• 株主手帳編集部

TOTO 【5332・東1】100年を超え、良質な水回り文化を世界に発信

 TOTOは、トイレなどの水回り製品の開発、製造、販売で知られる老舗のメーカーだ。良品を追求する研究開発力で、様々な先駆的商品を生み出している。一方で、生活向上のための提案型のリフォーム『リモデル』事業にも注力。ものづくりから設置、アフターフォローまで、顧客に寄り添ったサービスの提供を目指している。海外事業ではアジア、アメリカを中心に、売上高の2割超を占めて展開。国内外で豊かで快適な水まわり文化の創造とその実現を進めている。

喜多村 円社長

Profile●きたむら・ まどか

1957年生まれ、福岡県出身。1981年、長崎大学経済学部卒業後、同社に入社。経営企画部長、浴室事業部長、取締役常務執行役員、取締役専務執行役員などを経 て、2014年、代表取締役社長執行役員に就任(現任)。 2020年4月1日付けで代表権のある会長に就任予定。


入るのが楽しみなリラックス浴槽『シンラ』


同社の2019年3月期の連結売上高は5860億円、営業利益は401億円。国内の商品別売上げの内訳は、衛生陶器が900億円、ウォシュレットは959億円、浴室は974億円、キッチン・洗面は434億円で、水栓機器は901億円となった。売上げ好調のシステムバスは、一昨年にフラッグシップの『シンラ(SYNLA)』が5年ぶりにフルモデルチェンジして発売された。


─システムバスの好調は、新しい『シンラ』が牽引役ですね。

喜多村円社長(以下、喜多村)  評判が抜群にいいです。昨年の消費増税前には前年比150、160%くらい出ました。今も120、130%は出ています。


─入浴中の体を背中と尻、足、さらにヘッドレストによる頭を加えた4点で支持ホールドしつつ、無重力のようなリラックス感を得られるとか。

喜多村 実際には『無重力な感覚』などと言っても、なかなか信じてもらえません。でも、『シンラ』発売前にショールームアドバイザー達が研修で入ってみたら、惚れこみましてね。「自信を持って勧められる」と。それから実際に買って入られたお客様から「毎日、入るのが楽しくて仕方がない」という声が日を追うごとにたくさん上がってくるようになりました。

─製品開発に、人間工学に基づいた設計を取り入れています。

喜多村 当社は、本気で人間工学などの研究をやっています。説明を聞いても「一体何になるのか?」という訳のわからない研究を毎日やっている(笑)。今、アメリカのサンノゼでも向こうのベンチャーと一緒に研究しているんですが、そこのスタッフは「こんなことが出来たらいいよね」と夢のような理想を掲げ「5000万円欲しい、1億円出資してくれ」とダイナミックに求めてくるんですね。私は今まで“絞る方”をやっていて、でも経営者は、10 年、20年先の先鋭的な製品を開発できる環境を作っていかないとダメだと思っています。 「素晴らしい話だけど、一体いつ出来るの?」という言葉は言っちゃいけない。“我慢、我慢”の毎日ですよ(笑)。



■入浴する人を包み込むシステムバス『シンラ』の設計(ファーストクラス浴槽)











【従来の浴槽】 身体を支える面が少ないため身体にかか る力が大きい(3点支持)









【ファーストクラス浴槽】 身体を支える面が増えるため身体にかかる 力が小さい(4点支持)



『リモデルあんしん宣言』で市場を活性化


 1993年、同社は『リモデル宣言』を公表し、増改築を通じニーズに応える「リモデル事業」を展開。2018年4月には「リモデルあんしん宣言」発表。費用や施工方法など、 リフォームへの不安を取り除き、市場の活性化を目指している。WEBサイト「リモデルライブラリー」には約6000件の実例を掲載。電話やメールで365日対応する「リモデルサポートデスク」への問合せ件数も急増しているという。


─昨年の9月中間期は、消費税の引上げ特需などで、各社ともリフォーム関連の受注が伸びました。

喜多村 日本のリフォーム市場は、従来の年3%、4%といった伸長は期待できないけれど安定的に高い水準で推移していることは間違いありません。ほとんどの方は自宅を、もっと良くしたいと思っている。あとは「いつやるか?」だけなんです。貯蓄があっても先行きが不安、加えて新築と違って今ある設備でも暮らせないことはない、となると後回しになってしまうのですね。しかし、リフォームされた方はほぼ100%「こんなに良くなるんだったら、もっと早くやればよかった」と言われます。そこで、ユーザーの方々のリフォームに関わる「わからない」に真摯に応えようと始めたのが『リモデルあんしん宣言』です。

─しかしメーカーの御社が商品以外のこと…とくに工事を含めた料金にコメントするのは、難しい面もあったのでは。


喜多村 もちろん始める前には、どこまで踏み込めるのか、公正取引委員会や弁護士に随分と相談しました。公取委の方も最初は「価格の提示はダメ」などと言っていましたが、こちらも、価格統制をしたい訳ではない。写真と価格を見て「これを使ったらこれくらいかかります」と知れば、あとはお客さんが高いか安いかを感じられればいい。あくまでもリフォームの現実がわかればいいのです。打ち合わせを続けるうちに公取委の方も「こういう言い方なら」と言ってくれるようになりました。

─事例に価格まで明示されることに、加盟する全国約5000店のリフォーム店の反応はどうでしたか。

喜多村 全く問題ない、みなさん好意的ですよ。これくらいかかる、というのは事実ですから。地元で商売をしている方は競争が激しい中、評判を落としたら、一発で終わりです。だから安い材料で価格を吹っ掛けるようなことやりません。逆に「自分たちは正しくやっていますっていくら言っても限界があるけど、TOTOさんがここが大事だって載せてくれるとお客さんは安心する」と言われました。評判こそがブランドになるのですね。












高品質な製品供給で、海外市場を開拓


 同社は1977年のインドネシアを皮切りにアジア、アメリカ、ヨーロッパなど、現在 18か国で事業を展開。全売上高5860億円で海外売上高は1304億円と約22%を占めて いる。その内訳は、中国が49%、その他アジアとアメリカは、ともに24%、ヨーロッパが3%。「ウォシュレット」の地道な啓蒙活動で市場を開拓し、富裕層を中心にブランド力が 強まっている。


─日本の温水洗浄便座普及率は8割超と定着しました。次はウォシュレットのグローバル化ですね。

喜多村 例えば中国は、ずっと「売れるはずがない」と言われ続けました。しかし当社が粘り強く認知度を上げ、売れるようになったら、一気に、温水洗浄便座市場にどんどん企業が参入して来た。今や全ての中国の家電メーカーが販売しています。

─そんな競争状態になったのは、この10年くらい?

喜多村 いや、ここ5年くらいですね。去年50社だったのに、今年は300社という勢いで…。ただ懸念しているのは、ネット販売もあって、実体のない会社も多いのです。似たような製品が当社の価格の3分の1、5分の1で売られている。そんなに安く作れるということはすぐに壊れてしまうものもある。日本でこれだけ普及したのは、高いけれど安心して使える耐久消費財として作ってきたから。それを消耗品として作られてしまうと、使われた方が「すぐに壊れるから、もう買うまい」と思われてしまいます。アフターサービスの会社も少なくて、中国の方々が騙されないようにと思っています。


─アメリカは、ハリウッドスターが絶賛するなど、富裕層から火が付きました。

喜多村 昨年5月から、全米で200数十カ所と水回りで最多のショールーム展開をしているファーガソン(Ferguson)社への直販を始めました。アメリカでは、1階はトイレ、2階は水栓金具というように、扱う会社の製品を一同に展示したホールセラー(卸販売業者)の巨大なショールームで、比較しながら購入する文化があります。


─ホールセラーからは値引きなどの要求もあったでしょう。

喜多村 当社はこれまで付き合ってこなかったので、客から「TOTOの製品が欲しい」と言われると彼らは配下の2次店を通じて仕入れていました。しかし、いよいよTOTOが無視できない存在になって来たのですね。もちろん「安売りはしない」という紳士協定を結んでやっています。













▲1964年東京五輪の頃、ホテルニューオータニ に納入したユニットバスルーム




トイレを日本の良い思い出の名脇役に


 同社は東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会のオフィシャルパートナー(水回り備品)。前回の東京オリンピックでは、日本初のユニットバスをホテルニューオー タニに納入し、日本に普及するきっかけとなった。今回「日本は世界のショールーム」と位置付け、大会施設やホテルへの提供とともに、公共のパブリックトイレの整備を自治体と一緒に進めている。


─今年の東京オリンピックでは、オフィシャルパートナーとして、競技会場などに納入されていますね。

喜多村 量的には大したことではありません。それよりも、オールジャパンでオリンピックを成功させるために、各分野のトップ企業に入ってくれ、という言葉に賛同しました。またパラリンピックもあって、当社にはユニバーサルデザインに配慮したスペースの作り方などの知見があります。設計段階からいろいろご提案させていただけるのではないかということもありました。


─日本のトイレを体験したことのない、多くの外国人が訪日します。

喜多村 基本的にトイレって主役にはならないですよね。日本に来た感想が「トイレが良かった」とはならない。しかし「景色も良くて、食事も美味しい、安全で、ホスピタリティも良い、でもトイレが汚くて嫌だった」では、日本のよい思い出が消えてしまう。トイレは悪役にはなるんです。だからトイレには名脇役になって欲しい。一番の思い出にはならないけれど、ちょっとしたシーンで「富士山を見に行った時に入った喫茶店のトイレがちょっと面白くてね」と語られるような…。昨年のラグビーワールドカップでも盛り上がったじゃないですか。その流れのままに、日本の良さを脇役ながら支える、いぶし銀のような存在であり たいと思っています。


















▲世界3大デザイン賞の1つ「iFデザイン賞」 を受賞した壁掛RP便器+ウォシュレットRX



トイレ・浴室など水回り製品の老舗企業


 TOTOは1917年に設立。以来、衛生陶器、水栓金具、ユニットバス、システムキッチンなどの水回り商品を開発、製造、販売している。とくに1980年の温水洗浄便座『ウォシュレット』は、おしりを洗う新習慣を定着させた。  また1993年、リフォームから進化した『リモデル事業』を開始。生活向上のための水回り提案を進めている。海外進出にも積極的で、現在、世界18か国32拠点で展開。ウォシュレットのグローバル化を進め、中国では同社売上高の27%、米国は24%を占めて伸長している。 また、世界の水問題への取り組みなどから「Dow Jones Sustainability WorldIndex」構成銘柄に8回選定されるなど、ESG投資でも高い評価を得ている。



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