• 株主手帳編集部

フジテック【6406・東1】国内シェア4位、世界シェア7位の昇降機専業メーカー 新設、アフター、モダニの一貫体制で安定成長を継続

 フジテックは、エレベーター、エスカレーターの研究・開発、販売、生産、据付から保守、モダニゼーションまで一貫して手掛ける昇降機専業メーカーだ。同社は現在世界23の国と地域でグローバル経営を展開。市場シェアは国内4位、世界7位(推定)を占めている。創業から70年以上、ほぼ黒字経営を続けており、2020年3月期は売上高及び純利益で過去最高を達成。ビジネスモデルと今後の成長戦略について、内山高一社長に聞いた。

内山高一社長

Profile◉うちやま・たかかず1951年7月16日生、兵庫県出身。ニューヨーク大学経営学部卒。76年フジテック入社、78年取締役、81年常務取締役、89年専務取締役、92年代表取締役副社長、2002年代表取締役社長(現任)。2005年フジテック執行役員社長(現任)、10年グローバル事業本部長(現任)、16年東アジア担当兼務(現任)、国内事業

本部長、19年北米担当兼務(現任)。



昇降機専業のグローバルメーカー


 フジテックのエレベーター、エスカレーターは世界中のオフィスビル、ホテル、複合施設、交通機関などに設置されている。

 代表的な建物は、海外では建築家の丹下健三氏が設計したシンガポールの超高層ビル、ワン・ラッフルズ・プレイス(旧OUBセンター)や、ニューヨークタイムズの本社ビル、ニューヨーク・タイムズ・タワーなどが、国内では複合商業施設の六本木ヒルズなどがある。

 国内の昇降機業界では、フジテックは三菱電機、日立製作所、東芝に次ぐ。3社は重電系の大手総合電機メーカーだが、同社は唯一の昇降機専業メーカーとしてシェアを維持している。

 1948年、創業者の内山正太郎氏がフジテックの前身である富士輸送機工業を創業。63年には大阪証券取引所二部に上場した。

 東京オリンピックが開催された1964年、「世界は一つの市場」の理念を掲げ香港に現地法人を設立。日本の昇降機メーカーではいち早く海外へ進出。香港を皮切りに、東アジア、南アジア、北米、南米、欧州と市場を拡大してきた。

「香港はもう60年近く、シンガポールも間もなく50年になります。それらの国々がこれから大きくなろうという時に進出しました。当時日本では、公団住宅でも5階くらいまではエレベーターが付いていなかった時代。一方海外では、高層ビルが建設され活況でした。そのため海外進出を目指したということです」(内山高一社長)

 エレベーターは国によって多様なニーズがあると内山社長は言う。同社は世界23の国と地域に拠点を構え、1万人以上の従業員がいる。地域別では国内3000人、東アジア4700人、南アジア1700人、欧米が800人。約7割が現地スタッフで構成され、地域に根付いたグローカル経営で各国のニーズに対応している。


一貫体制の安定したビジネスモデル


 昇降機業界では、3つの事業区分がある。設計・開発、製造から据付まで行う新設事業。

24時間365日管理・保守を行い、修理・点検を行うアフターサービス。そして20〜30年で寿命を迎えるエレベーターに対しリニューアル工事を行うモダニゼーションだ。

 フジテックは、新設、アフターサービス、モダニゼーションを全て自社で手掛ける一貫体制を強みに、創業から70年以上に渡り、ほぼ黒字の安定した経営を続けている。また、エレベーターと合わせエスカレーターも手掛けており、取扱台数比率はエレベーター9割、エスカレーターが1割を占める。

「当社の事業は、日本と世界のマーケットがあり、新設とアフターの事業があります。そのため、地域地域で見るとどこか悪くてもどこかが支えてくれる。一方が悪くても他方で支えるというお互いの関係でリスクヘッジができています。できるだけ何軸かで安定したビジネスモデルを作り上げようということです」(同氏)

 この10年間の業績を見ても、2010年度(11年3月期)の売上高1020億円・営業利益52億円から、2013年度に1470億円・128億円、2015年度1771億円・144億円と、ほぼ右肩がりに業績を伸ばしている。成長の要因について内山社長は次のように話す。

「とにかく日本では首都圏をはじめ全国でパイを大きくし、グローバルではさらに伸ばしていこうと取り組んできました。特に中国や南アジアで出来るだけ伸ばしていこうという積み上げが、売上・利益に繋がったと思います」

 前期2020年3月期の連結業績は、売上高1812億円、営業利益133億円、純利益

99億円で、売上高及び純利益で過去最高を達成した。前期のセグメント別売上高比率は、日本39%、中国・香港を含む東アジア38%、シンガポール・インドを含む南アジア9%、北米・欧州14%と海外比率が60%を超える。特に中国を含む東アジアの売上比率は、1999年の17%から、2009年には30%、現在の38%と成長が著しい。

 今後もこの勢いが続くと見込まれるため、同社の売上に占める海外比率はいずれ7割近くに達することも予測される。


■同社のエレベーターが設置されている代表的な建物

▲六本木ヒルズ








▲ニューヨーク・タイムズ・タワー









▲ワン・ラッフルズ・プレイス















非接触の新スタンダード機種


 2021年3月期の連結業績予想は、売上高1690億円(前期比6・7%減)、営業利益133億円(同0・6%減)と減収減益を見込む。当初は新型コロナウイルスによる影響を受け、新設・モダニゼーションともに工事の延期・閉鎖が発生したものの、縮小傾向にあり継続している状況という。2月には通期予想を上方修正した。 

「受注活動は、概ね各国で官公庁や大型案件は活動を継続しています。保守は社会基盤の維持ですので継続的に提供しております。日本と東アジアの業績は1Qを底に回復傾向に転じ、南アジア・北米・欧州は2Qに落ち込みましたが3Qには復調してきました。日本・アジア地域の回復がけん引したと言えます」(同氏)

 同社が昨年4月に販売開始したのが、日本国内向け新標準型エレベータ「XIOR(エクシオール)」だ。12年ぶりにフルモデルチェンジを施し、〝スタンダードを超えた新しいエレベータ”と称し、業界初*のエレベータ専用クーラーを標準装備、業界最速*の最大定格速度分速120mに対応、業界最大*の8・4インチ大型液晶モニター搭載と3つの機能を実現(*国内標準型マシンルームレス・エレベータにおいて。2019年12月時点同社調べ)。

 新しい生活様式に対応した機能も充実している。ボタンに触れずに行き先階登録が可能な「エアータップ」は、昨年末に標準装備に仕様変更。その他にも、エレベーター内の混雑状況がわかる「混雑度表示」、プラズマクラスター技術で空気を浄化する「イオンフル」など、衛生面を強化することで今の社会のニーズに応え拡販を図る。

 行先階登録システム「EZ─SHUTTLE(イージーシャトル)」も欧米を中心に需要が期待される。これは、利用者が乗場で行先階登録装置に目的階を入力すると、乗車するエレベーターが自動的に割り振られるというもの。行先階をグループ化することで運転効率化になり、朝の出勤時などの待ち時間や移動時間の短縮に繋がる。

 フジテックの新設とアフターマーケットの事業比率は約50:50。アフターマーケットの中でもメンテナンスの比率が一番高く、次いでモダニゼーション、修理の順だ。国内ではエレベーター保守の独立系企業が台頭してきているが、その点については内山社長は自信を見せる。

「当社は新設から保守、モダニゼーションと一貫した体制で事業をやらせていただいており、ほとんどの場合当社でメンテナンスさせていただいています。当社から独立系に流れる台数は非常に少ないです。お客様によっては値段等で独立系に流れても、技術的なフォローやモダニゼーションであるとか、フジテックさんできたらまたお願いしたいと、当社に戻ってきていただけるケースもたくさんあります」(同氏)


▲非接触ボタン








▲混雑度表示











3つの重点領域に注力


 2019年度に開始した3ヵ年の中期経画、〝Innovation,Quality & Speed”は、初年度に目標値を達成。今期はコロナの影響がある中、昨年12月「新たな戦略的方向性」を発表した。中長期の成長戦略として3つの重点領域に注力していく。

 1つ目は、成熟市場におけるアフターマーケット事業への注力。自社製品だけなく他社の既設のエレベーターも、同社の技術力・機器でモダニゼーションできるパッケージ商品を市場に投入しモダニゼーション事業の拡大を図る。保守事業では、Googleマップと連携した保守情報管理システムを構築し、保守人員の作業効率の向上、災害時の初動対応の自動化などに努めており、今後もシステムの機能向上を進める。

 2つ目は、中国や南アジアの成長市場での事業拡大。中国では、代理店を通さず自社で直で販売する割合を増やす体制に力を入れるほか、エクシオールのような中国向けの標準機種の投入、機器のコストダウンなどでシェアを高めていく。インドでは、今期工場に設備投資し2000台の生産体制を整えている。

「中国では徐々にエレベーターを納入して年月が経ってきておりますので、モダニゼーションなどのサービスも重要視しています。中国のように、インドは何年か先には大きく発展する時期が来る。我々としてはその波に乗っていきたいと先行して投資をしています」(同氏)

 3つ目は、業務革新による収益力向上だ。BIMや3D─CADを活用し設計・生産の自動化と省人化を進め利益率を高めていく。また、昨年東京都大田区に、物流と人材育成の機能を兼ね備えた新拠点「東京フィット」をオープンした。国内外で調達・製造したものを東京フィットに集め、事前に据付機器を組み立て現場へ持って行くという、プレアッセンブルのシステムの導入も開始している。現場の省力化、工期短縮、品質向上に繋がる取り組みとして推進する。


▼自社研修でメンテナンスの専門技術者を育成している















安全・安心最優先で時代に適した製品を


 同社の株価は、バブルの1980年代に2000円の高値をつけ、リーマンショック直後の2008年に300円まで下げた。以後徐々に持ち直し、2020年夏には2000円台まで戻し、現在は2500円程で推移している。今年2月には、株主優待制度の導入を発表。同時に今期配当修正も発表し、前期から10円増配の年間60円とする予定だ。なお中長期的には、配当性向を現在の40%から50%以上の水準を目指している。

 今後、5〜10年後の方向性について、内山社長は次のように話す。

「当社は、売り手よし、買い手よし、世間よしの三方よしということで、株主様、従業員、取引先、サプライヤー、すべての人にご満足いただきたい考えです。このような時代ですので、非接触などの新しい生活様式に合った商品を提供していきたい。これから日本は高齢化社会がさらに進行します。エレベーター、エスカレーターというのは社会インフラを担うということで、皆様に優しく、創業当時から変わらない〝安全・安心〟を最優先に、商品・サービスの提供を行っていきたいと思っております」(同氏)

【世界のエレベーター市場】


中国・南アジアで新設、成熟国ではモダニゼーション


 世界の昇降機メーカーの上位企業は、売上高1兆円を超える米国のオーチス社、スイスのシンドラー社、フィンランドのコネ社、ドイツのティッセンクルップ社などがあり、フジテックは世界7位に推計される。その市場規模は推定で約8.6兆円(2020年)(*1)。今後は、新興国における人口増加、都市インフラの整備、さらに成熟国での高齢化などが進むことから、年率2.5%で成長を続け、2027年には約10兆円まで拡大することが予想される(*2)。

 世界全体のエレベーターの新設台数は年間約100万台。そのうち約6割が中国で、新設市場を牽引している。その他新設市場の大きな成長が見込まれるのが、インド、メコン流域のミャンマー、ベトナム、カンボジアなど新興国でかつ都市化が進む地域だ。

 一方で日本を含む欧米など成熟国では、新設台数の成長は限定的でもある。(社)日本エレベーター協会の「2019年度昇降機設置台数等調査結果報告」によると、国内のエレベーター、エスカレーターを合わせた2019年度の新設台数は2万8719台、保守88万8207台、リニューアル3003台。1999~2019年度の20年間では、新設台数が年間3万9000台から2万8000台に減少。反対に保守台数は59万台から88万台に増加している。今後も既設の保守やモダニゼーションなどのアフター事業の拡大が見込まれる。


*1,2 

出典:Global Market Insight:https://www.gminsights.com/industry-analysis/elevator-market