• 株主手帳編集部

カナミックネットワーク【3939・東1】医療・介護クラウドのリーディングカンパニー プラットフォーム事業で拡大、海外進出も視野に

 カナミックネットワークは、医療・介護をつなぐ地域包括ケアを支援するクラウドサービスを主事業に展開している。同社は医療・介護の両方に特化した専業プラットフォーマーとしては唯一東証一部に上場している。事業戦略と今後の展開について山本拓真社長に聞いた。

山本 拓真社長

Profile◉やまもと・たくま

1978年2月11日生まれ、京都府出身。東海大学工学部卒業。2000年 富士通システムソリューションズ(現富士通)入社。05年カナミックネットワーク入社、常務取締役。07年専務取締役。11年国立大学法人東京大学高齢社会総合研究機構共同研究研究員。12年 国立研究開発法人国立がん研究センター外来研究員。14年代表取締役社長に就任(現任)。




多職種他法人連携の

情報共有クラウド


 同社の2020年9月期の業績は、売上高18億8100万円、営業利益6億5400万円。サービス別では、主事業のクラウドサービスが売上の約9割を占め、インターネット広告等のプラットフォームサービスが1割弱を占める。

 同社は、2000年介護保険制度が初めて施行された年に創業。介護サービス事業が民間に市場開放されたのを機に、介護・医療向けのインターネット事業をスタートした。

「医師、看護師、ヘルパー、ケアマネージャーなど多職種他法人が入れ替わり立ち替わり在宅ケアを行うことの問題解決をするため、情報共有のシステムを2000年から開発していました」(山本拓真社長)

 同社の提供する「カナミッククラウドサービス」は、ケアマネージャー・介護事業所向けに業務・経営効率化を支援する「介護業務管理システム」と、自治体・医師会などを中心に医療・介護従事者が情報共有できる「情報共有プラットフォーム」の2階層で構成される。

 料金は「介護業務管理システム」が、事業所毎の課金で基本パッケージ月額2万〜3万円。「情報共有プラットフォーム」が、1管理者ユーザーあたり月額5000円。管理者がIDを付与すれば、地域の医療介護関係者と患者家族は無料で利用ができる。


ドミナント戦略で

シェアを拡大


 同社の強みは、このカナミッククラウドの販売戦略にある。

 まず情報共有プラットフォームを、電話・FAX・郵送に代わる連絡・コミュニケーション手段として自治体や医師会に契約してもらい、その地域の医療介護従事者に無料で利用してもらう。そこに業務管理システムを連携させ有料課金してもらう方法が一つ。もう一つは、介護業務管理システムを有料課金されると、契約した法人全体のシステムとして導入されるため、カナミックの情報共有プラットフォームを導入していない地域にも有料ユーザーの「点」が生まれ、その地域でも無料ユーザーが増え有料ユーザーに繋げるということを繰り返し、アメーバ状にシェアが拡がっていくという。

「無料のままだと、患者情報を共有するために手入力などの二度手間が発生します。しかし業務管理システムもカナミックに変えれば、普段の法定業務通りケアプランを作成し介護記録を付ければ、法人をまたいでケアチームは自動的に共有するところまでできます」(同氏)

 さらに地域を面でとるドミナント戦略のため、一度契約すると地域の関係者同士が繋がり解約がしづらくなる。解約率は一般的なSaaS企業に比べると低いという。

 現在導入事業所数は2万8953。ユーザーID数は、2016年の5万人から右肩上がりで増加を続け12万2518人に達する。内訳は無料ユーザー7万8964人と有料ユーザー4万3554人。介護事業者が7割を占める(2020年9月期末時点)。


地域包括ケアシステムの

整備が進む


 日本では急速に高齢化が進んでおり、団塊世代が75歳を迎える2025年、医療介護の社会保障給付費は73.8兆円まで膨らむ見通しだ。厚生労働省は、対策として在宅医療・介護連携推進を重点施策としており、2025年度を目途に、住まい、医療、介護、予防、生活支援のサービスを地域で一体的に提供できる地域包括ケアシステムの整備を推進している。

 山本社長は、11〜16年東京大学高齢社会総合研究機構に共同研究員として参画。地域包括ケアシステムの先進的な事例の一つである「柏モデル」の構築にゼロから参加。同社のクラウドは、この柏モデルの共同研究の中で開発が進められた。11年柏モデルの開始から導入地域は急増。現在は東京都全域を含む全国約4分の1の1159(※1)地域まで拡大している。

「クラウドは単価は小さいですが、数の多さが重要になります。我々はそこを2000年からコツコツと積み上げてきました。また、法改正が頻繁にあるので、それにも全部対応できるとなると専業メーカーでないと苦しく、参入障壁は高いです」(同氏)


(※1)地域数の単位は、厚生労働省が想定する地域包括ケアの人口3万人程度の「中学校区」


プラットフォームサービスで

事業拡大図る


 今期の業績予想は、売上高が前期比11.6%増の21億円、営業利益が同11.5%増の7.3億円を見込む。

 現在は、クラウドサービスで得た利益をプラットフォームサービスに投資し事業拡大を図っている。プラットフォームサービスでは、医療介護業界向けのインターネット広告、物販、決済、人材、AI・IoT活用など様々なサービスを拡充していく。すでに旭川医科大学と、「遠隔医療・介護のIoTクラウド利用の地域包括ケア・グローバルモデル構築」を目的とした共同研究を3年前から進めている他、昨年には電子契約サービス提供のため、弁護士ドットコム社と業務提携を結んだ。

「クラウドを伸ばし2桁成長を続けていく1stステージから、プラットフォームサービスを伸ばして単価アップと価値向上をしていく2ndステージに入ってきています。3rdステージとしては日本で蓄積した知見を海外でチャレンジするというビジョンがあります」(同氏)


▲情報共有システムのTOP画面。患者ごとに部屋を作成し、管理者より招待された担当関係者が部屋に入れる