• 株主手帳編集部

住友ゴム工業【5110・東1】 タイヤとスポーツで真の世界企業に2020年に1兆円越え目指す

世界的なブランドであるダンロップの商標を持つ住友ゴム工業が成長を加速させる。同社が発表している新中期経営計画では、2020年には売上収益が2018年度から11%増の1兆円、事業利益を64%増の1000億円を見込んでいる。その成長要因として山本悟社長は「真のグローバルプレイヤーになること」と力説する。



山本 悟社長

Profile●やまもと・さとる

1958年6月14日、埼玉県生まれ。上智大学卒業後の82年4月、住友ゴム工業に入社。2001年タイヤ営業本部販売部長、07年1月ダンロップファルケン九州(現ダンロップタイヤ九州)代表取締役社長。10年住友ゴム工業のダンロップタイヤ営業本部副本部長、同社 執行役員、ップタイヤ営業本部長を経て、13年常務執行役員 、15年取締役常務執行役員。16年アジア・大洋州本部長、2019年3月、代表取締役社長に就任(現任)。




タイヤ事業の欧州展開でグローバルプレイヤーへ

 

空気入りタイヤを発明した英国ダンロップの極東工場として創業した同社は、日本とアジアにおけるダンロップタイヤのメーカーとして広く知られている。現在は主力のタイヤ事業に加え、ゴルフやテニス用品を扱うスポーツ事業、OA機器用精密ゴムや手袋等を手掛ける産業品事業の3事業を展開。2022年に向けた新中期計画では、「新市場への挑戦」「飽くなき技術革新」「新分野の創出」の3つの成長エンジンを掲げる。


─御社は現在、タイヤ、スポーツ、産業分野と3つのセグメントがありますが、具体

的な事業構成は。

 

 2018年度は全体の売上収益で8942億円でした。このうちタイヤ事業が86%の7680億円。スポーツ事業が9%の845億円、産業分野が5%の418億円ですね。


─今後、このセグメント割合は変化しますか。

 

 タイヤは世界的に見て概ね2~3%成長する市場ですので、今後もタイヤが基盤となる構造は変わらないと思います。


─グローバル化が加速していますね。


 2001年時点では25%だった海外売上収益比率は、2015年には59%、前期は63%と年々伸ばしています。2018年2月発表の新中期計画では、2022年には70%以上に伸ばす計画です。

 タイヤでは現在、ダンロップとファルケンの2ブランド制で展開しています。これまでは、国内及びアジア先行で展開してきました。1999年にはグッドイヤーとアライアンスを結び、ダンロップブランドの欧米はグッドイヤー主導、日本は住友ゴム主導、という形でエリアごとに販売権の棲み分けを行いました。アジアはそのアライアンスに入っていなかったため、その頃に私どもはアジア圏で工場を立ち上げながら伸ばしていきました。


─2015年にグッドイヤーとの提携を解消し、以後欧米事業に本格進出しました。


 アライアンス中は、グッドイヤーがマジョリティを持っていた欧米には積極的に出ていけませんでした。提携解消後も欧米ダンロップはグッドイヤーが主導になるため、我々はダンロップブランドを使えません。しかし、「ファルケン」という別ブランドを同地域で展開しています。


─それが先に言われた2ブランドによる展開ですね。現在の年商に占めるエリア割合は。


先行投資していたアジアがやはり一番多くて20%ですが、ファルケンブランドの展開により、北米17%、欧米も15%を占めるまでになりました。今後は南米を含む米州と欧州・アフリカの2つのエリアで拡大を見込んでいます。


─ワールドワイドでのグローバル化が本格的に進んできましたね

 

グッドイヤーとのアライアンス中は契約の関係上、現地で開発拠点や製造拠点を持つことが出来ませんでした。しかし解消後、両エリアで整備を進めることができるようになったわけです。新車メーカー納入やリプレイスメントタイヤも含め、我々もファルケンブランドで自由度を持って欧米事業を展開できる体制を手に入れた、ということですね。

 この4~5年で生産・販売拠点の新設を進めてきましたので、グローバル体制への基盤は整ってきたと思います。


─現在は欧米での拠点づくりに注力していると。


 2017年1月からアメリカテクニカルセンター、2017年8月から欧州テクニカルセンターを本格稼働させています。

 狙いは現地のニーズに対して、素早く製品化と供給を進めていくことです。これまでは日本にしか開発拠点がなく、現地でニーズをうかがっても、一度は日本で研究して現地で検査、また日本に戻って開発という方法しかできませんでした。そうすると、どうしてもリードタイムが長くなってしまいます。

 これからは本社とも連携しますが、現地で評価、研究、設計を行い、スピード感を持って商品を仕上げていきます。

そういう意味でテクニカルセンターを現地に持つのは大きく意義のあることです。競争力は着実に上がっています。


2013年から乗用車・トラック用タイヤを生産しているブラジル工場














ファルケン、世界への供給を加速


自動車業界は100年に1度の変革期を迎えていると言われる。電気自動車や自動運転といった新技術が求められる中、同社はタイヤメーカーとして新たな高性能・高付加価値製品を次々と生み出している。成長エンジンの「飽くなき技術革新」

「新分野の創出」によるものだ。


─安全と環境の2つのテクノロジーで構成する「SMART TYRE CONCE

PT」という名称を掲げています。


 これを代表する技術の1つが「センシングコア」です。これはタイヤの回転によって

発生する車輪速の信号を解析して、タイヤの滑りやすさなどの様々な情報を収集すると

いうものです。

 車輪に内蔵したチップが路面やタイヤのグリップ、荷重の状態から得られる信号を感

知して、ドライバーが様々な情報を得られるようになります。タイヤの劣化はもちろん、

その日のその場所の路面状況までわかりますから、これをビッグデータと共有すれば、

他のドライバーにも情報提供ができるようになるのです。

 他にも濡れた路面や凍結路面にもタイヤが柔軟に接地するアクティブトレッドやパンクのしないエアレスタイヤなど、様々な技術の開発に力を入れています。




─海外大手自動車メーカーへのタイヤ納入実績も伸ばしています。

 

メルセデスやアウディなどで、私どもファルケンブランドの採用が進んできました。

ファルケンブランドを世界に広めるにあたっては、現地の販売会社を作りながら、現地の市場を把握しながら生産する体制を作ってきました。ブラジルやトルコは新規に作りましたが、アフリカ工場は買収しました。もともと他社の工場でしたので、自分たちのやり方や設備を導入し、現在は利益を生む基盤作りに注力しています。そのため、固定費、経費を新拠点にかけています。この数年間、事業利益が減少傾向にあるのはそのためで、将来のためにコストをかけているのです。例えばトルコの生産工場は2015

年時点では1日4000本の生産力でしたが、2020年には1日3万本にまで拡大す

る計画です。


─欧州では高性能かつ高付加価値のタイヤが人気だそうですね。

 

ドイツでは、ある雑誌のタイヤ評価で高インチ低扁平の「アゼニスFK510」がベ

スト3に入りました。そこでトップの評価を受けると誰もがそのタイヤを買う、という

くらい影響力のある雑誌で、以降販売が拡大しています。


―北米ではどのようなタイヤが人気ですか。

 

SUV車向けタイヤが人気ですね。「ワイルドピーク」というシリーズが順調です。

これはオフロード向けの高インチタイヤで、「フィアット・クライスラー」ブランドのRAMというピックアップトラックやジープ・ラングラーのルビコンという車種などに装着されています。


スポーツでダンロップを世界に


2017年4月、住友ゴムはスポーツダイレクト社からスポーツ・産業品事業におけるダンロップブランドをグローバルに使用できる権利(商標権)を買収完了した。これにより、スポーツ・産業品事業では、全世界でダンロップブランドの商品展開が可能となった。


─タイヤでは販売エリアに制限がありますが、スポーツブランドとしてはダンロップを世界展開しています。

 

2017年4月にスポーツにおけるダンロップのライセンスを買収し、私どもの独占になりました。これまでは日本・韓国・台湾の3ヵ国のみでしたが、以降は世界で私どものダンロップ商品を販売できています。

 今年1月、日本人の大坂なおみ選手が優勝したテニス全豪オープンでは、日本製としては初の4大大会サプライヤーとして公式ボールを採用されました。ここにいたるまではオーストラリアにおけるテニスのレジェンド、ロッド・レーバー氏にアンバサダーを担ってもらい、様々な助言をいただいてボールの開発に力を入れていました。以降、テニスボールが非

常に売れています。


─テニスを通してダンロップをグローバルにPRしていくわけですね。


 スポーツとしてダンロップブランドを世界に広めることは、タイヤにもシナジーがあると

考えています。私どもは、中国人テニスプレーヤーのワン・チャン選手や南アフリカのケビ

ン・アンダーソン選手のサポートを行っております。それもあり、全豪オープンには中国

の経営者の皆さんを招待しました。中国ではタイヤもスポーツもトータルでダンロップブラ

ンドが展開できますので、スポーツでPRすることは非常に意義があることです。


─スポーツでダンロップをPRすることは、ダンロップのタイヤ事業にも効果があるのでしょうか。

 

全世界のダンロップ商標権は私どもが持っています。これは交渉になりますが、いずれ他のエリアにおけるダンロップの販売権も得たいと考えています。長い目で見れば、ダンロップのブランド価値を高め続けるということで、私どもがトップ商品を多く持つスポーツ事業に力を入れることに意味はありますよ。


─世界のタイヤ市場ではブリヂストンとミシュランが2大大手で、御社は現在5位となりますが、将来的な見通しは。

 

これまでグローバルに生産拠点・販売拠点を整備してきたので、まずはこの基盤を強化していきたいです。一気に工場を増やしたため最初は日本から駐在員を派遣していますが、今後ナショナルメンバーの力が立ち上がってゆけば、環境の変化にも揺るがない強い基盤を作れると思います。

 また、私どもは各工場に自動車メーカーからの要請が大きいSUV向けタイヤや高インチタイヤ等向けの設備投資を行っています。さらに、これから電気自動車やシェアカー、自動運転車などが出てくると、それに対応できるタイヤの開発も非常に重要となります。そのような最先端分野に焦点を当てて技術力を磨き、そこで勝っていける体制を整えてゆきたいと思います。

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