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協和キリン【4151】グローバル医薬品3品を世界市場に投入し成長フェーズに

協和キリン(4151)は、キリンホールディングスグループの医療用医薬品の製造、販売会社

だ。「腎」「がん」「免疫・アレルギー」「中枢神経」のカテゴリーで、最先端バイオテクノロジー技術による新薬を開発している。近年は、欧米市場で新薬の承認と、M&Aなどによる販売体制を整備。グローバル化が加速している。




Profile●みやもと・まさし

1959年生まれ、85年3月東京大学大学院薬学系研究科修士課程修了。薬学博士。同4月麒麟麦酒(現キリンホールディングス)入社。2011年同社信頼性保証本部薬事部長に就任。12年執行役員、17年常務執行役員を経て18年3月代表取締役社長に就任(現任)。







GSPを事業ビジョンに設立


協和発酵キリンは、2008年、キリンの医薬事業部門のキリンファーマと協和発酵が統合して設立。『日本発のGSP(グローバル・スペシャリティファーマ)』を事業ビジョンに、日本古来の“発酵技術”から進化した最先端のバイオ医薬品の研究開発、製造、販売までを一貫して行っている。

「日本の医薬品市場は、人口減少に加えて制度的にも成長が厳しい状況です。しかし世界では、病気がなくならない限り、またイノベーション(創薬力)があれば、まだまだ伸びていく市場です。当社は、腎、がん、免疫・アレルギー、中枢神経という強みのある疾患カテゴリーの創薬で、グローバル展開を目指しています」(宮本昌志社長)

 同社のターゲットは、羅患率の高い高血圧や糖尿病などではなく、患者数が少ない稀少疾患を対象とした“オーファン・ドラッグ(孤児薬)”といわれる分野だ。マーケットは限られる一方、治療薬も少ないため、世界中の患者からの需要がある。

「患者様があまりいらっしゃらないが故に、製薬会社もなかなか顧みてなかった病気に新しいお薬を提供することで、世界の患者様を助けることができる…。それは私たちの喜びでもあり、また当社の価値も上げることができると考えています」(同氏)


グローバル戦略3品、欧米で承認


昨年、同社が、GSP となるべく開発した“グローバル戦略3品”と位置付ける新薬が、欧米で相次いで承認された。

 抗悪性腫瘍剤『モガムリズマブ』は、再発または難治性の皮膚T細胞性リンパ腫の治療薬で、日本では商品名『ポテリジオ』として2012年から発売されている。2018年、8月にアメリカ、11月にはEC(欧州委員会)で承認されて、10月からアメリカで発売が始まっている。

 またX染色体遺伝性低リン血症(XLH)治療薬『Crysvita(一般名:ブロスマブ)』も2018年2月にEC、4月にアメリカで承認された。同疾患はリンが尿中に大量に排せつされることで骨の成長に影響を及ぼし、くる病などの症状が現れる難病だが、これまで効果的な治療法がなかった。同薬は、アメリカやドイツなどで昨年、販売が開始されたが売上は好調で、世界で年間1000億円を売り上げるような『ブロックバスター(大型新薬)』への成長も期待されている。

 また日本では2013年から商品名『ノウリアスト』として発売されているパーキンソン病治療剤『イストラデフィリン』も、今年3月にアメリカで承認申請をしている。

「モガムリズマブもCrysvitaも、FDA(アメリカ食品医薬品局)から“ブレークスルーセラピー(画期的新薬)”の指定を受けています。当社の規模で、そうしたお墨付きを2製品ともにいただくというのはなかなかありません。これに『イストラデフィリン』も含めた3薬を『グローバル戦略3品』として、今後の成長エンジンと考えています」(同氏)

 

One Kyowa Kirinへの組織改編


グローバル伸長が可能な薬を手にした同社は、医薬品の世界市場で4割のシェアを占めるアメリカをはじめ、EU、アジアなどの海外展開を本格化させるための体制整備に取り組んでいる。

「今までは、まず日本に協和発酵キリンがあり、アジアでは中国、韓国、シンガポール、台湾、タイにある子会社が、ヨーロッパは買収した子会社が販売する。さらに一番大きいアメリカ市場は、ヨーロッパの子会社が買収した会社が…当社から見ると孫会社が販売する、それはちょっと変かも知れないという話になりました」(同氏)。

 この4月から、新たなグローバルマネジメントを構築。日本、EMEA(ヨーロッパ・中東・アフリカ)、北米・アジア、オセアニア地域を4 リージョン(領域)とし、研究発、品質、サプライチェーンマネジメント、PV(医薬品安全性管理業務)などの各ファンクション(機能)を軸に展開するマトリックス体制となった。「エリアや会社を超えて、それぞれのファンクションのトップに情報が集約される『One Kyowa Kirin』となる、グローバルな組織になりました」(同氏)

 この組織改革を前に、同社は今年3月、45歳以上社員を対象に希望退職の募集を実施した。医薬品に関わる社員約5300人のうち国内には約3900人いるが、6月30日付で募集に応じた296人が割増金を加算した退職金を支給され退職する。

「今回のグローバル化で、例えば『明日、英語の会議に出てくれ』ということもあるかもしれません。『そんなつもりでこの会社に入ったのではない』という社員がいるのであれば、これまでの経験を活かせる転身をされた方がいいと考えました」(同氏)

 また7月1日付で、『協和キリン』へ社名を変更した。2016年から欧米のグループ会社では『Kyowa Kirin』を社名として使っており、今回、ブランド統一を図るため決断したという。

「これから伸びていく、ピカピカの新薬をもって世界に出ていく環境が整いました。社員には『10年前、2つの会社が1つに統合した変化よりも、はるかにドラスティックな変革が起きようとしている。覚悟して(笑)』と言っています」(同氏)

 

医薬事業・販売への集中


 同社の2018年12月期の業績(国際会計基準)は、連結売上収益は前期比1・9%

減の3465億3100万円、コア営業利益※は同1・7%増の586億9400万円、税引前利益は同31・5%増の734億3800万円。国内では、薬価基準引下げや後発医薬品との競合などで減収減益となったが、海外は新薬の投入で伸長した。海外売上高比率は現在35%程度だが、早い時期に50%まで引き上げることを目標に掲げている。

 今年2月には、バイオケミカル事業を担う連結子会社の協和発酵バイオをキリンホールディングスに譲渡した。設立以来のバイオケミカル事業を手放し、今後は医薬事業に集中にする。「食と医の間には、“ 未病”や“健康増進”などの領域があります。キリングループ全体で考えたら、バイオケミカルは直接キリン本体で健康領域を引っ張っていく事業として進めた方がいいという結論に至りました。もちろん、当社の収益として大きなかたまりが抜けることになりますが、それは医薬の方をしっかり伸ばせば、十分カバーできると考えています」(同氏)