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セラク【6199・プライム】

DX領域へシフトし収益性向上

2027年8月期売上高500億円を目指す



 セラクは企業向けITインフラの構築・保守を主軸とし、システムの構築・運用・保守までワンストップで提供するSIer(システムインテグレーター)だ。独自の教育制度でITエンジニアの採用・育成を行い、短期間で即戦力として現場で活躍できる人材を創出するのが強みだ。23年8月期第3四半期の売上高は、前年同期比17.9%増の154億6700万円。四半期売上高過去最高を更新した。27年8月期を最終年度とする中期経営計画では、売上高500億円を目標に掲げている。


 
宮崎 龍己 社長

Profile◉みやざき・たつみ

1957年2月生まれ、長崎県出身。80年、マーク入社。81年、米国クイーンズ大学留学などを経て87年、セラク設立、同社代表取締役就任(現任)。





 

ストック型ビジネスで成長

エンジニア数は3000名超



 ITエンジニアの不足が叫ばれて久しい中、独自の人材教育プログラムによって、この課題をクリアしたのがセラクだ。同社は、ITシステムの構築や運用などIT支援事業を展開。2023年8月末現在で3000名以上の社内ITエンジニアを抱える。

 主力事業は売上高の9割を占める「デジタルインテグレーション事業」。具体的には、SI(システムインテグレーション)事業とDX(デジタルトランスフォーメーション)事業の二本柱。双方の技術の活用を目指して今期から同一セグメントとして立ち上げている。

「当社の特徴は、新卒・中途を含めたIT業界未経験者を正社員として採用し、2~3カ月の初期研修でIT人材として戦力化できていることです。初期研修後は新人の多くがSI領域の現場に配属されます。ここで3年間しっかり経験を積むと、SI領域のスペシャリストやDX領域のスキル習得、プロジェクトマネージャーなどを目指すことができます」(宮崎龍己社長)

 同社は7月12日、23年8月期連結業績予想の上方修正を発表。売上高は前期比16・2%増の207億5000万円、営業利益は同117・7%増の19億3000万円。営業利益は、2期ぶりの過去最高益更新の見通しとなった。

 23年8月期第3四半期(累計)連結業績の売上高は前年同期比17・9%増の154億6700万円、営業利益は同135・6%増の16億3800万円。売上高営業利益率は、前年同期の5・3%から10・3%へと大幅に改善している。





「教育型IT人材創出モデル」

独自の採用力・教育力に強み



 IT業界は人材不足に悩まされ、同業他社が人材採用に苦戦するなか、同社は前期において630名純増した。「人材育成には、採用力・教育力2つを強みとしてきた」と宮崎社長は話す。

 本社を含め各支社に採用担当者を置き、全国を対象に正社員の通年採用を実施。IT未経験者をメインとした募集だが、エンジニアとしての適正判断のふるいにかけ、厳選して採用している。未経験者を採用・教育し、戦力化する取り組みを始めたのは約20年前に遡る。

「当初、会社の規模がまだ小さい中でセキュリティエンジニアを集めるハードルは高いのではないかと考え、ネットワークエンジニアに間口を広げて採用をスタートしました。全国に採用拠点を設け、通年でエンジニアを採用・教育する体制を整えています。現在では、ネットワークエンジニアからセキュリティエンジニアにステップアップしていく仕組みが出来ています」(同氏)

 教育力では、座学だけではない独自のカリキュラムで初期教育プログラムを確立。本社内に実際の顧客での仕事の現場を限りなく再現した「Tech Lab(テックラボ)」を開設。ソフトウェアや機器、案件で使用する実機環境を整え、第一線で活躍するエンジニアから研修を受ける仕組みだ。

 2~3カ月間の初期研修を終えた後は、実際の現場に配属される。先輩エンジニアと一緒になり現場でさらに腕を磨いていく。その後もフォローアップ研修などを通じてスキルアップを継続する仕組みとなっている。

 この人材育成は功を奏し、社内ITエンジニア3086名(23年3Q時点)の23年8月期第3四半期における稼働率(初期研修を修了した人員に対しての稼働率)は、98・2%に上る。




転換点迎え次なるフェーズへ

DX領域のエンジニア育成強化



 社内ITエンジニアの増加とともに売上高は伸長したが、利益率はエンジニア採用をメインとする成長投資負担の増減によって変動している。成長と共にエンジニア採用に係る投資負担は薄まるほか、DX事業への移行等によって案件単価の向上に努め、全体の収益性を高めていく。

「18年頃からDX領域の市場拡大を見据え、SI事業からDX事業への移行を進めています。売上高全体の約7割を占めるのがSI事業、約3割がDX事業で、その成果が出始めています」(同氏)

 コロナ禍以降、DX領域のSFA(営業支援システム)・CRM(主にマーケティングやカスタマーサポート機能)のクラウドシステム運用・定着化市場が急速に拡大。SI事業に比べて利益率が高いDX事業を伸ばすことで収益は大幅に改善している。前期実績でDX事業は売上構成比では3割に満たないが営業利益では5割近く稼ぎ出している。

「収益性向上のため、難しい案件やDX領域へと更にシフトしていき、この流れを拡大させていきたい。当初ネット系SIer(システムインテグレーター)と言っていましたが、先端領域に取り組むデジタルインテグレーターとして、エンジニアと営業が共に成長していかなければいけません」(同氏)

 株主還元は年間配当に変更はなく、1株8円6銭を予定する。



▲現場を再現した「TechLab」で研修を実施




 

2023年3月期 連結業績

売上高

178億5,900万円

17.0%増

営業利益

8億8,600万円

34.6%減

経常利益

14億3,400万円

21.9%減

当期純利益

9億6,600万円

22.1%減


2024年3月期 連結業績予想

売上高

207億5,000万円

16.2%増

営業利益

19億3,000万円

2.2倍

経常利益

21億4,000万円

49.2%増

当期純利益

13億6,000万円

40.8%増


※株主手帳23年10月号発売日時点




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