モダリス【4883・マザ】ゲノム編集による遺伝子治療薬開発に強み 多くの新薬開発を目指し研究進める


 モダリスは遺伝子治療薬の開発・研究を行う創薬ベンチャーだ。遺伝子を切らずに病気の原因となる遺伝情報を編集する独自技術「クリスパーGNDM」での新薬開発を得意としている。2021年2月末時点で大手製薬会社と協業で進めていた新薬2種類のライセンス契約を結んでいる。ライセンス契約締結時期の遅延などにより直近の業績では低迷が続くが、少しでも多くの患者を救うことを第一に考え、早期での黒字化を目指す。

 

森田 晴彦社長

プロフィール◉もりた・はるひこ

1969年生まれ。94年、麒麟麦酒(現協和キリン)入社。2003年ワイズセラピューティックス経営企画部長兼事業企画部長就任。06年レグイミューン代表取締役CEO就任。14年、ライフサイエンスイノベーションマネジメント取締役就任(現任)。15年、オルファビオ代表取締役CEO就任などを経て、16年1月にモダリス代表取締役社長就任(現任)。同年4月、EdiGENE(現Modalis Therapeutics)CEO就任。



 

難病の遺伝子疾患に挑む

汎用性の高い独自技術が武器


 創薬ベンチャーのモダリスは、遺伝子の働きを切り替える独自の技術を用いて新薬を開発する。人間の疾患は全部で約1万あるといい、その内の約7000が患者数5万人以下の希少疾患と呼ばれる。その中の8割が遺伝子のエラーによって起こるいわゆる「遺伝子疾患」と呼ばれるもので、患者数の少なさなどから開発が見送られ、未だ95%には治療法がない。しかし、同社の技術は、一つの方法で複数種の治療薬を生み出せる高い汎用性を秘めている。

 遺伝性疾患に対する治療法は一般に2種類あるとされる。一つ目は不足している遺伝子を「ベクター」と呼ばれる遺伝子の運び屋を使って外から足す治療法。もう一つはエラーが起きている遺伝子を切り取り、正常な遺伝子と置き換える、ゲノム編集という方法だ。モダリスが得意とする「CRISPR─GNDMⓇ(クリスパーGNDM)」はそのゲノム編集技術から派生したものである。

「人体は約37兆個の細胞からできています。しかし、元をたどるとたった一つの受精卵から始まっている。したがって、どの細胞も全く同じDNAの設計図を持っています。にも関わらずなぜ肝臓やら眼やらと細胞ごとに違いが生まれるのかというと、細胞の中のDNAにコードされた遺伝子の前に、オンかオフかが精密に制御されたスイッチのようなものがあります。その入り方で、機能の多様性が生まれます(上図参照)。本来、オンになるべきスイッチがオンでなかったり、オフになる時に誤ってオンになっていた場合に遺伝子疾患が発生する。そこで、我々はそのスイッチを触ってオン・オフを調節し、治療薬を作ります」(森田晴彦社長)

 通常のゲノム編集は、ハサミの役割を持つ酵素と切断するものを定める酵素、正常配列のDNAをベクターに入れ、患者に注射。これが異常な遺伝子を切り取り、正常なものと交換することで治療する。

 一方、同社の技術はハサミの酵素を改変によってあえて切れなくし、その代わりにスイッチを切り替えるタンパクを連結。遺伝子が出過ぎて生じる病気の場合にはスイッチをオフに、遺伝子が足りなくて起こっている病気の場合にはスイッチをオンにして治療を行う。

 ゲノム編集ではガン化のリスクなどがあるがモダリスの技術ではDNAを書き換えないのでこういった懸念がなく、スイッチの操作だけで汎用性も高い。

▲遺伝子スイッチのオンオフを切り替えて治療する



リスク低減の速さに着目

2つの収益モデルを展開


 日本で遺伝子治療薬第一号が承認されたのは2017年。それより一年早い、16年に設立した同社は、この分野において国内で唯一に近い存在だという。

「日本では遺伝子治療の分野を進める会社は大手の一部以外、ほとんどありません。従って当社は、国内においては遺伝子治療でかなりリーディングポジションにあると思う。また世界的に見ても、遺伝子治療の中の遺伝子制御分野ではリーダー的位置にいます」(同氏)

 ビジネスモデルは、自社モデルと協業モデルの2つを展開する。協業モデルではモダリスの独自技術を生かして、大手製薬会社と共同で新薬を開発。開発段階に応じて、協業先からの契約一時金やマイルストン収入などを得る。

 一方自社モデルでは、自社のみで新薬開発を行い、適当なタイミングでパートナーにライセンスアウトし収入を得る。代表的なものとして出生後すぐ、筋力低下などの機能不全が生じる先天性筋ジストロフィー1A型という重篤な疾患の治療薬などがある。


業績不振も成長の余地あり

患者救済を第一に開発進める


 研究開発費が嵩むバイオベンチャー業界では赤字上場もよくあるが、モダリスはその独自性もあり、早くから引き合いを確保。上場直前の19年12月期は売上高6億円・営業利益率24%の高収益をたたき出し、20年8月のIPO時は初値が公開価格の2・1倍まで高騰した。

 だが21年12月期業績は売上高が前期比99・7%減の100万円、営業利益は12億3900万円の赤字(前期は3億9800万円の赤字)に喫した。業績不振の一因は、ライセンス契約締結時期の遅延だ。21年2月末の段階では協業5本、自社3本、計8本が進んでいたが、22年に入り、協業2本の開発で、パートナー先のアステラス製薬が戦略上の理由で撤退した。1本は開発段階で高い有効性を示すデータが取れたため自社モデルに変更したが、もう1本は完全に中止となり、現在は自社4本、協業3本で進めている。

 今後は、さらに研究開発の数を増やし、それぞれの開発を順次進めていく。同社によると同技術は2200の診断可能な単因子遺伝子疾患まで対応可能だが、独自性を保ち、優位性を持って展開するために100のコアターゲットに絞り、毎年2本ずつ程度を目標に増やす予定だ。

「現行の研究開発を進めることと新たなパイプラインを創製する2軸で成長機会を考え、人員も増やしています。遠い将来ではなく黒字化は実現できると思う。ただ、黒字化というのは結果でしかないとも思っています。重要視するのは薬を可能な範囲で増やすこと。その結果、収益をいただくイメージ。たくさんの患者さんが救われることが一番です」(同氏)



 

2021年12月期 連結業績

売上高

100万円

前期比 99.7%減

営業利益

-12億3900万円

経常利益

-12億3100万円

当期純利益

-7億3800万円


2022年12月期 連結業績予想

※現時点で合理的な業績開示ができないことから非開示


※株主手帳4月号発売日時点