• 株主手帳編集部

日本工営【1954・東1】建設コンサルタントのトップランナー国内・海外連携強め真のグローバル企業へ

 日本工営は、インフラ等の企画、調査、維持管理等を手掛ける建設コンサルタント業界のトップランナー企業だ。戦後まもなくからアジアを中心にインフラ整備を行ってきた同社は、長年コンサルタント事業と電力エンジニアリング事業の両輪で展開。近年は、新たに都市空間事業とエネルギー事業にも進出した。需要が安定している国内市場を味方につけると同時に、強みの海外でも弾みをつけ、2年後に売上高1400億円を目指す。


有元龍一社長

Profile●ありもと・りゅういち

1952年11月27日生まれ、77年法政大学法学部卒業後、

日本工営に入社。2009年取締役執行役員。12年取締役

常務執行役員、経営管理本部長兼人事部長を経て、14年代表取締役社長に就任(現任)。






戦後復興から国土強靭化まで時代の変遷支えるトップ企業


同社は終戦直後の1946年に、日本再建を目指し設立。1950年代に入ると、海外の戦時被災国の復興事業にも参画した。活動地域をアジア、アフリカ、欧米と広げた同社グループは、これまで160以上の国と地域で事業を展開。建設コンサルタント業界では、唯一の売上高1000億円超企業としてマーケットの牽引役を担っている。


─設立初期、御社は荒廃した国内基盤の復興と同時に、新興国等の発展にも尽力されました。これが、日本の開発援助の発端でもある戦後賠償に繋がります。


有元龍一社長(以下、有元)

 当時のビルマのバルーチャンという大きな発電所、これがスタートです。ビルマ政府が電力事業に非常に高い関心を持っていたところに、当社の創業者である久保田豊が「実は今こういうアイデアがあるけどどうだ?」と。当時、久保田はパリにいましたが、そこからビルマ政府にレポートを送ったようです。すると、それを読んだビルマの高官が久保田に「これは非常に良い案だ、すぐ来てくれ」と。それが日本の戦後賠償第1号となります。その後、ラオス、ベトナム、インドネシア、韓国等でも戦後賠償を行いました。これが現在のODAへと繋がっていきます。


─当初から国境なく社会基盤の構築に貢献されてきました。現在の組織文化も、創業者の薫陶を受けていると。


有元 それをあえて言葉にすると、経営理念にあります『誠意をもってことにあたり、技術を軸に社会に貢献する。』と。誠意に関して言えば、高い志、高い倫理観、これが我々の商売で絶対に必要です。特にコンサルタントの場合は、公平性、中立性が非常に求められますので。

 目の前の仕事に真摯に向き合う。そしてお客様に満足度を提供し、結果として社会に貢献できる。そんな姿が、誠意になると思っています。


八ッ場ダム、災害関連事業等に参画

今期は業績2桁増見通し


同社グループのセグメントは、創業以来の主力事業であるコンサルタント国内/海外事業、電力エンジニアリング事業の3つ。更に、3年前に都市空間事業、1年前にエネルギー事業

が加わった。前期のセグメント別売上構成比は、コンサルタント国内/海外の2事業で全体の約70%を占める(グラフ参照)


売上構成比 2019年6月期実績 (単位:百万円)


─国内案件は先日の台風で話題となった八ッ場ダムの設計等、現在年間で約3000件を手掛けられています。近年は防災・減災や国土強靭化に関わる事業が増えていますか。


有元 八ッ場ダムは本体工事に関わる設計の他に、地質解析、貯水池周辺斜面の安定度検討、監視規格立案、渓流防災施設や観光振興計画の検討等、多岐に渡る業務を行いました。また、北海道胆振東部地震に関連しては、被害損失の算定、交通障害等の現状把握や監視、

災害復旧の検討・設計等を担っています。


─コンサルタント海外事業では、環境汚染や交通混雑に悩む都市部から農業開発に励む農村まで、幅広い場面で活躍しています。


有元 代表的な事例を挙げますと、ウガンダの首都カンパラで1990年代から交通調査

を行っております。その後も、無償での市内幹線道路整備や交差点改良等、同都市圏の交通改善に継続的に貢献しています。

 また、最近はミャンマーでヤンゴン市とティラワ港を結ぶ重要な橋梁の建設事業等に参画しています。


─前期連結業績は、売上高が前期比2%増の1086億円と6期連続で過去最高を更新したものの、営業利益は同22%減の51億円となりました。


有元 これはコンサルタント海外事業の受注で140億円程の期ずれが発生したこともあって、計画未達。残念な結果です。しかし、海外については利益が反転し、今後はV字回復の数字を見込んでおります。


─一方のコンサルタント国内事業は、今期も堅調見通しではあるものの利益は若干マイナスのようです。


有元 これは理由が2つありまして。1つ目は、人財と技術への投資ということで、向こう2年間で2000名を増員する予定です。もう1つは、ワークライフバランスの確保。この仕事はどうしても長時間労働があったため、とにかくこれは絶対にさせない。この結果、人件費を増やしていくため、利益を抑え込んでいるという形です。




都市空間事業はカナダ企業M&A

エネルギー事業は欧州法人設立


2021年6月期を最終年とする中期経営計画では、成長分野・新事業の事業戦略として①鉄道分野の生産体制強化、②都市空間事業の海外展開、③エネルギー事業の確立を打ち立てている。加えて、既存事業の海外展開や、技術と人材への投資等も推進。最終年に連結売上高1400億円、営業利益126億円、営業利益率9%を目指す。


─現在進められている成長戦略の要である海外事業の中で、鉄道分野を重点強化分野に指定されていますね。


有元 ODAの予算を見ると、円借款が2兆円規模、一般会計で5000億円程度の予算措置があります。そのうちの約4割が交通セクター、さらにうち50%が鉄道分野。従って我々はそこに対する期待に応えなければなりません。

 やはり交通分野の生産体制を是非とも強化しなければならない。もちろん自社の成長は進めますが、一方で現地企業とアライアンスを組んでいくことで、体制を整備・強化していきたいと思います。


─都市空間事業は、2016年に買収した英国の建築設計会社BDPを中心に展開されています。


有元 BDPは大学の施設やホール、博物館等の意匠設計、設備設計、構造解析等で数々の実績を持ち、ウエストミンスター宮殿の改修事業の設計を手掛けています。同事業売上高の約85%は英国ですが、そうなるとブレグジットの影響を受ける。このため、今後は英国外での展開を加速していこうと思います。来年までに、英国のシェアを70%まで落としたいですね。

 北米地域に向けては今年の2月に、建築・インテリアデザインを手掛けるカナダのクアドラングル社をBDPの子会社としてグループ化しました。アジアでは、日本工営とBDPの連携体制を拡大する計画です。─昨年末、エネルギー事業の欧州現地法人を設立しました。まずは、欧州で同事業の基盤を構築していく計画でしょうか。


有元 欧州は入札制度によって、再生可能エネルギーの市場価格が成り立っている。さらには、周波数調整のマーケットがある。そうやって、様々な仕組みが出来上がって

います。

 今欧州で進めている事業の一つは、蓄電池を使ったエネルギー事業です。もう1つは、運営するためのアプリケーションのビジネス。欧州で同事業をしっかり展開しながらエネルギーマネジメントのノウハウを蓄積し、その知見を持って日本に輸入をする、ということを考えております。






人財・技術への投資加速

真のグローバル企業へ


同社のグループ連結従業員数は5497人で、うち技術士数は1621人、取得特許数は83

個と、人財・技術共に業界トップ。国内・海外合わせた受注案件は年間で5500件を超す。今後も地域を超えたダイナミックな経営で、真のグローバル企業への昇華を図る。


─御社は国内建設コンサルタント業界で既にトップシェアですが、公共事業の伸びに

は限界がある中で更に成長できますか。


有元 今、日本工営は国内だと約6割は国からの仕事ですが、マーケットとしては国とほぼ同量の自治体からの案件が存在します。更に、民間資金を活用した新しい仕事も間違いなく増えていくので、開拓の余地はまだまだあります。

 先ほど増員の話をしましたが、国内は特に近畿を中心に中国、四国。ここは、競争環境を見たときに、まだまだ拡張する余地があります。交通関係、水関係を含めて、結構ファンダメンタルのところの需要が高いですから、そこに人を増強して対応したいと思います。


─「技術への投資」については都市空間事業で、建築物を3次元にデータ化し、施工や維持管理等に活用する「BIM」に注力されています。


有元 英国のBDPは、世界最高クラスのBIM技術を持っています。英国は規格としてBIMを採用しているので、世界でも一番先端を走っているのです。その技術を強みに、日本でもBIMのいち早い実装を進めています。去年は国内の公共事業でBIMのプロジェクトが50件ぐらいありましたが、今年は7月以降、単月で40件程の案件が出てきています。


─米国の建設業界誌ENRによると、御社の世界ランキングは44位です。世界トップは北米企業が多いですが、上位企業に比べ御社に足りない点は。


有元 上位企業の多くはM&Aを重ね、コンサルタントだけでなくコントラクター(施工業者)の部分まで取り入れている。我々の基盤はあくまでもコンサルタントなので、そういった志向はしていないです。

 世界トップクラスの会社と比較して足りないところは、やはり世界の中でネットワークをつくり、経営していくノウハウ。それから、もっと上流群の仕事に必要なファイナンスやマーケティング等の力をつけていかなければいけない。ODAに依存しない国や地域で仕事を展開するためにも、我々は日本の中で先行して、そういう方向へ進出をしていきたいと思います。






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