• 株主手帳編集部

リンナイ【5947・東1】創業以来の「品質こそ我らが命」にこだわり 次の100年に魅力ある商品開発とグローバル化を推進

 ガス機器で国内トップのシェアを持つリンナイが、2020年9月、創業100周年を迎える。国内に加えてアメリカ、中国、オーストラリア、韓国、インドネシア、ブラジル、イタリアなど世界80か国以上で、エネルギー環境に合った商品、ソリューションを提供している。3か年ずつの5期にわたる中期経営計画でも最終年度となる今年、トップ就任以来の振り返りと今後の展望などについて内藤弘康社長に聞いた。


内藤弘康社長

Profile◉ないとう・ひろやす

1955年4月20日、兵庫県姫路市生まれ。1979年3月東京大学工学部卒業、日産自動車に入社。創業者次男の内藤明人3代目社長の長女との結婚を機に1983年4月 同社入社。98年7月 取締役 開発本部長、2003年

6月常務取締役 経営企画部長兼総務部長などを経て、05年11月 代表取締役社長に就任(現任)。



シェア優先から付加価値経営で『利益回復』


2005年11月にトップに就任した内藤弘康社長は、翌2006年度からの3か年の中期経営計画『Vシフトプラン』を発表。シェア獲得、数字優先で疲弊していた組織を変革。量から質へ、高付加価値の商品開発などへ舵を切り、価格競争からの脱却を実現させた。


─2005年の社長就任から、まず取り組んだのは「利益重視」ですね。

 

 大変ショックだった経験がありまして。量販店でうちのビルトインコンロが売られていたのですが、段ボール箱に入れられ積み重ねられ、箱はビリビリ。それが1万円いかない、9000いくらの「大安売り」で販売されていたのを見かけたのですね。


─ビルトインコンロで?当時でも10万円はするでしょう。

 

 材料費だけでも2万、3万円かかっています。それが1万円弱かと茫然としました。私は経営企画部にいたので、コンロの台数はすごく出ていたけれど、利益的には大赤字だとわかっていました。そこでトップになった時、社員に「安売りは止めよう。まずはやってみよう」と言いました。


─売ってシェアを獲っていた営業マンからの抵抗もあったのではないですか。


 そこは運がよかったといいますか…社長に就任したその冬が、寒波と大雪になったのです。そうなると給湯器の熱交換器がダメになったりして、台数が出ていくのです。また

暖房のファンヒーターも売れました。11月に「安売りはするな!」とみんなに号令をか

け、どうなることかと思っていたら12月からどんどん寒くなり、安売りしなくても売れ

るようになりました。


─そこでもう一つの重点施策「ビジネス変革」も進められた。


 台数優先ではなく「魅力ある商品を開発して、それを大事に売っていこう」ということを徹底させました。というのも、当時は「他社からこんな商品が出たから、早く出せ」と会議をやるたびに量産日程を前倒し、開発部門は疲弊していました。急がせるので不完全なまま商品が出て、品質に問題も起きていていました。それを営業が「開発が悪いんだから、修理に行け」と言うのですね。開発をやっているのか、修理をやっているのかわからないと逼迫した状態になっていました。


─悪循環ですね。

 

 そこで営業に「1年間だけ、我慢してくれ。体制を正常に戻してきちっとやらないダメだから」と言い、安売り競争をおさめさせました。


ボッシュとの業務提携が買収の危機に


2005年、リンナイはドイツの大手自動車部品メーカーのロバート・ボッシュ社と中国で合弁会社を設立。そのころ、リンナイの株式50万株はボッシュ社に譲渡された。ボッシュはその後も株式を買い増し、2008年には出資比率でリンナイの筆頭株主になった。


─提携関係にあったボッシュ社の株の買い増しには、気づかなかったのですか。

 

 もともとイギリスの投資運用会社が当社の株を持っていて、良好な関係でした。株を買い足した時に「売りに出すときはこちらに相談してくれ」といっていたのですが、ボッシュに売ってしまいました。


─ボッシュは、御社の会社内容を知り、欲しくなったということでしょうか。


 ボッシュは非自動車部門を伸ばそうとしていて、その一つがボイラーなんです。だんだん「品質の会議を見たい」電子の会議を見たい」と言って来るようになりまして、細かいことまで聞いて、それに丁寧に答えていたのですけれど、結局、体制が違うと話って全然通じないんですね。


─体制の違いで話がかみ合わないとは?


 例えば、ボッシュは商品が売れたら「後の情報はうちはわからない」というんです。その後に工務店からたくさんの部品を要求されれば「何か問題を起こしている。だからその部品メーカーに文句を言う」というのです。それは部品が悪いのではなく、設計自体が悪いのかもしれないのに。我々はサービス代行店に「交換した部品がどういう状態か、故障なのか」などをデータ化して調べますが、ヨーロッパのメーカーはそういうしくみを持たないようです。「何でそんなことができるのか?」「サービス代行店とは何か」とすべてがこんな感じでした。


─ボッシュは、最後は諦めたのですか。


 もともとうちの商品の品質などについて世界で評判を聞いていたようなのですね。それで一緒にやるようになったら、お互いに本音を言うようになって次第に喧嘩のようになっていって。先方もいろいろと考えられたと思いますが、ちょうど円高に振れた時期に株を売却し、提携関係も解消して終わりました。



徹底したムダ取りで、ゼロディフェクトに注力


就任直後から始めた利益重視の経営で、営業利益は2006年度の127億円から、2009年度には203億円とほぼ倍増。付加価値の取れる商品開発体制が整い、その後の中期経営計画『改革と躍進』では「徹底したムダ取り活動の推進」「総合熱エネルギーメーカーへの体制固め」など、現在の経営の根幹に関わる施策が打ち出された。


─ 就任から3年で、収益に強い体制が整ってきました。


 次に着手したのは「徹底したムダ取り」ですね。

 利益が取れるようになったので、“ゼロディフェクト(不良品ゼロ)”に力を入れました。開発に無理させていた時には、販売してから1年以内の不具合や故障による無償修理が、多い時には売り上げの5〜6%を占め、金額で20億〜30億円くらいのコストになっていましたから。


─“ゼロディフェクト”はものづくりの根幹です。

 

 それまで営業は、売り上げさえ上げていればいいと思って売っていました。しかしその商品は売れば売る程、赤字になる、ということがあるのですね。そんなものは売らない方がいいんです。


─そういうムダにメスを入れていった。

 

 開発では、最初の計画から、生産技術や製造などの人間を入れるようにしました。商品は一度開発が図面を描いて出してしまうと、ムダだと思っても後から変更が効かない。だから設計から参加して「ここの部分はこういう機械を使って流せる」などの話ができれば、効率的な生産、製造ができます。



エリア拡大とブランドへの信頼で海外比率が増加


1970年代の早い時期から、同社はアジアや米国、オーストラリアなどで市場開拓を進め、グローバル化を果たしてきた。現在の海外売上高比率は約5割だが、世界的にも高い技術水準を有している商品であるという自負のもと、今後は売上比率6割、7割。持続的な成長のドライバーとなると見込んでいる。


─海外比率は、2011年度の約3割から5割まで拡大しました。世界に受け入れられる原因は何でしょう。


 当社の商品は品質がいいと、評判みたいです。例えば、昨年の11月11日、中国の独身の日に給湯器の売り上げはうちが一番、台数では5番目になりました。一台当たり、高く売れたということです。


─中国で、給湯器が評価されているのですね。


 中国の方に故障が非常に少ない、加えて温度コントロールの性能がとても良いといわれます。中国メーカーさんも給湯器を出されていますが、使っていると突然冷たくなったりする。

 温度コントロールは、フィードバックとフィードフォワード[編集部注:給湯器の出湯温度制御方法。従来型のフィードバック制御に加え、給水側に温度センサーと流量センサーを設けてマイコン管理するフィードフォワード制御を組み合わせることで、給湯温度の安定化が図れる]や、水量制御装置を組み合わせたりとか、細かいことの積み上げで、一足飛びにはいかないのです。われわれは、それを日本のメーカー同士で改良を続けてきました。


─前期の海外売上高は中国が460億円、韓国が329億円、アメリカが303億円。伸びているのは、やはり中国でしょうか。


 われわれが出て行ける地域は、基本的にガスの配管が通っているところなのですが、韓国は今、ちょっと難しい。となると中国とアメリカですが、中国はパートナーさんと半々の配分になりますので、利益はそれなりになります。


─アメリカの給湯器は、まだまだタンク式が主流ですね。


 瞬間式は給湯器全体の1割くらいです。当社でもタンクと瞬間式の組み合わせを少しやっていますが、やはり瞬間式の湯切れしない良さをアピールしています。アメリカは、自宅の1階を自分たちが住み、2階を人に貸したりしている家が結構あるのですが、朝などは早い者勝ちで大変みたいです。瞬間式の伸びしろはあると思っています。


─アメリカの売り上げは伸びていますが、利益が前期で3割減っています。


 今は、過渡期なんです。あちらにはアッセンブリ(組立)の工場はあるのですが、日本から運搬のため梱包し、現地についたらそれを荷解きし運んだりコストがかかっています。今、7万坪の土地を買って建屋を立てていてそれが完成したら、解消され、生産能力もアップします。



「熱と暮らし」「健康と暮らし」で魅力ある新商品開発


 創業100周年となる2020年度は、就任から5期目となる中期経営計画『G─shift 2020』の最終年度でもある。「熱と暮らし」「健康と暮らし」をキーワードに、これまで培ってきた、独自の技術を活かした新たな商品・サービスの開発と提供で、次の100年に向けて、持続可能な成長を目指していくという。


─ 御社は給湯器、コンロ、暖房などでさまざま商品を開発し普及させてきました。次の柱と考えている商品は?


 最近売れているのは、30年前からずっと造り続けているのですが、衣類乾燥機の「乾太くん」です。国内海外問わず、使われた方がみな素晴らしいといわれる。一方で「なぜリンナイは宣伝しないのか?」と、まだまだご存知の方が少ない。最近も大きな金額をかけて、広告を出したのですが、まだ足りないようです。しっかり宣伝していきます。


─御社独自の商品ですか。


 うちだけなんです。やろうとすると金型費もかかりますし、生産設備も15億円くらいかかるので。今、年間7万台くらい売れているのですけど、給湯器は100万〜200万台出ているし、電気の乾燥は60万台。「桁が1つ足りない」と思っています。


─100年を迎え、新分野への参入など考えていますか。


 昨年「健康と暮らし」というキーワードを打ち出し、今までのガスや熱から、健康や美容まで発想の幅が広がりました。4月には「マイクロバブルバスユニット」を発売しました。微細な泡が皮膚の汚れをやさしく落とし、ポカポカ感が長く持続します。新春の方針説明会で出したら「第一号は俺のところに入れろ!」という社長さんもおられて、反響が大きかったです。今までは利益に比重をかけて来たのですが、これからは利益が少なくても新しい分野に積極的に入っていかないと頭打ちになってしまう。新しい組織を立ち上げ、競わせなが

ら今までと全く違うことをやれと言っています。



ビルトインコンロの

フラッグシップ『デリシア』


 2007年、27〜28万円という高価格で発売されたのが「デリシア」だ。当時コンロは機能や価格で選ばれ、同社のビルトインコンロも利益が出にくい状態だった。「“あ、いいな”と見た時に心躍るような商品にする努力が欠けていました」(内藤社長)。

 デリシアはビルトインコンロで初めて、両端のエンドピースという部材を取り去った。当初は「納まりをよくするために必要」な部材だと皆思っていた。しかしそれは「高いコンロが売れると思っていないから、コストをかけてデザイン性を上げる

という、発想自体がなかった」(同氏)だけだったという。

 その後も、グリル用ダッチオーブン『ザ・ココット』を付属させるなど、リニューアルを繰り返し、デリシアは30万円を超える価格ながら、現在、同社のビルトインコンロ全体の15%を占めるフラッグシップとなっている。

◀ビットインコンロで初めてエンドピースを取り去った









“電気とガスの良いところ取り”

『エコワン(ECO ONE)』

 

 電気とガスを組み合わせた高効率給湯器の構想は前からあったが、とくに東日本大震災までは“オール電化”攻勢による電気とガスの厳しい需要争奪戦が起き、“受け入れられない商品”という認識だった。そんな中「北海道で、電気のエコキュートとガス機器の両方を扱う会社がいることを知り、これはいけるのではないかと思いました」(内藤社長)。

 2010年、同社は世界初の電気とガスのハイブリッド給湯・暖房システム「エコワン(ECO ONE)」を発売。業界最高の給湯一次エネルギー効率商品の開発で「ZEH対応など、ハウスメーカーさんにいろいろな提案が可能になりました」(同氏)。ガス機器のトップメーカーから『総合熱エネルギー機器メーカー』へ進化する象徴的な商品となった。


◀ヒートポンプとエコジョーズの組み合わせ

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