• 株主手帳編集部

デクセリアルズ【4980・東1】導電性接着テープ、反射防止フィルムなどで高シェア自動車産業の変革期を追い風に、大幅増益へ

 スマホ、ノートPCなど、人々が日常で使っているコンシューマーIT製品の製造に不可欠な機能性材料を手掛けているのがデクセリアルズ4980)だ。導電性を持つ業界最細レベルの接着テープ、反射を抑え視認性を高くしつつ強度も高める反射防止フィルムなど、本来の用途にプラスした機能性、差異化技術で、ニッチな市場ながら世界市場で高いシェアを誇る。2018年度の売上高は605億8000万円、営業利益は37億2400万円。今年3月に就任した新家由久社長は、自動車分野へのリソースシフトを謳う。



新家由久社長

Profile●しんや・よしひさ

01年ソニーケミカル入社。09年ソニー

ケミカル&インフォメーションデバイス、

アドバンストマテリアル事業部商品開発

部統括部長。14年当社執行役員。17年

上席執行役員商品開発本部長、自動車

事業推進グループ長。19年3月当社社

長執行役員、6月当社代表取締役社長

執行役員(現在)。


 同社はソニーの製品向けにプリント基板用接着剤付銅箔などの機能性材料を製造する会社として、1962年に創業したソニーケミカルが前身だ。その後ソニーの再編を経て事業形態を変え、2012年にデクセリアルズとしてスタート、2015年に上場を果たした。大きく分けて「電子材料部品」、「光学材料部品」を提供するが、なかでも主力は「異方性導電膜(ACF)「光学弾性樹脂(SVR)」反射防止(AR)フィルム」だ。スマホやノートPC、タブレットの内部に使用されており、安定した操作性、反射の軽減による視認性の向上など、陰から製品を支える。

 1977年に業界に先駆けて発売した「異方性導電膜(ACF)」は、ハンダ付けできないガラスやプラスチックでもドライバICを実装できる接着テープだ。使用される商品に合わせて進化を遂げ、スマホやPCなど小~中型機器向けの市場では7割、大型も含めた世界市場でも約3~4割を占める。

「光学弾性樹脂( S VR)」はディスプレイモジュールとトッププレートを貼り合わせる液状樹脂の接着剤だ。流し込んで固めるため無駄が出ないのが利点で、このタイプの製品では、同社が世界のほとんどのシェアを握る。「反射防止(AR)フィルム」もディスプレイ用のフィルムだが「スパッタリング」とよばれる独自技術を使い、従来品より反射率を大幅に軽減。今のところ、同社にしか作ることのできない製品だという。

「ACF、SVR、ARフィルム、この3商品が当社の売り上げの6割を占めています。どの製品にもこれまで培った難易度の高い技術が使われていますからニッチな市場といえども、後発製品の参入障壁は高いでしょう。材料開発からシェアをとり、収益が出るまでには年月がかかります。過去にも何社かのメーカーが参入し、撤退しています」(新家由久社長)

 同社の営業手法は“直接顧客”であるディスプレイ・電子部品などのメーカーに企画・提案するだけでなく、その先のIT製品メーカーなど“最終顧客”にも働きかけを行う。最終完成品をどのような価値で提供できるのかを説明し、製品への理解を深めてもらう。すると、最終顧客が直接顧客に同社の部材使用を指定するケースもあり、商機が広がるのだという。


コンシューマーIT市場の減速と

自動車分野の成長不足で減益に


 一方でここ数年のコンシューマーIT市場の減速は、同社の業績に大きく影響した。2019年は昨年に引き続き、スマホ、タブレット、PCなど情報家電の出荷台数が減少。アメリカの市場調査会社によると、特にスマホの出荷台数は2019年に6800万台、前年比で3・8%減少すると予測されている。 

 その結果2016年度から始まった「中期経営計画2018」は当初の計画を下回っ

た。2018年度は前期比で10・1%増ではあるが、当初の計画100億円に対し、37億円の実績にとどまっている。

「売り上げの6~7割をコンシューマーIT分野が占め、かつ特定顧客に依存しすぎたことで市場の変化にうまく対応できませんでした。また自動車事業の専任組織を立ち上げたものの、売上高は全体の10%までしか成長させられなかったのも課題です」(同氏)


自動車分野へのリソースシフト

2023年には全事業の40%まで伸ばす


 新家氏は今年3月、新社長に就任するや事業の構造改革に着手し、既存事業の見直しや組織改革、新規事業の強化などに矢継ぎ早に取り組んでいる。

 なかでも同社が新規事業の柱に位置付けるのが今、100年に1度の大変革期を迎えているといわれる自動車産業に向けた材料供給だ。特にメーター類をまとめたインパネのディスプレイ化、ナビゲーションなどのCID(センターインフォメーションディスプレイ)との一体化、大画面化に向けた動きが加速している。最近は高い視認性、安全性を約束する同社のACF、SVR、ARフィルムが車載ディスプレイに多数採用されており、自動車メーカーとの案件も増えているという。自動車業界では2030年までに車1台にディスプレイが平均2枚、トータルで2・5億枚搭載されるといわれる。同社では自動車向け事業へのリソースシフトに注力し、この分野での更なるビジネス拡大を狙う。

「ゼロ・ディファクト(不具合品ゼロ)のモノづくりを目指す自動車業界だからこそ、コンシューマーIT市場ですでに実績のある当社の製品に注目していただいているのだと思います」(同氏)

「中期経営計画2023」では自動車産業を主力においた新規領域の比率を2021年度で約25%、2023年には約40%にまで引き上げ、売上高800億円、営業利益100億円を目指す。

「世界情勢も不安定ですし、会社の変革期にどう進むべきかのかじ取りは確かにチャレンジですが、テクノロジーを進化させ、社会問題を解決できたらと思います」(同氏)