• 株主手帳編集部

天昇電気工業【6776・東2】プラスチック製品のパイオニア自社製品拡充で戦略的分散進める

 天昇電気工業(6776)は自動車や家電、精密機械など幅広い分野にプラスチック

製品を供給するメーカーである。近年は自動車向け製品の堅調が続き、前期(2020

年3月期)は6期連続で増収。営業利益は、利益率の高い自社製品が寄与して前期比

10

%増となった。今後は、自社製品の更なる拡充を推進。医療や土木、物流など、業界の

垣根を越えた製品づくりで「戦略的分散」を進める。



石川忠彦社長

プロフィール◎いしかわ・ただひこ

1956年東京都生まれ。79年成蹊大学経済

学部卒業後、三井物産入社。2013年天昇

電気工業取締役副社長就任。同年、代表取締役社長、兼海外本部長に就任(現任)








 自動車のエンジンカバー、液晶テレビの外装、パソコンの精密部品など、高度な技術が必要なプラスチック製品を作るのは、創業80年以上の歴史を持つ天昇電気工業だ。

 プラスチック製品メーカーにも関わらず社名に「電気」と入るのは、高度経済成長期にプラスチックを使用した電気製品を作っていたため。家電の隆盛時代にはラジカセや留守番電話、トランシーバーなどを製造していた。1961年には東証2部に上場。2000年代に液晶テレビが流行すると、大手メーカーの主要OEMとして同製品を製造していた。

 しかし、リーマンショック前後に液晶テレビ業界が低迷すると、つられて業績が悪化。2013年に石川忠彦氏が社長に就任すると、打開策として自動車分野へ本格参入した。これが功を奏し、一時は123億円(単体)まで落ちた売上高は6期連続増収と回復。配当は2016年3月期まで9年間無配が続いていたが、2017年3月期からは年間3円と復配している。


技術と実績武器に自動車参入


 前期業績は、売上高は前期比4%増の184億円、営業利益は同10%増の10億円。分野別に売上高を分けると、自動車関連が60%、自社製品が25%、家電・OA関連が15%となった。

 主力の自動車関連分野では、フロントグリルやピラー、センターコンソールなどプラスチックにまつわるあらゆる製品を手掛ける。同社が自動車産業に本腰を入れたのは2010年代。現在は「日系自動車メーカー8社全てと取引する独立系企業」として、独自のポジションを確立している。

 系列取引が多く、新規参入が難しい自動車産業でなぜ成長できたのか。その一因に、同社がこれまで培ってきた歴史が挙げられる。

 同社は1936年、プラスチック成形のパイオニアとして創業。バブル時代に多くの家電メーカーが海外に主要工場を移管する中、同社は国内に5工場を保有。各家電メーカーに対し、最先端の高品質製品を供給し続けていた。

「人の命を預かる自動車業界では、部品メーカーは品質・価格・納期だけでなく信用力も求められます。当社は創業してから80年以上、上場してから60年近い歴史があります。また、家電分野では長年最先端の製品を作っていた実績もある。この点が自動車メーカーにとって魅力的だったようです」(石川忠彦社長)


全日系自動車メーカーと取引


 もうひとつの強みは、生産設備だ。同社は国内5工場に加え、ポーランド、中国、メキシコに生産拠点を保有。グループ全体で150台を超える射出成型機を持ち、50~3500tの幅広い製品に対応する。特に同社が得意とするのは、450tを超える大型製品。石川社長によると、同様の製品を作る競合他社は国内にほぼいないという。

 近年は、設備の更新に注力。福島県の矢吹工場では、2020年7月に同社最大規模の新棟が完成する予定だ。

 近年は自動車産業の不振が気になるところだが、同社の同分野は堅調を維持。これは、独立系という立場を活かし全日系自動車メーカーと取引することが寄与している。

「自動車メーカーにもそれぞれ好調・不調の時期があります。すべての会社とお付き合いすることが、結果的にリスクヘッジとなっています。系列会社が多い同産業で、当社のように多くの企業と取引する会社は珍しいと思います」(同氏)


▲︎大型の射出成型の様子

▲新棟が完成予定の矢吹工場



















産業にとらわれず自社製品開発


 利益面で同社をみると、最も利益率が高いのは自社製品事業。同社は近年、独自開発したオリジナル製品を立て続けに発売している。特徴は、電気、医療や電気、宅配、土木など、様々な産業に向けてプラスチック商品を提供する点だ。

 例えば、医療機関での感染性医療廃棄物などを入れる専門容器「ミッペール」は、液漏れに対応した設計と注射器などを貫通させない強度が特徴。新型コロナウイルス蔓延後は、需要が急増している。

 電子分野では、業界トップシェアの導電性プリント基板収納ラック「テンサートラック」を開発。また宅配分野では、大手企業と共同でプラスチック製宅配ボックスを共同開発している。

 様々な業界に向けて同社が製品開発を進める理由が、「戦略的分散」だ。「かつての液晶テレビ不振では、『選択と集中』で一つの分野に特化することのリスクを学びました。これからは、利益率の高い自社製品を中心に事業を分散させます」(同氏)

 今後は、自社製品の拡充に注力。独自の技術力と開発力を武器に、同事業を新たな主軸へと成長させる。

「例えば自社製品の雨水貯留浸透施設『テンレイン・スクラム』は、従来は石やコンクリートで作られていたものをプラスチックに置き換えた製品。これにより、従来よりも短期間の施工期間で洪水や冠水を防ぐことができます。軽く、応用力のあるプラスチック製品はあらゆる産業に使える素材。当社の持つパイオニア精神を思い出し、原点回帰で世界に貢献できる製品を作り続けたい」(同氏)



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