• 株主手帳編集部

セリア【2782・JQ】データ活用による在庫分析とAI発注支援で100円 ショップ業界屈指の高収益体制構築


100円ショップ「セリア」を全国約1800店舗運営するセリアは、デザイン性の高い商品で長年女性層の指示を集めてきたが、近年ではアウトドアグッズやルアーなどの新商品により男性ファンも増やしている。2021年3月期決算では、2002年から増収を続ける売上高が前期比10.6%増で2006億8200万円となり、初の2000億円を突破。また、営業利益は同20.8%増、経常利益は同20.8%増、当期純利益は同22%増と全て二桁成長を実現し、過去最高を更新した。


河合映治社長

PROFILE◉かわい・えいじ

1967年生まれ。同志社大学卒業後、90年に大垣共立銀行に入行。03年5月、セリアに入社。同年6月に常務取締役、05年に経営企画室長に就任。14年、代表取締役社長に就任(現任)。







2021年3月期2000億円突破

売上・利益とも過去最高を更新


 2021年3月期の好業績について、「コロナ禍初期は巣ごもり需要によって業界全体が好調でしたが、途中から『家の近くでとりあえず買う』から『より生活に楽しみを見出したい』と消費者の思考が変わりました。お客様が求める新たな日常にいち早く対応できたことが今回の業績に繋がったと思います」と河合映治社長は総括する。

 同社は今後も積極的な成長戦略を描く。顧客層拡大を狙った新商品開発に注力するとともに、定番商品の底上げを進めるため、サテライトオフィスを新設。商品開発を強化する体制造りを進めていく。同社の店舗は、主にビルインタイプが7割以上を占めるが、複数案件が見込める企業との関係を密に、商業施設への出店にも力を入れていく計画だ。

「新規出店に関しては、未出店地域を重点的に全地域でバランスよく進めていきたい」(同氏)

 22年3月期は、売上高2130億円、営業利益220億円、経常利益220億円を見込んでいる。


他社に先駆けてPOS導入

営業利益率10%超を実現


 100円ショップは、国内には約8000店舗があるといわれている。売り上げ規模トップは「ダイソー」を展開する大創産業(非上場)が約5000億円。次いでセリア、キャンドゥ(2698・東1)712億円、ワッツ(2735・東1)513億円と続く。大創産業が業界では突出した規模を誇るが、セリアは競合他社と比べて圧倒的な強みを持っている。それが営業利益率の高さだ。

 同社の21年3月期の営業利益率は10・6%。同じ上場会社と比べると、キャンドゥが約2%、ワッツが約3%で飛び抜けた数字になっている。背景にあるのは、データをもとにした綿密な在庫分析にある。業界に先駆けて導入したPOSシステムと、AIを用いた発注支援システムを活用し、高収益体制を構築しているのだ。

 100円ショップはデフレ下で成長した産業で、単一価格で1店舗当たり1万5000点程の商品を扱うため、薄利多売にも関わらず、在庫管理が難しいといわれている。同社もかつては5%以下の営業利益率だったが、2004年、業界に先駆けてPOS(販売時点情報管理)システムを導入。これが同社のターニングポイントとなった。「それまでは、商品が100円という単一価格のため、他の小売店のようにPOSの必要性が薄かった。しかし、商品構成が多様化する中で、在庫管理の重要性が増すと考えた」(同氏)

 この年は同社が上場を果たした年。銀行出身で、統計学に精通する河合社長が自らシステム構築に関わり、「IPO資金を同システムに投資した」(同氏)という。

 06年には河合社長の主導のもと、SPI(セリア・パーチェス・インデックス)と呼ばれる独自の指数を考案。SPIとは、小売店で用いられるPI値を独自にアレンジした指標で、来店者1万人あたりの商品ごとの購買指数を算出する。同年にはSPIをベースに店舗ごとの商品発注数を自動算出する発注支援システムの開発・導入を進め、08年に全店舗に導入した。河合社長が14年に社長に就任するとその動きは加速、18年にはシステムのブラッシュアップを図り、不良在庫を作らない体制を強化した。

 通常は時間のとられる発注作業も、AIを使ったシステムが、店舗ごとの特徴や季節要因をもとに、商品ごとの発注数字を自動で算出。この発注数字が現場のタブレットに表示されるため、店員は「示された通りに発注ボタンを押すだけ」という短時間での発注が可能になった。全自動のシステムのためデータ分析に人手を要さない点が大きなメリットだ。

 データは商品企画にも活かされ、年間7000点に及ぶ新商品も、取引先メーカーはデータが導いた需要をもとに新商品を生産するため無駄がない。またデータは生産数の決定にも活かされ、生産過多・不足を防ぐ役割を果たす。これが他社よりも倍以上の営業利益率を生み出す源泉となっている。

「04年当時、POSは価格分析目的に導入する小売業が多かった。当社のように価格が動かない中、何を分析するのかがチャレンジでした。この業界で達成できたのは当社だけだろうと思っている。今後も来てくださるお客様の欲しいものを作り、また来ていないお客様へも絶えず提案を続ける。その両面をやっていく」(同氏)


同業の高価格帯商品へのシフト

同社にとってシェア拡大のチャンス


 デフレ下で成長曲線を描いてきたこの業界だが、ここ数年、トップ4社のうち同業3社は原材料高騰などを背景に300円、500円、1000円などの高価格帯商品も扱うようになり、「脱100円」へシフトしつつある。同社はそんな中でも唯一、「『全商品100円』に今後もこだわる方針」(同氏)

 100円商品にシステムが上手くはまっているからこそ、実現可能という。

 100円ショップの2020~2021年の主要4社の売上高合計は8525億円だが、同社ではその中でも100円商品だけの市場規模は7000億円程と見込んでいる。現在の同社のシェアは3割程。今後も他社が高価格帯商品へのシフトを続けるなら、100円商品のシェアを伸ばすチャンスになるとの考えだ。「中期的には年150店ペースで出店を続け、現在の1787店からまずは3000店への拡大を目指すしていきたい」(同氏)という。


▲「全品100円」にこだわる



▲梅田チェルシーマーケット店