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Enjin【7370・グロース】

動画を“自社制作できるPR支援会社”

減収減益予想も基盤構築への準備段階



 Enjinは、中小・中堅企業、開業医等の医療機関を主要対象に、PR支援を手掛ける企業として株式上場した。前期(23年5月期)にPR戦略構築やリスクマネジメントなどを手掛けるアズ・ワールドコム社を買収し、総合的なPR支援会社へと変わろうとしている。その現在地と今後の取り組みについて同社の平田佑司取締役に話を聞いた。


 
平田 佑司 取締役

Profile◉ひらた・ゆうじ

1978年7月生まれ。2001年、松山高治税理士事務所入所。06年、矢動丸プロジェクト入社。07年、Enjin入社。19年、同社取締役社長室長などを経て、20年、同社取締役コーポレート本部本部長就任(現任)。







 

企業のメディア露出を支援

中小中心に顧客数は2238社


 同社は大企業向けの印象が強い「ブランディング」支援を中小企業向けに展開するユニークな企業だ。顧客はサービス業から不動産業に至るまで2238社に及ぶ(2023年5月31日時点)。中小企業中心のためメディア露出したいもののノウハウがないといったようなケースが多く、そのニーズに同社は応える。

 同社の2023年5月期通期連結業績は売上高が前期比13・6%増の34億8100万円、営業利益が同8・3%増の13億300万円の増収増益で着地した。

 具体的なサービスは①ストラテジックPRサービス②ダイレクトブランディングサービス③PRプラットフォームサービスの3つ。

「ストラテジックPRサービス」とは、戦略的なPRやメディア対策などのコンサルティング、業務支援に対応する。23年3月に子会社化した海外PRなどに強みを持つアズ・ワールドコムジャパン社の世界49カ国に及ぶグローバルなネットワーキングが特徴だ。この事業で、より大企業に向けてのアプローチが可能となるため顧客層の拡大に向けて重要なビジネスとなる。

「ダイレクトブランディングサービス」は同社が有するメディアとのリレーションを駆使してクライアントの露出支援を行う。テレビ・ラジオ・新聞・雑誌・WEBメディアなど多岐にわたってメディアへのアプローチを成功報酬型で手助けするビジネスモデルだ。この事業が同社の事業の中心となっている。

「PRプラットフォームサービス」は、独自に開発した、企業とメディアを結ぶ「メディチョク」の運営によるサービス。顧客からの月額利用料をもらうモデルで、経営者やPR意欲のある企業とニュースソースを求めているメディアをプラットフォーム上でマッチングするシステムだ。

 中小企業向けにこれら3つのモデルでブランディング支援をする上で有効になっているのがコンテンツを自社で制作できる強みだ。  

「当社にはクライアント企業の元へ提案に回るチームとメディアに納品する制作チームがあります。元々スタートはオウンドメディアからだったので一気通貫でやるという部分で制作チームを作っていました。それが大きくなり今の“自社制作できるPR支援会社”という形になっています」(平田佑司取締役)




  ■事業とサービスモデル



ウェブメディア起点に会社設立

時代に即したコンテンツで差別化


 同社のビジネスの起点は05年ごろまで遡る。広告もテレビ業界が大半だった中、当時、YouTubeが日本に流入し始めていた。テレビでなくWeb上で動画が流せるようになったのがきっかけとなり、広告代理店の営業でテレビCMを売るなどしていた代表の本田幸大氏は、広まりつつあったYouTubeに目をつけた。

「代表の本田が効果はテレビほどじゃないにしてもより安価にして、広告業を展開できるのではないかと考え、06年に『KENJA GLOBAL』というWEBメディアを立ち上げました。そこを起点として07年に会社を創設しています」(同氏)

 同じように中小企業を対象とするブランディング支援会社も多い中、同社は「PR要素」を付加し「動画コンテンツ」を用いたブランディング支援を行うことで、他社との差別化を図った。結果的に、中小企業の採用ニーズや、ストリーミングサービスの流行なども相まって顧客数を拡大させていった。

「二次利用可能な動画コンテンツを用いていたのが良かったのだと考えています。ただ、通常は動画を作るとなると、制作会社への依頼などコストが高いという問題が生まれますが、当社では全て内製化することでその問題も解消しています。『KENJA GLOBAL』からメディアとして制作してきたノウハウも蓄積されているので、クオリティも確実なものとなっています」(同氏)




確かな基盤構築へ

人材育成方針も見直す


 24年5月期の業績予想は売上高が前期比8・0%減の32億400万円、営業利益は同21・9%減の10億1800万円での着地を見込んでいる。減収減益の計画ではあるものの、ネガティブな要因ではなく今後の成長のためストック収益中心のビジネスモデルを構築する変革期間と位置付け短期的な減収減益は甘受する構えだ。

 また、同社の成長に欠かせないのが人材の問題である。しかし、その人材面で規模の拡大に伴い、スキルが未熟な状態での営業活動などが発生。それによるレピュテーションリスクが前期に顕在化した。その事実を受け、これまで大量採用を実施していた方針を見直し、人数制限を設けることでより洗練された人材を育てる。さらに営業活動のスキームを変更した。これまで一気通貫で行っていた活動をフェーズに分けた営業にすることで、従業員のレベルに応じた活動を可能にする。

「以前からマニュアルを徹底していたのですが、規模拡大に伴い希薄になっていました。その部分を再度見直しています。ある意味本来あるべき姿に戻した形です。今後の安定的な成長のため人材面は非常に重要。ここはしっかり徹底していこうと考えています」(同氏)



 

2023年5月期 連結業績

売上高

34億8,100万円

13.6%増

営業利益

13億300万円

8.3%増

経常利益

13億1,300万円

6.2%増

当期純利益

8億7,900万円

6.1%増


2024年5月期 連結業績予想

売上高

32億400万円

8.0%減

営業利益

10億1,800万円

21.9%減

経常利益

10億1,800万円

22.5%減

当期純利益

6億8,200万円

22.4%減


※株主手帳23年10月号発売日時点




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