高砂熱学工業【1969・東1】国産化第1号技術を多数開発 空調設備業界のパイオニア


 2023年に創業100周年を迎える高砂熱学工業は、最先端の冷暖房設備工事を行うと共に、空調設備で数々の国産化第1号技術を開発してきたパイオニアだ。事業内容と環境との関わりが深いことから、「環境クリエイター」を標榜。今後はさらに環境関連事業に注力し、様々な企業や自治体との協業も図りながら、新たな事業展開を行う計画だ。


 

小島和人社長

Profile◉こじま・かずひと

1961年9月、愛媛県生まれ。84年山梨大学工学部卒業後、高砂熱学工業に入社。2017年執行役員に就任。19年経営戦略本部長、取締役執行役員を経て、20年代表取締役社長COO社長執行役員就任(現任)。21年経営企画本部管掌 兼 研究開発本部管掌(現任)。







 

設備工事では産業設備が増加

リニューアル注力で利益率改善


 高砂熱学工業の2021年3月期の売上高は2751億8100万円、営業利益は123億円。セグメントは、設備工事事業と設備機器の製造・販売事業の2つで、前者の売上が全体の98%を占める。

 主力の設備工事事業は、ゼネコンからの受注が多い一般空調設備と、元請として受注することの多い産業空調設備に大別される。前期の売上比率は、およそ6対4。実績ベースで産業設備の割合は年々増加傾向にあり、全社最適受注の取り組みの結果、従来よりも大規模化が進むとともに、全国的にも活況な状況にあるという。

 近年はリニューアル工事割合が上昇し、現在は新築4割・リニューアル6割となっている。1件あたりの工事単価については、「新築の一般空調では、数十億円規模が中心。リニューアルは、新築工事と比べ、工事金額の規模は比較的小さいが、元請受注となる比率が高い」と小島和人社長は話す。


産業用クリーンルームや

ドライルームの引合が増加


 同社の創業は1923年。建物の冷暖房工事を行う会社としてスタートした。最先端の冷暖房設備工事を追求し、30年には国産第一号のターボ冷凍機である「高砂荏原式ターボ冷凍機」を、32年には日本初のヒートポンプによる暖房設備を完成。その後も、水熱源ヒートポンプシステムや電力平準化に対応した氷蓄熱システムなど、数多くのシステム・機器を開発してきた。

「当社では、空調設備工事事業を手掛けながら、最新の研究開発を行って参りました。1960年頃からは、半導体などの電子部品製造や薬品製造の大規模クリーンルームを手がけています。また最近では、(電池製造プロセスに不可欠な)ドライルームの引き合いも多いです」(同氏)

 2010年代に入ると、数々の経営改革を行う中で、海外事業やリニューアル受注を強化し、利益率の向上を目指した。売上高総利益率(粗利)は13年度時点で一旦9%台にまで落ち込むも、その後持ち直し、17年度以降は一度も13%台を割り込むことなく推移。現在では、この水準を維持しながら、空調設備の設計・施工、メンテナンス、運転管理、リニューアルまで、ワンストップでサービスを提供している。


3本柱による成長戦略を推進

コア事業の抜本的改革を断行


 同社の20~23年度の中期経営計画においては、3つの成長戦略を掲げている。

 ひとつ目が、「国内事業の強靭化」だ。DX推進本部と設計統括部の新設に加え、働き方改革も見据えた施工体制や施工プロセスの変革を進め、コア事業の抜本的な改革を行う。

「建設業のフルBIM化を見据えて、現場での一品生産をオフサイト生産へ移行し、これまでの施工プロセスそのものを変革するための『T─BaseR』を推進しており、現在、埼玉県の八潮に本拠地を建設しています。これにより、施工における生産性向上や更なる高品質の提供など多様な効果を生むと考えています。以前から現場単位では取り組んでいたのですが、労働人口も減少する中、コストは一定かかるものの当社だけでなく協力会社も含めた働き方改革のために実施して参ります」(同氏)

 ふたつ目が、「国際事業の変革」。前期は新型コロナウイルスの感染拡大の影響を受けたが、今後はポストコロナを見据え、ビジネスモデルの見直しや強化をしていく。

 そして最後が、「環境事業への挑戦」だ。今後、中長期的なスパンで、収益性の向上に繋げていくことを狙いとするものだ。特に、グリーンエネルギーによる環境事業は、20年に運用開始した高砂熱学イノベーションセンターから、環境技術を生み出し発信する。中でもグリーンエネルギーとして注目される水素について、現在手掛けている水電解装置の大型化を通じて、脱炭素社会に貢献していく考えだ。また、世界初となる月面での水素や酸素の生成に挑戦するフロンティアビジネスも、併せて実施していくという。


環境事業への挑戦始める

長期的なスパンで収益化へ


 環境と深く関わりのある企業にとって欠かせない2つのキーワードが、「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD※1)」と「SBT※2」だ。小島氏は20年の社長就任直後から、両者への賛同と認定取得を積極的に推進。情報開示の充実を図り、今後も環境関連企業としての取り組みを深めていく。

 また、今後も同社では、「顧客から建物のエネルギーデータを預かり、エネルギーを削減・低減するサポート事業に注力を図りたい」(同氏)とし、他にも、建物の枠を超えて地球環境改善に向け同社の技術を応用すべく、様々な試みを行っている。

「今後は新たにもうひとつ、『環境事業』というセグメントを作りたいと考えております。今は事例を積み上げている段階ですが、様々な企業や自治体と組むことを通じてビジネス化し、収益化に向け長期的な視点に立って進めていければと思います」(同氏)



▲同社が開発した国産第1号ターボ冷凍機



▲イノベーションセンター外観


※1 TCFD:金融安定理事会(FSB)が設立。気候変動要因に関する適切な投資判断を促すための効果的な情報開示を求める提言をしている

※2 SBT:パリ協定が求める水準と整合した、5~15年先を目標年として企業が設定する温室効果ガス排出削減目標とその達成に向けた国際イニシアチブ



2021年3月期 連結業績

売上高

2751億8100万円

前期比 14.2%減

営業利益

123億円

同 31.3%減

経常利益

139億200万円

同 27.9%減

当期純利益

101億1600万円

同 23.5%減


2022年3月期 連結業績予想

売上高

3000億円

前期比 9.0%増

営業利益

138億円

同 12.2%増

経常利益

150億円

同 7.9%増

当期純利益

110億円

同 8.7%増

※株主手帳1月号発売日時点