• 株主手帳編集部

コロナ禍で注目26銘柄、業界はM&A再編加速へ



新型コロナウィルスの感染拡大を受け、クローズアップされる機会が格段に増えたのが、薬局やドラッグストアだろう。薬だけでなく化粧品や生活雑貨、食品まで扱う店舗もあり、消費者には欠かせない存在だ。近年は大手によるM&Aにより業界再編が加速。集約化で企業数は減少する一方、全体の店舗数は増加している。今後勝ち抜く企業はどこなのか、今回は同業界での有望株を探る。


薬局は20年で1.5倍進む「医薬分業」

 人と病気が古くからの付き合いであるように、人と薬の関係もまた同様に古い。たとえば、日本最古の歴史書である「古事記」にも、薬の記述が出てくる。「因幡の白兎」の中で、サメに皮をはがされ泣いていたウサギに対し、大国主命(おおくにぬしのみこと)が真水で体を洗ったあとで蒲(がま)の花をつんできて寝転ぶと良いと助言する、蒲の花粉がそれだ。

 古事記の時代から1300年余の時を経た日本では、誰もが薬局に行けば簡単に薬を買ったり処方してもらえたりする時代になった。薬局とは、薬剤師が販売または授与の目的で調剤を行う場所のことを言い、同時に、医薬品の取り扱い(販売)も行える。調剤することができるのは薬局だけだが、OTC薬(いわゆる一般用医薬品・市販薬)の販売をする薬店との区別のため調剤薬局と呼ばれることもある。

 薬局を語る上で欠かせないキーワードに、「医薬分業」がある。これは、医師が患者に処方箋を渡し、薬剤師がその処方箋に基づき調剤を行う、つまり専門分野ごとに業務分担をすることで、医療の質の向上を目指すもの。日本では1974年頃から進められ、1996年におよそ4万店だった薬局は2016年までの20年間で1.5倍近くの5.9万店になった。また、薬局で働く薬剤師の数も1996年の7万人から2016年の17.2万人へと大幅に増加している。

 一方、国内では比較的最近の1970年代に登場したと言われるのがドラッグストア」だ。1990年代に大きく飛躍、消費者へと浸透した。大型店舗の場合には生活雑貨や食品まで扱う場合もあり、地域のインフラとして欠かせない存在になっている店も多い。




マツキヨ&ココカラ

統合で業界最大規模へ

 売上高8683億円でランキングトップとなったのはウエルシアHD(3141)。昨年3月に一本堂、9月にB.B.ONを吸収合併したほか、6月には岡山地盤の金光薬品、今年3月には高知地盤のよどやを子会社化している。前期は東北と近畿を重点エリアに定め、グループ全体では129店舗を出店(閉店は26店舗)。金光薬品の31店舗を加え、店舗数は計2012店と、2000店の大台を突破した。2020年2月期、同社(連結)の売上高に占める品目別の構成比を見ると、食品が22.1%、医薬品が20.5%、調剤が17.9%などとなっている。また、売上における前期比での伸び率は、食品が前期比111.0%、医薬品が前期比108.5%、調剤が前期比119.8%だった。新型コロナウィルスの影響で、マスクや消毒関係を含む医薬品のほか、増税後対策強化を実施した食品が、巣ごもり需要で伸びた。今後については、同社が「ウエルシアモデル」と位置付ける、「ドラッグ&調剤」「カウンセリング営業」「深夜営業」「介護」の4本柱をベースに、店舗・調剤業務でのシステム化や機械化を進めて行く考えだ。

 売上高2位は7824億円のツルハHD(3391)。ドミナント戦略に基づく地域集中出店および既存店舗のスクラップ&ビルドを推進してきた2020年5月期は、3Qの時点で、期首からカウントして95店を出店、57店を閉店した。また、昨年7月おおがたむら調剤薬局を子会社化したことで1店舗が加わり、直営店は3Q末時点で2121店舗となっている。カウンセリングを主体とした接客サービスの徹底、利便性強化を目的とし、食品売場を中心に既存店舗の改装を推進。新たなプライベートブランド「くらしリズム」「くらしリズムMEDICAL」への刷新ならびに展開拡大や、人員配置・在庫管理などをサポートするシステムの導入を進めている。

3位は、2020年3月期の売上高が前年比5.1%増の6178億円となったサンドラッグ(9989)。FCの4店を含む53店舗を出店、5店舗でスクラップ&ビルドを実施。また、125店舗で改装を行い、32店舗を閉店した。結果として、グループ全体の店舗数は、ドラッグストア事業876店舗、ディスカウントストア事業292店舗の、合計1168店舗となった。同社は今後も、新規出店や、異業種との提携やFCの拡大、通信販売及び調剤事業の拡大を続けていくとしている。2021年3月期については、ドラッグストア事業45店舗、ディスカウントストア事業25店舗の、計70店舗の新規出店を計画している。

 4位のコスモス薬品(3349)は、売上高6111億円。2020年5月期は、自社競合による一時的な収益性の低下も厭わない積極的な新規出店を行い、今期既に52店舗出店、スクラップ&ビルドで4店舗を閉鎖し、計1041店舗となった(3Q時点)。


売上高営業利益率トップは札幌臨床検査センター


 今ランキングにおいて売上高営業利益率が10%を超えた企業はなかった。最も高かったのは、8.3%だった札幌臨床検査センター(9776)。2020年3月期、調剤薬局事業は、売上高が前年同期比5.0%増の109億円、セグメント利益が同21.8%増の9億円だった。継続的に行ってきた、かかりつけ薬剤師・薬局への体制強化に向けた取組や、前期開局店舗を含む既存店の堅調な推移が後押しした。現在、札幌市中央区に新社屋の建設を予定しており、今年度は新規取引先の獲得や薬局店舗の新規出店による営業基盤の拡充や、省力化投資による検査原価圧縮などに取り組む。

 次点は7.6%だったシップヘルスケアHD(3360)。同社の2020年3月期、調剤薬局事業においては、小規模のM&Aや経営効率化改善策の実施などにより、売上高は前年同期比5.7%増の271億円、セグメント利益は同21.4%増の27億円だった。

 売上高営業利益率3位は、売上高ランキングで5位に入ったマツモトキヨシHD(3088)。同グループは、ココカラファインと、経営統合に向けた基本合意書および資本業務提携契約を締結している。今期はグループとして95店舗をオープン、2020年3月期末におけるグループ店舗数は1717店舗となった。また、近畿大学と「PB商品共同開発プロジェクト」を立ち上げるなど、グローバル展開も視野に入れたPB商品の開発を行っている。



インバウンド需要激減

地域密着が生き残りの鍵


 続いて、PERを見てみよう。PERが15倍以下だったのは、低い順に、クオールHD(3034)、キリン堂HD(3194)、カワチ薬品(2664)、札幌臨床検査センター、日本調剤(3341)の5社。キリン堂は、同社の公式アプリを戦略的に活用した会員顧客の囲い込みと会員客単価アップを狙っている。2020年2月2月期は、年度終盤にインバウンド需要が大きく低下したが、同社グループはインバウンドへの依存度は低いため影響はわずかにとどまり、前期比2.8%増の1333億円。加えて、ヘルス&ビューティケア分野強化のためのPB商品販売増や調剤事業拡大等により売上総利益率が改善、営業利益は同37.5%増の28億円となった。日本調剤は、2020年3月期、売上高が前年同期比10.7%増、営業利益が同12.4%となった。抗がん剤などの高額な医薬品の処方増加や、かかりつけ薬剤師・薬局などへの取り組みによる処方箋単価の上昇、処方箋枚数の増加等が奏功した。また、在宅医療実施店舗の割合も89%(年間12件以上実施の店舗割合)と順調に推移している。

 次に、PBRが低い順に並べてみると、1倍以下は16社あった。最も低かったのは、東北地方の石油販社で多角化経営を行うカメイ(8037)。新規出店による店舗網の拡充効果や、「かかりつけ薬剤師・薬局」への取り組みにより2020年3月期の売上高は前期比3.9%増だった。次にPBRが低かったのはカワチ薬品。競争激化対策として専門性強化のため、健康や美容のカウンセリング機能を強化している。地域のインフラとしての役割も果たす薬局・ドラッグストアの動向は、今後も注目だ。


(株主手帳 2020年7月号)




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