• 株主手帳編集部

ヤマウラ【1780・東1】長野県南信地域地盤の中堅ゼネコン100年続く「エンジニアリング」の伝統

 ヤマウラ(1780)は、南信州を中心に建築・土木事業を展開し創業101年目を迎える。地域密着型のゼネコンとして公共工事や工場ラインの設計・施工、橋や水力発電所などの建設など幅広い事業を手掛けている。設計部門への3次元モデル導入や社員教育のIT化など先端的な取り組みにも注力している。

山浦 正貴社長

Profi le◉やまうら・まさき

1971年5月28日生まれ、長野県出身。95年3月、芝浦工業大学工学部卒業。2000年ヤマウラに入社。佐久支店長、駒ヶ根支店長などを経て11年取締役に就任。13年常務取締役管理本部副本部長、14年取締役副社長。16年4月代表取締役副社長、19年6月、代表取締役社長に就任(現任)。



設計・施工比率は8割

ニーズ見極めた工事で受注増


 長野県駒ヶ根市に本拠地を置く同社は、建設事業、エンジニアリング事業、開発事業等を展開している。売上高の中で、主力部門の建設事業が179億9700万円と約4分の3を占めている。 

 建設事業の施工実績は民間の建築物が主体で、建物から店舗、工場、医療・福祉施設など幅広い。学校工事など公共工事は全体の15〜20%、道路やダムなどの土木工事は約1割となっている。

 他の多くのゼネコンと違う点は、自社での設計・施工担当比率が8割を超えていること。一般的なゼネコンの社内設計・施工比率はおよそ3割程度といわれているが、同社はきわめて多い。顧客ニーズや地域の気候、地形的特徴などに合わせたきめ細かい設計・施工が信頼を得て受注につながっているという。

「建物づくりを知る会社が設計もすることで無駄のない施工ができる。それがお客様の満足度を高め、競争力の高さにつながると考えています」(山浦正貴社長)


自社工場で鉄鋼を加工・溶接

ダム制御システムも内製


 同社のもうひとつ特徴的な点は、エンジニアリング事業部門を備えていること。部門売上は23億3600万円で全体の約1割を占める。同社規模のゼネコンがエンジニアリング部門を持つ例は極めて少ない。

 エンジニアリング事業には「工機」と「電気」の2つのセクションがある。「工機」では2工場を持ち、鋼製橋梁の製造や鉄鋼素材の機械加工、溶接を行っている。「電気」ではダムや遊水地などを制御するシステムを受注し、プログラムの開発から設備づくり、工事まですべて担当する。

「当社のスタートは1920年(大正9年)に創業した山浦鉄工所で、地元の産業だった養蚕のための鉄骨の小屋や水中ポンプなどを製造していた。エンジニアリング事業は当社の伝統であり強み。現在では水力発電所や工場、流通、研究所などの建設で、建設事業部門とエンジニアリング事業部門が連携し、企画から設計、製作、施工からメンテナンスまで一気通貫で担当しています」(同氏)


他社に先んじてIT化を推進

全社的に効率、コストが改善


 同社はITによる業務効率化も進めている。技術者の残業時間改善に端を発した基幹システムの再構築は、現社長みずからが約6年かけて取り組み、昨年4月に本格導入した。新システムでは資料作成の手間が減っただけでなく、社員のコスト意識が変わり、利益率の大きな改善につながった。

 設計の面では、建物や土木の完成形を可視化する「BIM」と「CIM」を採用している。

 BIMとは「Building Information Modeling」の略称で、建物の形だけでなく各部屋の面積、材料・部材の仕様・性能、仕上げなどの情報を併せ持つ3Dモデルを構築できるもの。CIMはBIMの土木版だ。建築を知らない人でも、建物の完成形を隅々まで理解できるため、顧客との合意形成が格段に進み、工事の手戻りが大幅に減った。

「BIM、CIMの導入では全国でも最先端。図面書きには文系新卒女性を採用してBIMオペレーターを養成。1年経つと設計士以上に使いこなせるようになり、大きな戦力になっています」(同氏)


シャトー・メルシャン椀子(まりこ)ワイナリー










社内システムで人材育成

資格取得に手厚いサポート


 建築業全般の課題である人材育成についても積極的に取り組む。

 昨年4月から「ヤマウラアカデミー」という教育システムをスタート。「入社3年目で独り立ち」というテーマの元、たとえば工事部門であれば実際の工程や、現場の納まりなどについての動画を撮影。この映像を全社員がオンラインでいつでも見ることができる。

 現在は100件ほどの教材が揃う。新人に逐一教える手間が省けるだけでなく、内勤の社員が工事部門の仕事内容を知るなどして、社内での相互理解を深められるのもメリットだ。

 また伝統的に資格取得を奨励しており、勉強会の開催や学校費用の負担などのサポートの他、手厚い資格手当がある。社員数約360名のうち、技術士13名、一級建築士46名、二級建築士60名、宅地建物取引士47名(延べ人数)と有資格者の割合は高い。


エンジニアリングとの連携強化

長野県内でシェア拡大を狙う


 8月初頭に発表された同社の2021年3月期第1四半期の決算は、売上高は前年同期比で減少したが、受注高は6億2000万円の増加となっている。

「今後は工場などの生産設備や小水力発電事業など、建設とエンジニアリングが一体で取り組む案件を増やし、設計・施工の知識やノウハウをさらに蓄積していく。そして長野の中でも北信・東信地域ではまだまだ知られていないので、そちらでの顧客づくりも強化していきたい」(同氏)


エンジニアリング事業が手掛けた除 塵機











平成29年度三遠南信天竜峡IC道路 建設工事













© 2019 青潮出版株式会社

  • Black Facebook Icon
  • Black Twitter Icon