top of page

リプロセル【4978・グロース】iPS細胞ビジネスのパイオニア再生医療製品の臨床終え、承認申請へ

 リプロセルは東大・京大発のバイオベンチャーだ。2003年の設立当初からES細胞技術に優位性を持っており、同社の培養液は山中伸弥教授が世界で初めてヒトiPS細胞を樹立した際にも使用された。その後iPS細胞ビジネスに着手した同社では、09年にヒトiPS細胞由来心筋細胞の世界初の上市に成功。続いて神経細胞、肝細胞製品を世界で初めて事業化した。同社は現在、臨床試験を終えた再生医療製品の承認申請に向けて動き始めており、ビジネスモデルの転換点を迎えつつある。


 

横山 周史 社長

Profile◉よこやま・ちかふみ

1968年4月生まれ、大阪府出身。1996年、東京大学大学院工学系研究科応用化学専攻博士課程修了。マッキンゼー・アンド・カンパニー・インク・ジャパンでコンサルティング、住友スリーエム(現:スリーエムジャパン)で事業開発を経験。2004年、当時経営者を探していたリプロセルに入社し、事業開発部長として事業計画や資金調達に着手。05年に代表取締役社長に就任(現任)。


 

23年は上場以来最高売上

今期は利益が黒字転換予想


 同社はiPS細胞を使った「研究支援」「メディカル」の2事業を展開している。

 売上の68%を構成する「研究支援」の顧客は、大学や公的研究機関、製薬会社だ。同社では細胞などの「研究製品販売」、iPS細胞作製受託などの「研究サービス」「細胞測定機器の提供」を行なっている。

「現在、世界中の製薬会社で動物実験からヒト細胞実験へのシフトが進んでおり、当社でもその流れを汲んで事業を進めています。たとえば製薬会社がアルツハイマーの新薬開発を行なう際、マウスではなく患者の血液から作製したiPS細胞で治験をするようになってきました。当社ではそういった場で使用するiPS細胞を作製し提供しています。技術的な優位性がありますので、iPS細胞作製や、iPS細胞からの神経細胞作製、創薬試験受託などを一貫して提供できる点が強みです」(横山周史社長)

 売上の32%を占める「メディカル事業」は、再生医療分野が中心だ。再生医療とは、病気やケガで失われた組織や臓器に対し、人為的に作成した組織や細胞を移植することで欠損した組織や細胞を再生させる治療のこと。同社では「再生医療製品の研究開発」のほか、再生医療製品研究の出発材料となるiPS細胞を製薬会社に提供する「臨床用iPS細胞の製造販売」「再生医療製品の受託製造」「臨床検査受託」を行なっている。

「成長戦略はハイブリッド戦略で、研究支援は短中期型、メディカルは中長期型です。一般的に臨床開発だけでは開発期間中の売上が立ちにくいものですが、当社では研究支援で収益を立て、その利益をメディカルの臨床開発に充てています。また研究支援で培った技術を臨床開発に応用している点も特徴です」(同氏)

 23年3月期は研究支援事業が好調に推移し、売上高が上場以来最高額の29億5300万円(前期比32・2%増)、営業損失は3億5600万円(前期は6億4700万円の損失)で着地した。24年3月期は、売上高30億4800万円(前期比3・2%増)、営業損失1億1000万円、経常利益・当期純利益は黒字転換し、11期ぶりに過去最高益を更新する見通しだ。



iPS細胞ビジネスを牽引

上場後はグローバル展開


 同社は国内で初めてヒトES細胞を樹立した京大の中辻憲夫教授と、再生医療における権威である東大の中内啓光教授の技術シーズを基盤として、03年に設立された。04年には研究試薬の製造販売を開始。06年、京大の山中伸弥教授がヒトiPS細胞を樹立した際は、同社の培養液が使用された。当時、山中教授はマウス実験では成功していたものの、培養条件の異なるヒトでは成果が出なかったという。そこで研究室が隣だった中辻教授のアドバイスにより同社の試薬を使用するようになり、成功に繋がったのである。

 以降、同社ではES細胞技術を応用し、iPS細胞ビジネスに着手。09年にヒトiPS細胞由来心筋細胞、続いて神経細胞、肝細胞、アルツハイマー病モデル細胞を世界で初めて事業化した。13年に上場後はグローバル化を進め、米国・英国企業を買収。そのため同社の海外売上比率は全体の約5割、研究支援事業では72%を占めている。


▲︎山中伸弥教授が世界で初めてヒトiPS細胞を作製した実験で使用


大学との共同研究進め、

スピード感持った実用化へ


 現在、iPS細胞の主戦場は再生医療に移っている。まだ承認には至っていないが、各国の企業が承認を目指しており、20年に2兆円だった世界の再生医療市場は30年には17兆円、50年には53兆円になると予想される。同社においても、数年後にはメディカルの売上が研究支援を上回る見通しだ。

「ロードマップ上の最大のトピックとして、脊椎小脳変性症を対象とした再生医療製品・ステムカイマルの実用化があります。台湾のステミネント社から導入した再生医療製品ですが、22年には国内臨床試験が終わっており、今年度中には承認申請をしたいと考えています。承認は通常、申請から一年以内。承認されれば再生医療製品メーカーになりますので、ビジネスモデルやセグメントは様変わりし、売上も桁が変わってきます。現在臨床試験を行なっている製品が幾つか承認されれば、売上高数百億円になる可能性もあります」(同氏)

 同社のパイプライン※には他に、ALSなどの各種神経疾患を対象としたiPS神経グリア細胞がある。米国のQセラ社との共同研究であり、2~3年以内に臨床試験に入る予定だ。また6月には慶應義塾大学と、子宮頸がんを対象とした腫瘍浸潤リンパ球輪注療法の共同研究契約締結を発表した。

「ステムカイマルは台湾で既に基礎研究・動物実験を終えたものを導入したので、国内では臨床試験からスタートできました。今回契約締結した慶大との研究も、同大学で21年から臨床試験を始めているものです。今後も各大学や研究機関と共同し、パイプラインを増やすことで、スピード感を持って実用化へ繋げたい」(同氏)

※研究開発段階にある医薬品や再生医療等製品の候補品


 

2023年3月期 連結業績

売上高

29億5,300万円

32.2%増

営業利益

-3億5,600万円

赤縮

経常利益

-1億1,900万円

赤縮

当期純利益

-3億500万円

赤縮

※23年1月期首から収益認識に関する会計基準等を適用しているため、売上高の対前年増減率の記載なし



2024年3月期 連結業績予想

売上高

30億4,800万円

3.2%増

営業利益

-1億1,000万円

赤縮

経常利益

1億4,800万円

黒転

当期純利益

1億4,800万円

黒転

※株主手帳23年11月号発売日時点




Comments


bottom of page