リニカル【2183・プライム】製薬会社の治験業務を受託するCRO事業展開 コロナ禍の影響から回復し22年3月期は増収増益へ


 リニカルは、製薬会社の医薬品開発における臨床試験(治験)業務の一部を受託するCRO(Contract Research Organization)事業を主に展開している。新薬開発の領域と業務を特化して他社との差別化を図り、創業から3年でマザーズ上場、その後4年で東証1部上場を果たした。2022年3月期はコロナ禍の影響からの回復により、増収増益の見込み。同社は「日本発のグローバルCRO」として世界規模の新薬開発支援体制を整えており、今後はM&Aを活用した規模拡大などに取り組んでいく。


 

秦野 和浩社長

プロフィール◉はたの・かずひろ

1965年3月17日生まれ、京都府出身。星薬科大学薬学部卒業後、マルホ開発本部臨床開発部に入社。99年に元藤沢薬品工業(現アステラス製薬)に転職し、開発本部医学調査部にて免疫抑制剤の臨床試験に携わる。2005年に創業者としてリニカルを設立し、代表取締役社長に就任(現任)。


 

治験のフェーズⅡとⅢに特化

専門性磨きブランド化図る


 リニカルは2005年、旧藤沢薬品工業(現アステラス製薬)で医薬品開発の経験を有するメンバーが中心となり、大阪発理想の医薬品開発受託(CRO)事業を目的として設立された。

 CRO事業とは、製薬会社が手掛ける新薬開発の段階のうち、臨床試験(治験)業務の一部を受託する事業だ。医薬品開発には、基礎研究、非臨床試験、治験、申請・承認・販売の段階がある。同社は「事業特化型CRO」として、治験の主な段階であるフェーズⅡとⅢに特化。また、治験の主要業務であるモニタリング業務に特化して受託し、製薬会社の新薬開発の効率化を支援している。

「フェーズⅡとⅢは実際に患者さんに投与して性能を確かめる試験であり、何の患者さんにどんな容量で使うのか、どんなデータを取るのかなどの詳細な計画を立てて手順を監視し、データ収集を行います。既存薬と比較して効果があるかなどを検証するので、膨大な時間とコストが掛かる。製薬会社にとっては大きな負担となるため、多くの企業は治験業務をアウトソースして効率化を図っています。当社は経験とノウハウを積み重ねているので、約6割の案件を前倒ししており、製薬会社にとっては1日も早い承認申請が可能です」(秦野和浩社長)

 またリニカルは、新薬の領域をがん、中枢、免疫の3領域に特化している。この3領域は難易度が高いこと、高齢社会に向けて製薬会社が投資を増やしていることなどから成長性の高いマーケットとされる。同社はこの領域で専門性を磨きブランド化を図り、これまでに50社以上からの受注を獲得、約300以上の試験を受託している。

「創業して1~2年目に中枢領域のパーキンソン病の新薬開発と、免疫両機の関節リウマチの新薬開発の治験案件を受託できたので、『これで間違いなく上場できるぞ』と思いました。一方、抗がん剤は苦労しましたが、国内でも研究者が次々と抗がん剤開発を手掛けるようになったので、その波に乗って東証1部上場を達成しました」(同氏)


世界CRO市場規模は3兆円

成長性高いマーケット


 同社の21年3月期の連結業績は、売上高102億7931万円、営業利益4億5343万円の減収減益だった。コロナ禍の影響を受け、世界的な医療機関への訪問規制などで治験業務の一部が実施できなかったことなどが影響した。

 一方22年3月期の連結業績予想は、売上高115億円(前期比11・9%増)、営業利益は9億600万円(同100%増)の増収増益の見込みだ。コロナの状況は地域間で差異があるものの、米国、欧州では経済活動が改善し順調に推移しており、日本・アジアでも受注案件の消化が進んでいる。

 世界の医薬品開発業務受託機関(CRO)の市場規模は約3兆円であり、成長性の高い市場だ。日本の市場規模は05年の700億円から17年には2000億円へと右肩上がりに成長している。

「製薬企業からCROへの外注率は、米国では約8割、欧州では約6割程度まで高まっていると感じる。一方、日本では2~3割程度と思われ、今後の成長市場であると考えています」(同氏)


日本発のグローバルCRO

世界約60カ国進出へ


 同社は設立当初から「日本発のグローバルCRO」を掲げており、14年に韓国とドイツの企業を買収、18年には米国の会社を買収して本格進出を果たした。米国事業は買収直後は苦戦したが、マネジメント強化を図り、のれん償却費控除後の営業利益は大幅な黒字を達成している。

 これまでに日本・アジア、欧州、米国での拠点を整備し、社員1000人体制、世界20カ国程度への進出を達成。今後はM&Aを含めた成長投資を行い、社員1500人を超える体制構築、世界60カ国程度への進出を目指す。

 特にコロナなど感染症の治療薬開発には、南半球への進出が必須だと秦野社長は話す。感染症が流行しやすい冬場の治験を北半球と南半球で行うことができるので、北半球だけで行う場合に比べて半分の期間で終了できるという。今後、同社は海外売上比率を現状の約5割から8割の水準を目指す。

 2つ目の戦略は、顧客・疾患領域・サービスの拡大だ。現在の顧客は国内大手製薬会社が中心だが、今後は海外大手製薬会社や国内外のバイオベンチャーに広げる。強みのがん、中枢、免疫の3領域に加えて、再生医療、皮膚科、眼科領域に本格進出する。また、プロジェクトマネジメントなどフルサービスの受託業務を提供していく。

「再生医療では脳の再生の研究が進んでいて、実際に治験も行われています。また、iPS細胞を用いて視力を回復させることもできるようになります。当社においても、再生医療に絡んだビジネスをしっかり行って、次の一歩を踏み出したいと考えています」(同氏)


 

今後の成長目標


①日本500人、アジア400人、欧州400人、米国400人

 ⇒1500人を超える体制の構築

②各極で成長投資(M&Aを含む)を行いつつ黒字維持、利益率の向上

③世界60カ国程度への進出


 

2021年3月期 連結業績

売上高

102億7900万円

前期比 6.0%減

営業利益

4億5300万円

同 54.9%減

経常利益

5億8800万円

同 35.9%減

当期純利益

5億3900万円

同 11.8%増


2022年3月期 連結業績予想

売上高

115億円

前期比 11.9%増

営業利益

9億600万円

同 100.0%増

経常利益

9億4100万円

同 60.0%増

※「収益認識に関する会計基準」を適用


※株主手帳5月号発売日時点