• 株主手帳編集部

ニチモウ【8091・東1】漁業国日本とともに成長した水産商社 不採算子会社整理し新たな発展目指す

今年8月に創立100周年を迎えたニチモウ(8091)は、漁業・水産業界を主な領域として事業を展開している。1977年に施行された200海里排他的経済水域設定が大きな

転換点となり、食品事業で大きく成長。水産資源の高騰が続く近年では、機械、資材などの事業が好調だ。長期ビジョンとして連結売上高1500億円、経常利益45億円達成を打ち

出し、次の一歩を踏み出している。


松本 和明 社長

1954年生まれ。76年東京水産大学卒、ニチモウ入社。2002年福岡支店長。03年執行役員バイオティックス事業部門担当、バイオティックスSBU長兼バイオティックス営業部長。

08年執行役員食品事業本部長兼食品第一事業部長。10年取締役執行役員食品事業本部長。11年取締役常務執行役員食品事

業本部長。14年代表取締役社長、社長執行役員(現任)。




法改正で主力の漁具が打撃 食品加工を軸に復活果たす


ニチモウの創業は1910年。神戸の投資家が下関にトロール漁業の会社を作ったのが始まりで、19年には製網部が独立し「日本漁網船具株式会社」と名乗る。62年に東証に上場し、

72年には水産専門商社を志向して現在の社名である「ニチモウ」へ社名変更した。同社の事業部門の中で最も歴史が古いのは、漁網や漁具などの製造・販売を展開する海洋事業。19

10年の創立以来、日本の遠洋漁業の繁栄とともに業績が拡大した。しかし1977年に国連海洋法で200海里排他的経済水域が制定されたことが転換点となる。世界の有望な漁場の漁業権が他国に移ったことで、遠洋漁業の船団が減少。同社が供給してきた漁網・漁具の売上も大きく落ち込んだ。 海洋事業に代わって急激に売上を伸ばしたのが、すり身、カニ、助子(タラコなどの原料)などを扱う水産物食品事業だ。世界中の漁場にスタッフを派遣し、高品質な水産物の輸入、買付、国内販売、加工製品の販売を展開。食品の加工機械を供給する機械事業、食品包装資材などを供給する資材事業も売上を拡大している。   

「200海里規制で遠洋漁業に出られなくなった日本の水産会社は、陸に上がって総合食品会社へと業態を変換していきました。その時に当社が食品工場の製造機械や資材を販売したのが機械事業と資材事業のきっかけです。最近この2事業が伸びています」(松本和明社長)


専門商社ならではの強み 加工ラインを一貫提供


水産物を扱う食品事業は同社の売上高の6割を占めている。しかし近年、中国や東南アジアの需要が拡大したことで水産資源が世界的に高騰し、以前のように大きな利益を上げることが難しくなった。それに代わって最近では機械事業、資材事業が利益に貢献している。特に食品製造機械を扱う機械事業は、2019年3月期の部門売上高が139億9300万円(前期比37億6800万円増)と大きく伸びている。機械事業における同社の強みは、食品製造ラインを一貫して提供できること。人手不足を背景に製造自動化ラインの需要が拡大しており、それに伴って販売が伸びている。水産物加工だけでなく中華惣菜や豆腐製造ライン提供でも存在感を広げている。

「当社は単品機械のメーカーを束ね、それを組み合わせてライン化して食品メーカーに販売しています。機械の組み合わせ方には機能を最大に発揮するためのノウハウがあり、単品だけのメーカーには真似できない。最近では製造ラインだけでなく、工場の建物全体の工事請負など、ゼネコンとしての業務も手がけ始めており、大型案件も増えてきています」(同氏)資材事業は、もともと水産加工用トレーなどの製造・販売などから始まった事業だが、現在では住宅用部材シートや印刷用フィルムなどに進出し、売上、営業利益ともに増加している。


取り扱い製品の例。国内外の専門メーカーと連携し、食 品製造・加工の機械提供、製造加工プロセスの効率化、 省人化のための製造ラインの構築を行っている(写真 は春巻き成形機と蒸気熱交換式フライヤー)

















子会社処分で経営が安定化

事業間連携で利益幅拡大目指す


同社は今年3月、アルゼンチンの子会社「サンアラワS・A」をノルウェーの企業に売却し、49億円の特別損失を計上した。魚のすり身の安定供給をはかるため2013年に買収したが、その後アルゼンチン・ペソが暴落を続けたことから同社は大きな為替差損を抱えていた。今回の売却によって、業績の大きな変動要因が消え、またすり身は継続して供給される契約のため、安定した収益が見込めることになった。「すり身の確保は非常に重要。ヨー

ロッパやアメリカでもカニカマを食べるようになり、世界的に需要が拡大し、すり身が簡単に手に入らなくなる時代が近づいています」(同氏)子会社整理で経営の安定化が進んだこともあり、同社は、グループ全体で1500億円、経常利益45億円という長期的な業績目標を打ち出した。

 同社は売上高より利益幅の拡大を狙う方針で、そのポイントとなるのが事業間の連携だ。たとえば海洋事業で養殖している鮭を、食品事業がスモークサーモンなどに加

工するというように、付加価値をつけた新たな商材を生み出していく。「水産物の生産から小売という流れの中に、当社事業が連携しながら入っていくことで、新たな提案や商品、販路が開拓できる。まさに当社が水産専門商社だからできることで、今後はそこを狙うべきだと考えています」(同氏)


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