• 株主手帳編集部

サンコール 【5985・東1】70年超の自動車エンジン用弁ばねメーカー環境変化を見越した次世代向けのモノづくり戦略

 サンコール(5985)は、エンジンに使う弁ばねをメインに自動車部品の製造で国内外で事業を伸長。設計から加工までの一貫生産で、欠かすことができない、ニッチな市場のシェアを獲得して来た。また、新たな潮流を迎えた自動車産業に対し、独自技術を活かした新製品の開発とともに、電子情報通信や医療などへの領域拡大を目指している。


大谷忠雄社長

Profile●おおたに・ただお 1960年9月生まれ、京都府出身。1985年、関西大学工学部卒業し、三興線材工業(現サンコール)に入社。2015年に取締 役、17年に代表取締役専務を経て、18年6 月、代表取締役社長に就任(現任)。







自動車関連製品で アジア中心に世界展開


同社は1943年、三興線材工業として設立し、国産航空機のエンジンの弁ばね製造を開始。戦後、自動車用の弁ばね納入を始め、コア技術である「伸ばす」「曲げる」という精密塑性加工から生み出される精密機能材料、自動車部品、電子・情報機器、通信機器の製造を行う。本社を置く京都を始めとする国内10拠点のほか、米国、メキシコ、中国、香港、ベトナム、タイなど7カ国で展開している。  同社の2019年3月期の連結売上高は458億1200万円、営業利益は33億8400万円。地域別の売上高の比率は日本は42・5%で、アメリカ9・6%、中国11・1%、フィリピン17・7%、その他19・0%。分野別の構成では、自動車分野が70%、電子情報通信分野が28%とその他となっている。  主力の自動車用の弁ばねは、エンジンの吸排気バルブを閉じるために欠かせないばね。レーシングカーなら1分間で最大1万回転、一般の自動車で最大6000回転といわれるエンジン回転数の吸排気バルブの開閉動作により伸縮を繰り返す。 「過酷な条件に耐える弁ばねは、ばねの中でも一番難しいばねと言われます。弁ばねを製造するメーカーは多いのですが、〝材料から精密加工品までの一貫生産〞というビジネスモデルでご提供しているのは、当社が唯一ではないかと思います」(大谷社長)  現在、国内自動車メーカーで使われる弁ばねの約3割は同社の製品が使われているという。また自動車のシートベルト用ぜんまいばねや、エンジンのスタート時に使われるリングギアなどでも高いシェアがある。特にリングギアは、アイドリングストップシステムが導入された現在、より高い耐久性、静粛性が求められる。  「信号待ちなどでも、停止とスタートを頻繁に繰り返すようになりました。ギアの切り方などを工夫して振動を少なくし、ノイズを抑え、耐久性の向上を工夫しています」(同氏)


必要不可欠なニッチな市場を狙う


製品ごとの売上高構成比では、自動車分野の弁ばねやリングギアなどの自動車関連製品が57 ・9%、弁ばね用鋼線などの材料関連製品が12・1%。また、電子情報通信分野のHDD(ハードディスク)用サスペンションが17・7%、プリンター関連が8・4%、通信関連が2・4%などとなっている。  同社の売上高の2割弱を占めるHDDサスペンションだが、一般のパソコン向けのHDDはより高速なSSDへの置き換えなどで縮小傾向にある一方、クラウドコンピューティングサービスの増加などにより、データセンター向けのニアラインドライブと呼ばれる大容量HDDの需要は世界的に増加している。低コストで大容量なHDDによるデータセンターの増設が続く中、同社はこの分野に経営資源を集中。京都のほか、今、フィリピンでも工場を立ち上げている。 「HDDメーカーは世界で淘汰が進み、現在、アメリカのウエスタンデジタル社、シーゲート社と日本の東芝さんの3社です。またサスペンションも当社を含めて3社しか作っていません。この需要があるときに投資し、しっかり利益を上げていき、2022年には市場のシェアの2割を取りたいと思っています」 (同氏)。  また同社はばね加工の技術を活かしたインクジェットプリンターの紙送ローラーでも、世界シェアの6割と、トップ企業となっている。












▲主力の自動車エンジン用の弁ばねは 一貫システムで製造されている


















▲独自の金属加工技術を生か したリングギア



次世代主力事業を仕込む


 中期経営計画GGP21では、2022年3月期で連結売上高500億円超、PostGGP21として2026年3月期には売上高700億円水準を目標に掲げている。その成長のための重点戦略「次世代主力事業の育成と深耕」を現在、様々な分野で進めている。  自動車関連では、EV(電気自動車)などでも使われる車載用電流センサー開発に注力している。例えばバスバーは、バッテリーから電動化部品に電力を供給するのに使われる端子板だが、そこから電流をセンシングし電流値を測定する『シャント on バスバー』、さらに間に電子回路を設けて精密に測定し電流をコントロールする『回路付きシャント on バスバー』を開発。現在、量産のための試作を続けている。 「日本は非接触のホールセンサーが主流ですが、欧米はその3倍くらい高精度のシャント方式が使われています。今、それを国内の自家用車に搭載する評価をしていただいているところです」(同氏)  採用されれば、リングギアが1台の車に1個のところ、シャントセンサーは7〜8個、多ければ20個近く搭載されることになるという。  そのほか、現在、絶縁塗装の技術を活用したLED照明関連部品、飛行機の電動化に向けたモーター用耐熱コイルなどの新製品を開発している。また医療分野では、簡単に装着でき、モーターが膝の動きをサポートする歩行支援ロボットを京都大学などと開発。2020年3月、高齢者施設などへのリース販売が決まっている。 「自動車部品では、新しい製品を作るのにも、企画から試作、量産して利益が出て来るまでに長い時間がかかります。今は例えば、HDDサスペンションの増産などで経営の土台を固めながら、新規製品の仕込みを続けている時期。それらがマーケットで認知され花開いていけば、次世代事業として収益に加わってくると思っています」(同氏)