• 株主手帳編集部

キュービーネットホールディングス【6571・東1】〞10分1000円〞低価格のヘアカットサービスを全国に浸透 直営店舗と人の育成にこだわり、事業を拡大

 キュービーネットホールディングス(6571)は、1996年、〝10分で料金1000円〞のヘアカット専門店『QB HOUSE』を開設。ほぼ単一料金、総合サービスが常識だった理容業界に革命を起こした。労働集約型の理美容業界は人材不足が課題だが、同社はスタイリスト育成の独自の研修施設を整備し採用を確保。現在、国内外合わせて約700店舗を出店し、年間来客数2200万人と伸長し続けている。

北野泰男社長

プロフィール◉きたの・やすお 1969年、大阪府生まれ。大阪外語大学(現大阪大学)卒業後、日本債券信用銀行(現あおぞら銀行)に入行。2005年にキュービーネットに入社し、管理本部長などを経て、09年代表取締役社長に就任(現任)。16年、キュービーネットホールディングス代表取締役社長に就任(現任)。




消費者目線の不満から

新ビジネスを発想


 同社は1995年に創業し、翌年、10分間で1000円の手頃なヘアカット専門店『QB HOUSE』を開業した。駅やショッピングセンターなどの利便性の高い立地を中心に全国にチェーン店舗を出店。現在、国内で567店舗、海外はシンガポール、香港、台湾、アメリカを合わせて127店舗を展開、年間約2200万人が利用している。その革新的なビジネスモデルは、理美容業に全く関りのない創業者の不満から始まった。

 日本の理容業では長く、洗髪、髭剃り、マッサージなどを4000円弱のセット料金で提供していた。しかし多忙なビジネスマンだった創業社長の小西國義氏は、「総合プライスは客目線でない。60分で6000円の料金を取るなら、『カットだけ10分、1000円』のビジネスが可能だ」と新規参入を決めたという。


海外へのFC進出が

ビジネスモデル転換に


 創業からしばらくは、業務委託契約やFCによるスピード感のある出店攻勢を続け、国内で2004年に200店、2006年に300店を超えて拡大する中、シンガポールで海外進出を果たした。しかしそこでQBハウスを模倣したカット専門店が登場。そことの差別化を図るため、同社はビジネスモデルの転換を図ることとなった。

「当時、私は管理部門で海外事業の後方支援をしていましたが、海外事業でぶち当たる壁は大きく、特に模倣店の展開が早い。FCというビジネスモデルだけで戦っていくことは難しく、しっかり人や組織を育成し、サービスのクオリティを上げていかなければ、やがて日本においても淘汰されると強い危機感を抱きました」(北野泰男社長)

 またFCオーナーは、売上高から毎月、委託料を支払う契約。オーナーの立場になれば、人件費を抑えた方が利益が出るため、スタッフが足りず客を待たせるなどのサービス低下が起きていた。

「お客さまから『QBのクオリティは低い』などの声も入っていましたが、当時は店を増やし続ける限り、増収増益が続きましたので、出店をやめられずにいました」(同氏)

 2009年にトップに就任した北野社長は、業務委託やFC展開から、自社の社員が運営する直営店を増やすことに注力した。業務委託やFCでの出店戦略は利益率は高いが、中長期で見れば直営で長く続くQB店舗を増やして利益をしっかり取っていくことこそ、会社のためになる。また、直営化し本部でコントロールすることで、サービスや人材育成の差をなくせると考えた結果だった。


"休眠理美容師" の

掘り起こしで人材確保


 2012年、同社はスタイリスト研修施設『ロジスカットプロフェッショナルスタイリストスクール』を開設した。約6カ月間のオリジナルのカリキュラム受講で、同社が求めるヘアカット技術が習得でき、卒業後はスタイリストとして採用する。もともとは海外で、ハサミを持ったこともない外国人に、いかに論理的に技術を教えるかを考えたカリキュラムだった。しかし当初は給料を払いながらの研修に「技術だけ学んで辞めてしまうのでは」と反対の声も多かったという。

「今、日本には185万人くらいの理美容の資格取得者がいるのですが、現在、働いている人はその4割程度。カットが好きで資格を取得しても、一人前になるまでの下積みの長さや完全歩合制の厳しい待遇などで、途中で辞めてしまう方がとても多いのですね。そんなブランクのある方も、ここで集中して学び、QBで活躍して欲しいと思って開設しました」(同氏)

“ 箱作り”から“ 人の育成”へとシフトすることにより、わずか20人ほどだった同社の社員数は、今ではその100倍以上の2500人程に増加。だが、そのうち本部スタッフは70~80

人程で、それ以外は店舗で活躍するスタイリストだ。業務委託、FC主体で展開していた頃には50%近くあった離職率も、直営化後は7%程度に低下。なお、同社はカット専門店のため、理容師、美容師ともに働いており、美容師が6割を占めている。平均年齢は40歳程だが、定年を設けていないため、80歳代のスタイリストもいるという。また女性スタイリスト

が3割おり、それに伴い、女性客も増えているという。

 また北野社長の発案で始まった、海外も含めてスタイリストのカット技術を競う『QBハウス全国店長会&カットコンテスト』も、2019年に第8回を数えて盛り上りを見せている。神奈川県のパシフィコ横浜の会場に同社社員など700人が見まもる中、厳しい予選を勝ち抜いたスタイリスト達が登壇し、「規定」「スポーツ刈り」「フリー」などの課題に取り組んでいく。シンガポールの女性が、10分間で“日本の十八番である”「スポーツ刈り」をきれいに仕上げて勝った時には歓声とともに、日本のスタイリストたちの“職人魂”が呼び

覚まされたようだったという。

「最大の商品は技術力」と自負する同社で、スタイリスト同士が技術の切磋琢磨する場となっている。

◀東京・青山オーバル店








◀ 女性スタイリストが3割を占める









2024年に国内700店、

海外200店を目指す


2019年6月期の連結売上収益は前期比8・2%増の208億6400万円、営業利益は同20%増の19億6900万円、当期利益は同21・5%増の12億7200万円。2019年2月にカット料金を税込1080円から1200円に引き上げて客単価が上昇し、利益が伸びた。


料金改定は、消費税増税で税込1000円から1080円に上げた2014年以来の2度目。その時に据え置いた『平日シニア料金』の設定で、シニア客も増加。ビジネスマンが多い平日17時以降と、シニア層が多い平日午前中に来客需要が分散、平準化したという。

 また同社は、2006年に創業者からオリックスへ、2010 年にはジャフコが運営するファンドへ、2014 年にはインテグラルが運営するファンドへと経営権が移転した。買収時に、銀行から資金を借り入れるLBO

(レバレッジド・バイアウト)手法を使ったため、同社には3回の移転で巨大な「のれん代」が残った。

「創業者が引退するタイミングでオリックスさんに大株主として資本投入していただきまして、その後、株式上場を目指す中で、2010年にジャフコさんと2014年にインテグラルさんと大株主が移り変わりました。2018年3月に東京証券取引所第一部に上場を果たすことができ、創業者から託された願いを一つ叶えられたと思いました。のれん代は消そうと思えば数年で消すことも可能ですが、今は人の育成と拠点作りへの投資で、まずキャッシュフローを確保させたいと思っています」(同氏)


▲全国店長会



取材日/3月6日

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