータ分析やWEBマーケティングに強い会社を得ることで、得意とするメール配信の領域に加え、お客様の業務フローのより上流の事業から関わっていきたいと思っています」(同氏)
なお、中期経営計画で2023年3月期の売上高は26 億円、EBITDA※は8億円を目標に挙げている。
2021年3月期は、売上高は微増だが、主に人員増による人件費の増加、ストックオプション発行費用の償却費の発生、開発投資によるソフトウェア資産の減価償却費の増加などを売上高増加分で吸収できないため減益の見通しだ。