• 株主手帳編集部

SBテクノロジー【4726・東1】新主軸のクラウド・セキュリティ事業が右肩上がり テレワーク・デジタル政府向け製品で攻勢かける

 ソフトバンク子会社のSBテクノロジー(4726)が、主力事業の転換に奏功している。祖業はEC運営代行などだが、近年はクラウドとサイバーセキュリティに軸足を移行。両事業に関わる売上は、2013年3月期の27億円から20年3月期に209億円へと急成長した。新主軸の好調もあり、21年3月期業績は2年連続過去最高となる見通し。テレワーク向けや政府のデジタル化促進を見据えた新製品も投入し、攻勢をかける。

阿多 親市社長

Profile◉あた・しんいち

1958年生まれ。82年島根大学法文学部法学科卒業、アイワ入社。87年、マイクロソフト(現日本マイクロソフト)入社。98年同社常務取締役就任、2000年同社代表取締役社長就任。03年ソフトバンクBB(現ソフトバンク)入社、常務取締役就任。ボーダフォン専務執行役、日本テレコム(現ソフトバンク)取締役、ソフトバンクBB取締役 専務執行役員兼CISO情報システム・CS統括などを経て、12年ソフトバンク・テクノロジー(現SBテクノロジー)最高経営責任者(CEO)執行役員就任(現任)。

コロナ禍で急増する

テレワーク需要に対応


 2021年2月、SBテクノロジーは21年3月期業績の上方修正を発表した。同業績は、売上高が前期比18.3%増の690億円、営業利益は同21.9%増の37億円となる見通し。業績好調の一因が、同社が注力事業として育てる「セキュリティ」である。

 同分野での注目製品1つ目が、ゼロトラストセキュリティの短期構築を実現する「ゼロトラストセキュリティスターターパック」だ。従来型のセキュリティは、有害なものはネットワークの内と外との境界線で遮断するため、内側ならば安全という考え方が主流。一方ゼロトラストセキュリティは、安全な場所は存在しないことを前提とし、全ての通信を監視する。

「以前は会社に出社し、入館証で本人の確認を行い、社内ネットワークで社員のアクセス権を管理して仕事をしていました。今は、テレワークで家からアクセスするようになりましたが、会社には入ってはいけない部署、聞いてはいけない話題もあり、そういったところに自由に入れるというのはものすごいリスクとなります。今後は、一人ひとり『あなたは本物ですか』と毎回認証で確認し『あなたの権限で入れるのはここだけです』と明確に遮断をしていく。挙動を全部監視し、通常のものでない違和感のある挙動についてはレポートを上げま

す」(阿多親市社長)

 同スターターパックでは、製品導入時に必要な各種設定に同社が考える最適な数字を推奨値として設定することで、要件定義や設計期間を短縮しパッケージ化した。これにより、通常なら構築に半年以上かかるところを最短1カ月で実現可能に。またパッケージでの提供のため、コストも削減できる。導入企業に対しては海外のグローバル監視センターと国内の監視センターで、通信の監視、端末の管理、本人確認認証を一つひとつ行う。


次期自治体セキュリティ

入札にサブスクで勝負


 セキュリティ分野で注目すべきもうひとつのサービスが、「自治体情報セキュリティクラウド」だ。16年に開始し17年より運用が始まった自治体情報セキュリティとは、都道府県と市区町村がウェブサーバなどを集約し、監視及びログ分析・解析をはじめ高度なセキュリティ対策を実施するもの。標準要件は総務省が提示し、入札を勝ち抜いた民間事業者が構築・運用する。

 初回の入札で、同社は一社当たり最多(当時)となる4案件を獲得。合計4県・121市町への対応では想定以上の問い合わせによる運用コスト増で初年度は1億円程の赤字だったというが、そこで様々なノウハウを得たという。

 21年は、22年のシステム刷新に向けて5年ぶりとなる自治体情報セキュリティクラウドの入札が見込まれる年。同社はこれまで蓄積したノウハウをもとに、各県個別の構築ではなく標準要件を満たすサービスを携え入札に臨む。

 同社サービスにおける強みは2点。1つ目は、セキュリティ専門家や24時間365日稼働している監視センターといった必要な要件の全てを自前で取り揃えている点。2つ目は、自治体側で資産を持つ必要がなく、入れ替えの時間やコストを抑えられる点だ。サービス提供を行う間は、常に最新状態で利用可能。利用料を毎月受け取る料金体系で「おそらくサブスクリプションで提案する初めての企業になるだろう」(同氏)という。


阿多社長就任後から

クラウド・セキュリティ注力


 前期(20年3月期)売上高は583億2400万円、営業利益は30億3500万円。セグメントに分けると、①建築、グローバル製造業、農業の3業界向けにクラウドビジネスを展開する「ビジネスITソリューション(BIT)」、②全社・管理部門向けクラウドビジネスを展開する「コーポレートITソリューション(CIT)」、③「テクニカルソリューション」、④「ECソリューション」の4つとなる。

 前述の「ゼロトラストセキュリティスターターパック」と「自治体情報セキュリティクラウド」は、②のCITに属するもの。このCITと①のBITが、同社の注力事業である「クラウド」と「セキュリティ」分野に当たる。祖業は④のECサイト運営代行などだが、

12年に日本マイクロソフト元社長の阿多親市氏がSBテクノロジー社長に就任してからは「これからの時代はクラウドとセキュリティ」と事業転換を進めてきた。

「今後、テレワークの拡大やデジタル政府などDXが加速していく中で、我々は必要不可欠なセキュリティ対策に注力していきます」(同氏)

 ①②事業合計の売上高は、13年3月期では27億円だったが、20年3月期には総売上高の36%にあたる209億円へと拡大した。同社は16年の第2次中期計画から本格的に両事業の売上高構成比率を高める方向へと舵を切っており、22年3月期には50%まで引き上げることを第3次中期経営計画の経営指標に掲げている。



■ゼロトラストセキュリティのイメージ




■自治体情報セキュリティクラウドのイメージ