サカタインクス【4633・東1】印刷インキ世界3位の総合インキメーカー ESG・サステナブル軸に3000億円規模へ


 サカタインクスは、新聞や包装用印刷インキを主業に世界20の国と地域に製造・販売拠点を展開する。「環境のサカタ」として、環境配慮型製品に注力するほか、印刷インキをコア技術に機能性材料、新事業の研究開発にも積極的に取り組んでいる。2021年2月には長期ビジョン「SAKATA INX VISION 2030」を発表。ESG・サステナビリティ経営を根幹に据え、30年度に連結売上高3000億円規模へ邁進する。




上野 吉昭  代表取締役 社長執行役員 

プロフィール◉うえの・よしあき

1961年12月生まれ、大阪府出身。85年京都工芸繊維大学繊維学部卒業、同年阪田商会(現サカタインクス)入社。2007年研究開発本部第二研究部長、14年取締役、研究開発本部長委嘱、16年資材部・マーケティング部担当、18年取締役執行役員、19年取締役常務執行役員、21年3月代表取締役社長執行役員(現任)。



 

海外売上高比率が約6割

環境配慮型インキに強み


 サカタインクスは、1896年に個人商店・阪田インキ製造所として、新聞インキの製造販売で創業した。現在グループは子会社26社、関連会社6社で構成。印刷インキ世界3位の総合インキメーカーとなる。

 主事業は「印刷インキ」と「機能性材料」の2つ。売上のおよそ8割を占める「印刷インキ」事業は、新聞インキやオフセットインキなどの情報メディア向けインキと、食品パッケージ、段ボール、紙袋、飲料缶などに使われるフレキソインキ、グラビアインキ、メタルインキなどのパッケージ用インキの製造販売を手がける。同事業のセグメントは、日本・アジア・米州・欧州で構成され、海外売上高比率は約6割に及ぶ。特に缶インキはアメリカで9割を超え、世界ではNo.1シェアを誇る。

「機能性材料事業」は、インキ事業で培った樹脂合成技術や分散・加工技術を応用し、産業用インクジェットインキ、カラーフィルタ用顔料分散液、機能性コーティング剤を展開。印刷インキに次ぐ第二の柱として展開している。

 同社の強みは、ボタニカルインキ、植物油インキ、ノンVOCインキ、水性フレキソインキ、ノントルエン・ノンMEKインキなど豊富な環境配慮型の製品群だ。1973年に環境部を設置し、早くから環境に優しく人体への影響がより少ない材料を使用した製品開発に注力してきた。2016年からは、植物由来成分をインキ固形分中に10%以上含有する「ボタニカルインキ」シリーズを自社ブランドとして展開する。二酸化炭素排出量削減にも貢献すると注目を集めており、現在は大手コンビニチェーンや食品メーカーのパッケージなどで採用。既に国内で展開するフィルムパッケージ用インキの約3割に使われている。


16年に過去最高益を記録も

原料高騰で一時利益半減


 印刷インキメーカーの世界トップ10は、国内トップメーカーのDIC、東洋インキ、サカタインクスを含む日本企業が半数を占める。日本企業が海外でも高いシェアを獲得できる理由の1つが、食品用パッケージの多様化への対応にある。

「日本では食の安全から保存性を上げるために、パッケージ包材がハイテク化しました。多種多様なパッケージにおいて、高い品質で高性能な印刷インキが海外でも受け入れられました」(上野吉昭社長)

 そうした技術的背景と共に積極的なM&Aで、同社はこれまで着実に成長を続けてきた。利益面では、16年に営業利益率6・7%と過去最高益を記録。しかし18年、原油価格の高騰や中国の環境規制強化などの外部要因により3・2%まで減少。20年には4・5%まで回復するが、再び原油価格の高騰やコロナ禍に伴う物流の混乱などにより、原料費の価格上昇は続いている(21年11月時点)。

 それに加え、グループを取り巻く事業環境も大きく変化し続けている。デジタルメディアの普及によるインキ需要の低迷、脱プラスチックなど環境対応ニーズの変化、SDGsの取り組みなど、様々な対応が迫られている。


30年に売上・営業利益倍増へ

ESG・サステナビリティ強化


 そこで21年2月に発表したのが、長期ビジョン「SAKATA INX VISION 2030」だ。2030年には、印刷インキ、機能性材料、新規事業の3本柱で、連結売上高3000億円規模、営業利益率8%といずれも倍増を計画している。ここから逆算し、3年毎の中期経営計画も策定した。21年からスタートした第1フェーズ「CCC─1」は、基盤構築の時期と位置づけ、23年に連結売上高1950億円、利益率5・9%の着地を目指す。

 戦略の方向性は、まず大前提として「地球環境と地域社会を重視したESG・サステナビリティの取り組み強化」がある。その上で「既存事業の拡大」と「新規事業領域への挑戦」の両輪で拡大を図る。

「これまでは3年単位で中計を組んでいましたが、事業環境の変化のなか当社の目指すべき姿を示すために、長期的なビジョンメイキングを今回初めて実施しました。常に冠となるのがサステナブルな社会の実現やSDGsの社会課題への取り組みです」(同氏)


高利益のアジア・米州に投資

4つのケミカル分野でR&D


 既存事業拡大のための施策の1つ目は、グローバル展開の推進。経済発展が進む新興国での成長が見込めるアジアや、安定的に経済が伸びている米州などで積極的な設備投資を行っている。機能性材料はアジアを中心に展開を進め、売上高比率8%のところを15~20%まで拡大する計画だ。

 2つ目は、ボタニカルインキの改良と普及。ボタニカルインキ中の植物由来成分の基準を現在10%以上としているところを、将来50%まで上げていく。海外はアメリカですでに展開しており、アジアでも要望が高まっているため各地での普及を目指していく。

 新規事業領域では、環境・バイオケミカル、エナジーケミカル、エレクトロニクスケミカル、オプトケミカルの4分野で研究開発に取り組んでいる。一例として、プリンテッドエレクトロニクスの社会実装がある。関連会社でEMS※1大手のシークス、IHリフロー※2装置の開発を行うワンダーフューチャーコーポレーションとの3社協業で、新素材や工法の実用化を目指している。

「今後はサプライチェーンもしっかりと環境対応をしている企業が担っていくことが求められる時代となりました。これは(環境配慮型製品を持つ)我々にとってチャンスです。インキビジネスにおいても、新規分野においても、上流部分と下流部分をうまく繋ぎ合わせて、お客様に新たなソリューションを提案したいです」(同氏)



▲オリジナルブランドの環境配慮型「ボタニカルインキ」を展開



 

2020年12月期 連結業績

売上高

1615億700万円

前期比 3.4%減

営業利益

72億1200万円

同 15.9%増

経常利益

77億8900万円

同 6.4%増

当期純利益

52億7500万円

同 28.2%増


2021年12月期 連結業績予想

売上高

1810億円

前期比 12.1%増

営業利益

75億円

同 4.0%増

経常利益

86億円

同 10.4%増

当期純利益

60億円

同 13.7%増

※株主手帳2月号発売日時点