• 株主手帳編集部

沖縄セルラー電話【9436・JQ】地元企業とKDDI出資の総合通信事業社電気、農業など多分野に展開、9期連続「3 増・」を実現

 沖縄セルラー電話(9436)は沖縄を拠点にauブランドを展開する総合通信企業だ。同社は1991年に本土と沖縄地域の財界、有力企業の出資により、地元の経済振興を目的に設立された。携帯電話のシェアは圧倒的で、約51%と県内でトップ。携帯電話と光ファイバー通信を含む電気通信事業に加え、電気、農業などの新規事業にも参入し、沖縄の暮らしを多方面から支える。

湯淺 英雄社長

PROFILE◉ゆあさ・ひでお

大分県出身。1978年山口大学経済学部卒業。1988年第二電電(現KDDI)入社。2009年沖縄セルラー電話取締役、2015年副社長。2016年に代表取締役社長に就任(現任)







海底ケーブルを建設

陸の孤島にさせない


 同社の2020年3月期の営業収益は前期比1.5%増の680億円、営業利益は7.9%増の139億円。8期連続の増収増益と、コロナ下においても好調が続く。

 同社は1991年、沖縄の経済発展を強く願う地元の財界、有力企業40数社とKDDIの出資を受けて誕生した総合通信事業社だ。地元発の企業として常に沖縄を向いた経営で、地元の人々からも信頼され、順調に事業が拡大した。1997年にはJASDAQに上場し、KDDIグループ傘下にありながら唯一、再編統合の対象から外れた。

 沖縄では160ある島のうち47が有人島だが、同社では基地局の整備を行い、離島であっても精度の高いネットワーク環境を提供する。また昨年は、東シナ海ルートで沖縄〜九州間の約780キロを結ぶ海底ケーブルを自費で建設し、今年4月から運用を開始している。地方企業がこうした工事を主導するのは世界的に見てもほとんど例がない。

「既存の太平洋ルートだけでは、南海トラフ地震など大規模災害や5Gを見据えた時に十分ではない。沖縄が陸の孤島にならないための対策です。グローバル企業の他社さんにとっては“世界の中の沖縄県”ですが、当社は沖縄だけを考えていますから、決定力とスピード感が違います」(湯淺英雄社長)

 新設されたケーブルは他社キャリアへもバックアップとして有償で貸し出す。同社では毎年約60億円を沖縄でのサービス開発、設備投資に費やしている。


▲4月に運用開始した沖縄〜九州間の東シ ナ海の海底ケーブル

















家庭用光ファイバーで

顧客層をクロスさせる


 同社のau、格安スマホ「UQモバイル」を合わせた携帯電話のシェアは約5割で、県内ではトップシェアを誇る。昨年度の携帯電話の契約数はUQモバイルの伸びが牽引し、1万7600契約増の72万6900契約だった。沖縄は人口に占める若年層の割合が多く、2030年まであと数万人の人口増加を見込む日本でも数少ない地域だが、それでもモバイル市場は頭打ち状態だという。

 モバイル事業が属する電気通信事業は売上全体の7割を占めるが、同社が期待を寄せるもう一つの柱が、2010年からスタートした家庭用光ファイバー通信サービス(FTTH)「au ひかりちゅら」だ。契約回線数10万2800回線と好調で、県内でインターネット回線を利用する約60万世帯のうち光ファイバー通信が普及しているのは約30万世帯で、すでに県内の

30%超のシェアを有す。今期第1四半期ではコロナ下で在宅勤務が増え、さらに契約数

が増加している。

「当社の携帯ユーザーでFTTHの利用者は、まだ3割くらい。まだまだ顧客層をクロスできると将来性を感じています」(同氏)


電気事業が急拡大

今後の成長ドライバに


 売上の約3割を占める附帯事業には、新規事業が多数含まれているが、その中でも沖縄電力との協業による「auでんき」を展開するライフデザインサービスは主軸に位置付けられている。昨年11月の開始以来、契約数が飛躍的に伸び、2020年3月期で1万8500件、今年度中には4万5000件ほどを見込んでいる。携帯電話の1アカウント当たりの平均売上は約7000円であるのに対し、FTTHは加入者1人当たり約5000円だが、ライフデザインサービスは7000円前後で、携帯電話の平均売上と変わらない。

「光ファイバー通信とともに携帯電話の顧客網を活かし、クロス、トリプルで今後の成長ドライバにしたいですね。“一家丸ごと沖縄セルラー”を目指しています」(同氏)


通信を活用し

野菜工場を販売


 また2014年からは、「食生活でも沖縄を応援したい」と、同社の精度の高い通信システムを使ったアグリ事業にも参入した。温度、湿度、二酸化炭素量など、すべて遠隔で操作できる水耕栽培の野菜工場で、沖縄では育たないレタス類などの葉野菜やイチゴを無農薬で栽培する。農業技術と同社の通信のパッケージで主に市町村などに販売し、すでに南大東島、宮古島、石垣島でスタートしている。

 台風などで本土との輸送が途絶えた時も、新鮮な野菜を毎日出荷し、地元の人々の食卓に届ける。また空調のきいた空間で農作業のノウハウがなくてもできるため、高齢者などの雇用にも一役かっている。ゆくゆくは東南アジアへ出荷する計画もあるという。

 その他、観光情報と地元の特産物の通販をセットにしたWEBサイト「沖縄CLIP」の運営など特色あるサービスを展開し、同社の沖縄での存在感はより一層増している。


▲栽培されたレタスやイチゴなどの青 果は寄付もされる












「3増」が経営目標

新規事業を100億円規模に


 同社では増収増益に加え、配当性向40%以上の増配と「3増」を経営目標に、事業拡大を進めてきた。株主数は今年5800人から1万1800人に増え、大多数が内地の株主だ。時価総額は1100億円を超え1部上場への形式基準も満たしているが、JASDAQ市場へ現状は留まっている。「このまま地方企業として、沖縄の発展に貢献したい。地元での雇用創出に加え、観光産業以外にあまり収入源のない沖縄に利益を還元したい思いもあります」(同氏)

 2021年3月期の営業収益は700億円、営業利益140億円を目指し、「将来的には新規事業を100億円くらいに成長させたい」(同氏)と語る。



離島出身の高校生を支援

▲のべ220名を「離島ケータイ 奨学金」で支援

 同社のCSRのひとつが、離島から沖縄本島の高校に進学する子供に3年間携帯を通

信・通話料も含め無償で提供する「離島ケータイ奨学金」。毎年30〜40名の子供たちが受け取る取り組みである。

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