• 株主手帳編集部

ツクルバ 【2978・マザ】中古物件の流通サイト運営丹念な紹介文で独自性確立

 都心の中古物件に特化した中古・リノベーション住宅の流通プラットフォーム「カウカモ」を運営するのは、2019年にマザーズ上場したツクルバ(2978)だ。潜在需要が高いものの、新築物件人気に押されがちな中古物件に着目。個性が光るリノベーション住宅の紹介に特化し、独自のポジションを確立した。今後は、カウカモの認知度上昇に注力。将来的には「中古住宅購入を検討するすべての人が訪問する」サイトへと成長させる。

村上浩輝社長

Profi le◉むらかみ・ひろき

1985年東京都生まれ、立教大学社会学部産業関係学科(現経営学部)卒業。学生時代より事業を行う。

コスモスイニシア、ネクスト(現LIFULL)を経て2011年8月にツクルバを共同創業、代表取締役CEOに就任

(現任)。19年7月東証マザーズ上場。



丁寧な中古物件紹介に定評


 同社売上高の8割強を占めるのは、中古・リノベーション住宅の流通プラットフォーム「カウカモ」事業だ。

 日本にはリクルートホールディングス(6098)が手掛けるSUUMOや、LIFULL(2120)のHOME‘Sといった住宅紹介サイトがあるが、その中でカウカモが強みとするのは「中古売買物件の定性的な情報を丁寧に紹介」する点である。

 多くの住宅紹介サイトでは、新築/中古、賃貸/購入などをまとめて掲載。また、物件紹介ページでは価格や築年数、広さなどの定量的な情報のみを扱うことが多い。一方、カウカモは取扱物件を中古・リノベーション物件に厳選。定量情報だけでなく、立地や住環境、間取りなどに関する感性的な説明文を掲載する。

 例えばある渋谷区の物件紹介ページでは、最寄り駅や近隣の珈琲店、建物の外観、共用部、工事風景、内装イメージなどを写真と共にストーリー仕立てで紹介。実際に物件を訪れたライターが紹介文を執筆しており、文章量は3500字以上にも及ぶ。

 カウカモの閲覧や会員登録は無料。閲覧者に物件売買の仲介を行った場合、買い手と売り手の双方から手数料を受け取る。買い手は30〜40代の独身やDINKS、スモールファミリーが多く、平均物件購入価格は4500万円程度。主に扱うのは都心や人気住宅地の中古マンションで、常時900件以上の物件が掲載される。

 2015年から本格始動したカウカモの狙いは、従来的な競争型不動産ビジネスではなく、こだわりを持ちじっくり物件を探したい人向けに、物件を丁寧に紹介する「編集型不動産ビジネス」の確立だ。

 現在、カウカモは750社超の住宅再販業者が扱う物件を掲載する。彼らはカウカモ以外の仲介業者にも物件販売を委託しているが、ほとんどの仲介業者は新築物件や築浅物件を大量に扱うため、築年数が長く人気が出にくいリフォーム物件は中々売ってもらえない。また買い手にとっても理想の中古物件を探しきれないなどの難点があった。

「売り手が抱える『せっかくリフォームをしたのに仲介会社が売ってくれない』、買い手が抱える『味のある割安なリフォーム物件を検討したいのに情報が少ない』という双方のペインを解決することが、カウカモの原点です」(村上浩輝社長)


拡大必至の中古物件市場


 カウカモ事業の要となるアプリ及びウェブサイトの会員数は、今期第2四半期時点で前年同期比77%増の約14万人。サイトに月1回以上訪問するMAU(マンスリーアクティブユーザー)は、同48%増の約4万人となった。

 好調の背景には、リノベーション住宅市場の拡大がある。同社によると、首都圏における2018年の中古住宅市場規模は5年前比1・3倍の約1・6兆円、うちリノベーション住宅の潜在市場規模は5000億円。2025年には、これが8000億円まで成長するという。

 同市場拡大の主因は3つ。1つ目は住宅の高齢化だ。

「築年数が15年以上経つと、一般的にリフォームは必要と言われます。2025年には築

25年以上の物件が過半を超えるため、必然的にリフォーム物件数は増えるでしょう」(同氏)

 2つ目は嗜好の多様化。村上社長によると、近年は自由に間取りや内装を選べる中古リノベ物件を選ぶ買い手が増加。また、中古物件は駅近や割安というメリットも中古住宅の人気化に一役買っている。

 3つ目は政策だ。世界の中古住宅流通シェアをみると、米国は9割、英国は8割強に上るのに対し、日本はわずか15%。また、全国の空室数はおよそ800万件という。これを鑑み、政府は既存住宅流通市場の活性化を推進。2025年の流通市場を、2010年比倍増の8兆円規模まで押し上げる計画だ。

「当社の当期第2四半期における流通総額は111億円のため、1・6兆円の市場規模と比較すると100分の1以下しか手掛けていない。将来的には、事業規模を10倍・20倍にする余地は十分あります。また、首都圏で住居購入を検討する人は40万人程度。会員数を10倍まで押し上げることも可能と思っています」(同氏)





ファン確立で継続的な成長を


 今期第2四半期におけるカウカモ事業売上高は、前年同期比38%増の8・3億円、セグメント利益は同125%増の2・7億円。今期の総売上高見通しは、現時点で前期比40%増の

21億円を予想する。

 気になるのがコロナショックの影響だ。村上社長は「一時的に影響を受ける可能性が高いが、中古住宅市場は衣・食・住の領域に入るため、長い目で見れば安定」と話す。

 リーマンショック時の首都圏中古マンション成約数をみると、2007、2008年はショック前水準から微減程度で推移。その後は緩やかに上昇している。

 堅調に推移する同市場を追い風に今後力を入れるのは、「ファンの拡大」だ。商品の

性質上、一度購入するとカウカモサイトから離れる会員は多い。しかし、住宅を購入した会員でもサイトに訪問したくなるように、住居やインテリアに関する記事や、オンラインでのセミナーや座談会などを配信。住宅購入を検討しない人に対してもサイトを意識付けすることで、将来住宅を売買する際にサイトを活用するフックとする。

「最近は住居の定期的な住み替えも進み、5〜10年程度で住宅を購入される方もいます。カウカモ事業は2015年から本格化していますが、当時の買い主が今度は売り主として来てくれる、というようにユーザーとの継続的な関係性を構築したい」(同氏)




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