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メンバーズ【2130・プライム】Webサイト制作祖業の老舗IT企業


2023年3月期で11期連続増収も

顧客ニーズの複雑さ背景に方針変換図る


1995年創業の老舗IT企業のメンバーズが転換期を迎えている。Webサイト制作からスタートし、マーケティング領域に事業を拡げてきた。近年のDX機運の高まりに伴い、顧客ニーズは高度化・複雑化している。そこで同社は顧客ごとに専任チームを組成し、デジタルマーケティングを中心としたDX支援を行う方針へ舵を切った。

 

髙野 明彦 社長

プロフィール◉たかの・あきひこ

1975年生まれ。埼玉県出身。99年日本興業銀行(現みずほフィナンシャルグループ)入行。05年メンバーズ入社。11年同社執行役員。18年同社取締役グループ経営及び管理部門管掌。20年メンバーズエナジー代表取締役(現任)。2023年同社代表取締役 兼 社長執行役員(現任)。





 

専任チーム編成し

顧客の課題に寄り添う


 メンバーズの2023年3月期連結業績の売上収益は、176億6200万円と11期連続増収を達成している。2006年に上場して以来、社員数の増加と共に売上も拡大傾向。23年3月末時点で、10年前の約10倍にあたる2274名の社員が在籍している。成長には社員の増員が不可欠で、新卒を中心に採用を先行投資的に行っている。またデジタルクリエイター(DC)の稼働率を高めることに注力。非Webサイト運用領域を中心とした、先端技術領域に特化している社内専門カンパニー19社を設立している。

 同社は、インターネット黎明期の1995年に創業した。Webサイト制作など、ダイレクトマーケティング支援からスタートし、現在は顧客のデジタル領域全般にてマーケティング支援を行っている。同社は、専門性の高いDC3人以上の顧客専任チームを編成。デジタルマーケティング運用やデータ分析、UXリサーチ、プロダクトの開発・運用など、顧客のデジタルビジネスにおける課題に寄り添いながら支援をしている。取引先企業は2023年9月末現在、大手企業からベンチャー企業まで385社。業種は金融、小売EC、通信など幅広い。



倒産危機直面も

理念確立で再建


 順調な拡大をしているように見えるが、倒産の危機にも直面している。創業して数年はWebサイト制作に注力し、大口のクライアント2、3社で売上を支えていた。2006年上場後に2期連続赤字となり、大口顧客の離脱や社員の離職が目立ち始めた。

「当時は明確なサービスの競争力がない中でとにかく売上を重視し、深夜までなど長時間働いていたことで現場は疲弊していました。いざ振り返ってみると実力はなく、理念もないことに気づき、経営を大いに反省しました。そこで、社員の本質的な幸せを追求し、世界一になれる領域を検討した中で、Webサイト運用に集中することを決め、本業を通じて社会に貢献する会社として再建することを決断しました」(髙野明彦社長)

 その矢先、2011年に東日本大震災が発生する。

「寄付という形も考えましたが、新たに置いた経営理念と照らし合わせ、被災地に雇用を創出することが社会への貢献なのではと思い、2012年に仙台市にサテライトオフィスを開設しました。電気や水道などの社会インフラが遮断される中で、銀行やクレジットカード、通信などの災害時においても止めてはならないインフラ企業のWebサイトやデジタルサービスを支援していたこと、インターネットを通じた個人の情報発信が重視されたこともあり、顧客を通して社会インフラを支えていると感じました。本業を通じた社会貢献のイメージができるきっかけにもなりました」(同氏)

 まさにこの理念に多くの人材や企業が共感。様々な人材が同社に参画し、多くの優秀な人材を確保。以前のような高い離職率ではなくなり、顧客とも安定した取引関係を保つことに成功した。現在では地方拠点在籍クリエイターは数百名に上り、雇用を通じて地域社会へ貢献し続けている。

 


事業統合でグループシナジー図る

新たに脱炭素DXも推進


 元々は、大企業を中心にチームでデジタルマーケティング運用を支援する「EMC事業」と、専門スキルを有する人材によるデジタルサービス・プロダクトの成長支援を行う「PGT事業」の2事業を展開していた。だが、テクノロジーの変化に伴いWeb制作・運用がコモディティ化する一方、顧客のDX投資が伸びており、包括的なサービスを提供する必要があった。そこで2023年4月、創業者の剣持氏が代表取締役会長に、髙野氏が代表取締役社長に就任する二代表制への移行と同時に、2つの事業を統合して現在の「DGT事業」とした。

 事業別カンパニー毎に配置していた営業や採用・育成などの部門も統合し、同社グループ全体の専門人材スキルの可視化や育成、社内異動を活性化させ、グループ間のシナジー最大化を図っている。

 統合後サービスの確立、人材育成は着実に進捗している。IT業界の中ではいち早く働き方改革に着手。リモートワーク、女性活躍、男性育休推進などの取組みを進める中、昨年には令和4年度「なでしこ銘柄」にも選定された。

 しかし、当初の想定より僅かに遅れも出始めた。そのため2023年10月に、2024年3月期通期連結業績を下方修正。

「付加価値売上高25%成長を目標に、営業強化および高成長が見込まれる専門カンパニーのDC数を拡充しサービス確立を図ってまいりましたが、計画に対し遅れが生じています。現状、大規模な新卒採用を継続しながら成長率25%を同時に目指すことが難しくなっているので、一時的に新卒採用数を引き下げる等の軌道修正をし、収益性の改善を最優先としていきます」(同氏)

 既存社員の稼働率90%の達成及び営業利益率10%へ改善するまで、採用は抑制し、収益性の改善を最優先に実行する。

 また2020年には2030年の目指す姿を示した「VISION2030」を策定。

 前ミッション「VISION2020」より社会貢献と利益成長を同時実現するCSV事例の創出を標榜し、社会や顧客への貢献意欲の高いメンバーが集まってきたことがサービスの強みにもなっている。

 世界的に気候変動問題に取り組む中で、日本は温室効果ガスの排出を2030年に半減、2050年にはゼロにする「カーボンニュートラル」を目指す。目標達成にはデジタル抜きではできないと考え、脱炭素にDXをかけあわせた新たなサービスの展開も進めている。

 配当方針は、DOE5%程度が指標。2024年3月期の年間配当は31円を予定、初配より11期連続増配となる見通しだ。

「一定の収益悪化があったとしても、成長性が失われているわけではないという意味合いも含めてDOEという目標を掲げています。赤字にならない限り配当を継続していく予定です」(同氏)


■更なる成長に向けた方針(同社資料より)












        



 

2023年3月期  連結業績

売上高

176億6,200万円

18.2%増

営業利益

14億4,100万円

23.2%減

経常利益

13億9,900万円

26.2%減

当期純利益

10億600万円

28.4%減


2024年3月期  連結業績予想

売上高

200億円

13.2%増

営業利益

2億円

86.1%減

経常利益

1億9000万円

86.4%減

当期純利益

1億3000万円

87.1%減

※株主手帳24年3月号発売日時点




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