• 株主手帳編集部

東洋インキSCホールディング【4634・東1】印刷インキで創業、専門化学メーカーに発展 23年度売上高3000億円、営業利益220億円へ

 東洋インキSCホールディングス(4634)は、多機能印刷インキを中心に展開する専門化学メーカーだ。印刷インキで国内トップ、世界3位のシェアを占め、世界約20カ国でグローバル展開。独自の技術を生かし多数のニッチトップ製品を生み出している。新中計「SIC―Ⅱ」では2023年度売上高3000億円、営業利益220億円を掲げる。20年3月に社長に就任した髙島悟氏にその戦略を聞いた。

髙島 悟社長

Profile◉たかしま・さとる

1984年慶應義塾大学法学部卒業後、東洋インキ製造(現東洋インキSCホールディングス)入社。2013年取締役就任。14年東洋インキグループ中核事業会社のトーヨーケム代表取締役社長に就任。16年常

務取締役、19年専務取締役、20年3月代表取締役社長兼グループCOO就任(現任)。





ファインケミカル領域と

印刷インキ領域の2本柱


 同社は1896年、印刷インキメーカーとして創業。インキの原材料である顔料と樹脂からの一貫生産および合成、分散、成膜の加工技術を強みとし、その技術を生かして事業領域を拡大してきた。

 現在のセグメントは、ファインケミカル領域(色材・機能材関連事業、ポリマー・塗加工関連事業)と印刷インキ領域(パッケージ関連事業、印刷・情報関連事業)を2本柱とする。

 ファインケミカル領域は売上比率約5割、利益比率約7割を占める事業だ。市場シェアは、色材・機能材関連ではペットボトルのキャップ用着色剤1位、イメージセンサー用カラーレジスト2位、ポリマー・塗加工関連では缶用塗料1位、導電接着シート1位など高収益ニッチトップ製品を多数有する。

 印刷インキ領域は祖業を引き継ぐ分野。印刷・情報関連は紙用の各種印刷インキなど、パッケージ関連では食品等のパッケージ向け印刷インキ及び機器などを取り扱う。

 同社は2011年、旧社名の「東洋インキ製造」から「東洋インキSCホールディングス」に社名を変更し持株会社制に移行した。「SC」はスペシャリティケミカル(専門化学)を指す。祖業の印刷インキにとどまらず、専門的な化学分野に強い複合メーカーに進化する決意を込めている。

「元々は印刷インキを生業としてきた会社が、思い切り化学メーカーへシフトしようという大きな方向性を示しました。デジタル化が進む中、紙用の印刷インキは需要が減っていくのは明らかであり、専門化学メーカーへ、さらにはサイエンス(科学)カンパニーへと成長していく決意を表しています」(髙島悟社長)



2027年のあるべき姿

「SIC27」を推進


 同社は、2027年のあるべき姿を策定した長期構想「SIC27」を推進。その第

一の中期経営計画「SIC─Ⅰ」が20年12月に完了した。

 同中計を振り返ると、最終年度の20年度の業績は売上高2577億円、営業利益12

9億円であり、当初の目標値であった売上高3500億円、営業利益280億円は未達と

なった(同目標値は20年2月に売上高2900億円、営業利益150億円に修正)。

「SIC─Ⅰの目標値は相当チャレンジャブルな数値ではありましたが、その中で様々な挑戦を繰り返してきました。ただ、元々の収益の柱だったカラーフィルター用レジストに代わるものを大きく育てることができてこなかった。原材料の高騰などの環境変化も影響しました」(同氏)










マテリアルリサイクルに注力

廃プラ再利用システム構築へ


 これらの教訓を踏まえ、21年2月に新中計「SIC―Ⅱ」を発表。23年度の目標値

として売上高3000億円、営業利益220億円を達成させる計画だ。

 施策の柱の1つは、各セグメントの収益強化。ファインケミカル領域においては、リチウムイオン電池関連材料、イメージセンサー用レジスト、パッケージ・工業用の環境調和型接着剤等に注力。

 20年度の売上高1239億円、営業利益85億円(実績)を23年度には売上高1570億円、営業利益154億円に伸ばす。

 印刷インキ領域については、食品用パッケージが海外中心に伸びていることから、新興国に投資して強化を図るなどし、20年度の売上高1322億円、営業利益41億円(実績)を23年度には売上高1445億円、営業利益69億円に伸ばす。

 2つ目は、重点開発領域の創出と拡大。グリーン(環境)、デジタル、健康の3市場に的を絞り新事業を創出する。

 このうち環境分野においては、マテリアルリサイクルに注力。伊藤忠商事と協業し、廃プラスチックの再利用システムを構築する。

「当社は使用済みプラスチックから着色を取り除く技術を開発しました。インキや接着剤を分離し、素材の樹脂を取り出して再利用する仕組みを提案します。今、世界では廃プラ規制が高まっていて、持続可能な社会実現への大きなインパクトになると考えています」(同氏)

 デジタルの分野ではIoT・センサー、5G・半導体に注力する。IoTでは、行動検知システム「FichvitaⓇ(フィッチヴィータ)」を開発。床に設置したセンサーパネルの上を人が歩くと、通行人数や転倒状態などが検出できるシステムであり、将来的にはデータビジネスを育成する構想を描いている。




強みの機能性材料で

グローバルニッチを育成


 今後の課題は収益力の高いファインケミカル領域への軸足シフトだ。現在の売上構成は、ファインケミカル領域と印刷インキ領域がほぼ5割ずつを占めるが、今後はファインケミカル領域の売上比率が増えていく見込みだ。

「今中計の期間中に予算を達成する企業文化を創り、目標数値を必ず達成するべく取り組んでいます。製品についてはいきなり満塁ホームランを狙うのではなく、当社の強みである機能性の材料で単打を積み重ねてグローバルニッチを育てていきます」(同氏)