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ファルコホールディングス【4671・プライム】

関西中心に展開する臨床検査受託大手

ICTとゲノムへ事業領域拡大



 ファルコホールディングスは売上の6割を占める臨床検査受託事業のほか、調剤薬局事業を主軸に展開してきた。現在同社では事業の構造転換期を迎えており、ゲノム(遺伝子)ビジネスと、医療機関の運営支援を行うICTビジネスを精力的に拡大している。今期を最終年度とする中期経営計画では、前述の2事業で売上全体の10%超を目指す。ゲノム・ICTともに好調に伸びており、目標達成を見込む。


 
安田 忠史 社長

Profile◉やすだ・ただし

1958年8月生まれ、大阪府出身。81年早稲田大学教育学部卒業。95年、ファルコバイオシステムズ(現ファルコHD)入社。2003年に取締役、08年に専務取締役、10年にファルコビジネスサポート(現:メディサージュ)代表取締役。15年にファルコバイオシステムズ代表取締役、ファルコファーマシーズ代表取締役、ファルコHD取締役副社長を経て、17年に代表取締役社長に就任(現任)。



 

売上は臨床6割、調剤4割

中計で新事業売上高10%目標



 ファルコホールディングスは関西を中心に、業界トップクラスの1万数千件の医療機関と取引する臨床検査受託大手だ。同社では血液や尿、採取された組織片や細胞などから、膨大な項目の臨床検査を請け負っている。

 同社は臨床検査の黎明期である1962年に京都で創業した。先行企業が着手していた大病院や研究機関ではなく、診療所をターゲットに顧客を開拓。「翌日に結果報告」という当時では画期的な納期の早さを強みに事業を拡大した。その後、西日本各地で6社を独立創業。99年からは調剤薬局事業に参入し、2004年にチューリップ調剤を子会社化。現在は関西と北陸を中心に109店舗を運営している。23年3月期業績は、売上高469億1300万円(前期比6・2%減)、営業利益は30億7500万円(同44・0%減)。売上構成は臨床検査事業(ゲノム・ICTの新事業含む)が66%、調剤薬局事業が34%となった。

 直近4カ年は新型コロナウイルスのPCR検査による特需が発生。特に22年は、24年を最終年度とする中期経営計画の最終目標「売上高450億円・営業利益30億円」を上回った。しかし業界全体の動向と同様に、コロナの沈静化により検査単価は低下し、受託数は減少。同社の業績もその影響を大きく受けた。

 また、今後も臨床検査・調剤ともに国の医療費削減方針による診療報酬・薬価の引き下げが見込まれ、業界全体で徐々に収益力は低下の傾向。厳しい環境下にある。同業他社との競争も激しくなってきたことから、同社では新たな収益確保を模索してきた。

「主力2事業が厳しい事業環境にある中、当社では収益性・成長性の高いゲノム・ICT事業を新たな収益基盤とするべく、事業構造の転換を進めています。新事業は順調に伸びており、中期経営計画の目標『新事業による売上高10%』は達成を見込んでいます」(安田忠史社長)




00年に遺伝子関連に参入

癌スクリーニングが成長の柱に



 同社がゲノム(遺伝子)事業に参入したのは00年。米国のミリアド・ジェネティックス社と契約し、BRCA1/2遺伝子検査(遺伝性乳癌や卵巣癌の検査)の日本における独占実施権を取得したことが始まりだ。18年には、世界で初めての癌種横断的なコンパニオン診断薬※1として体外診断用医薬品「MSI検査キット」(FALCO)の製造を開始した。

「MSI検査キットは18年12月から保険適用となりました。大腸癌以外にも適応を拡大しており、ゲノム事業の中核製品として事業を牽引しています」(同氏)

 またゲノム事業のもう一つの柱として、出生前遺伝子検査(NIPT)※2がある。国内の大手検査センターでは同社が唯一商業的に実施しており、高齢出産化に伴ってニーズは年々拡大傾向だ。

「新たな成長軸としては、遺伝性腫瘍パネル検査の研究開発を進めています。癌が遺伝性か否かを一度に多数の遺伝子で調べ、個別化医療に繋げるための検査です。収益化を目指し、投資を続けていきます」(同氏)


※1 最適な治療薬を選ぶために、がん組織などを用いて、特定の医薬品が効きそうかなどを確認し、その医薬品を使用するかどうかを判断するための薬

※2 妊娠中の母親の血液を採取し、その中に微量に存在する胎児由来の染色体異数性を調べる検査。14年11月より受託開始した












◀臨床検査の様子





クラウドサービスをスタート

中小病院のDX化を支援



 ICT事業においては、医療機関運営支援を行うクラウドサービスを次々とリリースしてきた。16年に販売開始した電子カルテ「HAYATE/NEO」は、全国に1000施設ほど存在する200床以下の中小病院がターゲット。診療所や大病院は電子カルテ化が進んでおり競争も激しいが、中小病院は導入率が低いため今後も伸びが期待できる。販売は順調に推移しており、前期までに41の医療機関で採用された。

 また、グループ会社より20年から販売開始した診療所向けクラウド型サービス「レセスタ」には、20年かけて集約した診療報酬請求ノウハウを集約。レセプト(診療報酬明細書)算定支援に留まらず、Q&Aや対面・オンラインでのコンサルティングサービスによる一歩踏み込んだ支援を提供している。診療所向けサービスのため、臨床検査の営業基盤をそのまま活かせることも強みだ。

「ICT事業は広げれば広げるほど収益が上がるストックビジネスです。『HAYATE/NEO』『レセスタ』ともに先行投資を経て収益化に繋がっており、今期からはセグメントを独立して開示します。また既存の臨床検査・調剤事業においても、同業に先立ってICT活用による効率化及び収益力向上を進めています」(同氏)




スタンダード市場へ移行発表

増配と自社株買いで還元強化


 8月10日、同社は10月20日付でのスタンダード市場移行を発表した。移行により株主還元手段を多様化し、機動的で柔軟な資本政策の推進、事業構造の転換加速に繋げる考えだ。11期連続増配を続ける同社では、今期も記念配を除いた普通配を増配予定。配当・自社株買いによる還元額は、連結純資産総還元率3%目標だったところを今期から4~5%に引き上げている。

臨床検査大手ビー・エム・エル社と資本提携

 同社は23年3月10日付で、臨床検査で国内大手のビー・エム・エル社との資本提携を発表した。互いに14億円分の株式を取得し、両社の経営の独立性を維持しつつ、協力関係を強化する。臨床検査分野・ICT分野での相互連携によって、サービス・収益の拡大を目指す。

 

2023年3月期 連結業績

売上高

469億1,300万円

6.2%減

営業利益

30億7,500万円

44.0%減

経常利益

33億1,000万円

43.0%減

当期純利益

22億6,100万円

36.0%減


2024年3月期 連結業績予想

売上高

417億円

11.1%減

営業利益

20億円

35.0%減

経常利益

21億円

36.6%減

当期純利益

13億円

42.5%減


※株主手帳23年10月号発売日時点




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