• 株主手帳編集部

建設技術研究所【9621・東1】橋梁、ダムなどの建設コンサル業で売上高584億円診断から維持管理まで担う、“インフラのお医者さん”

橋梁、ダムなどの河川関連施設など、インフラの診断、設計、施工管理を手掛ける事業で584億円を売り上げるのが建設技術研究所(9621)だ。これらの事業は「建設コンサルタント業」と呼ばれ、国の登録を受けているのは約4000社。同社は売上高でトップ3に入る大手。中村哲己社長は「技術提案力には自信がある」と語り、強みを生かして拡大を図っていく考えだ。




中村哲己社長

Profile●なかむら・てつみ

1957年3月4日、長崎県生まれ、1979年九州大学工学部水工土木学科を卒業後、建設技術研究所に入社。2013年取締役、16年取締役兼常務執行役員、18年同兼専務執行役員などを経て、19年3月、代表取締役社長に就任(現任)



 




 建設コンサルタント業は橋やダムなどを作る際に、事前調査、設計、施工管理、維持

管理を一手に引き受ける業務だ。工事である「施工」以外を担当。施工しない理由は、

建設コンサルタントが第三者の立場で、工事の品質をチェックするためだ。社会インフ

ラが安全なものに作られているかどうかを見極める仕事となる。完成後は維持管理も担当。

最近は特に、このメンテナンスやリニューアル需要が増えている。「建設コンサルは“インフラのお医者さん”というとわかりやすいかもしれません」(中村哲己社長)


 発注主は国・自治体。同社の場合、国土交通省などから発注される案件が全体の約9割を占める。行政に対しても中立の立場で、調査・設計、施工時のマネジメントを行う。

 国内で一年に手掛ける案件は2000~3000件。100万円程度の小規模の案件から数億の案件まであり、受注高は456億円。平均すると一件あたり2000万円ほどになる。「国土交通省による発注業務では、複数の企業の企画・提案から一社が選ばれるプロポーザル方式の特定件数が年356件、83億円(2017年度)と業界1位です。社員約1600人のうち、技術者は1100人で、各分野に精通した人材がいますから、技術提案力には自信があります」(同氏)


行田市でインフラ点検の新モデル

「今は国内で力を付けるとき」


近年、建設業界で大きな問題となっているのが、高度成長期に作られたインフラの老朽化だ。2012年に起こった笹子トンネルの事故を契機に、国では全国のインフラの点検を急ピッチで進めている。産官学で運営する土木学会では「社会インフラ健康診断」と題し、道路、橋梁、トンネルなどの設備の点検・評価を行っており、同社も点検作業に参加している。

 こうした流れをうけ、同社は昨年から埼玉県・行田市で新たな試みを始めた。「行田市内の橋梁702橋のうち、限られた財源の中でどの橋をどのように治すべきかを当社が調査・提案し、地元の工事業者が補修を行うというものです。老朽化したインフラをかかえる地方自治体は多いので、効率的に点検できるビジネスモデルを確立できたらと考えています」(同氏)

 同社は1945年に設立し、水力発電の事業から発展した経緯で、河川、砂防、港湾など水に関わるインフラ設備の案件を多く手掛けてきた。最近は環境や地下資源、道路や街の再開発など都市建築などの引き合いも増えている。「もともと強い水の分野をさらに伸ばし、ビルディング分野など建築系、都市再開発など、新分野を伸ばし、国内で力をつけたい。2021年には国内事業500億円、海外事業200億円を目指しています」(同氏)



不動大橋(群馬県吾妻郡長野原町) 2011年竣工 発注者:国土交通省 関東地方整備局 八ッ場ダム工事事務所 


英企業の子会社化でシナジー結集

土木、コンサル業の啓発に意欲


 同社は2017年に構造設計・設備設計をはじめ、ビルディング関連事業に強みを持つイギリスの総合コンサルティング会社、Waterman Group Plcを連結子会社化。イギリス、アイルランド、オーストラリアでの拠点が加わり、海外比率はかつて全体の1割程度だったが、2018年は3割に、売上高176億円に伸びた。本社部門やJICA事業など開発途上国への技術協力を行うグループ企業「建設技研インターナショナル」などと、技術や人材の連携・補完を進めている。「グループ企業全体のシナジーを結集しています」(同氏)

 災害の多発、環境問題など、今日、建設コンサルタントの役割は増す一方だが、土木業界に対する認知度はまだまだ低いと語る中村社長。会社を挙げて、土木業界のラジオ番組、中学・高校への出前講座、日本橋で建設物を巡る舟のツアーなど様々な取り組みを行い、コンサル業の重要性を啓蒙している。


ニケ領上河原堰(東京都調布市・神奈川県川崎市 多摩川) 2012年竣工 発注者:国土交通省 関東地方整備局 京浜河川事務所

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