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タキヒヨー【9982・スタンダード】創業272年、名古屋地盤の繊維商社


黒字体質復活プランで4期ぶり黒転達成

来期には初の中期経営計画発表予定


 タキヒヨーは1751年創業の繊維商社だ。京呉服商から始まった同社は、62年に和装から洋装への大転換を図り、業容を拡大した。現在はアパレル卸、小売、テキスタイルなどを手掛けている。同社では近年の業績低迷を受け、23年2月期から「リバイタライズプラン」(黒字体質復活計画)を実施。収益改善施策により、23年2月期の業績は売上高が前期比15%増、営業利益は4期ぶりの黒字転換で着地した。今期も黒字体質の定着に取り組む。


 

滝 一夫 社長

Profile◉たき・かずお

1960年生まれ。86年、ニューヨーク州フォーダム大学卒業後、ワールドに入社。90年、タキヒヨー入社。百貨店事業部、テキスタイル事業部を経て、2004年に取締役、08年常務取締役、11年代表取締役社長に就任(現任)。






 

量販店向けアパレル主流

しまむら向け納品が3割

 

 タキヒヨーのセグメントは、売上の90%を占めるアパレル・テキスタイル関連事業、同1・4%の賃貸事業、同6%のマテリアル事業、同1・5%のライフスタイル事業、その他で構成される。

 主要のアパレル・テキスタイル関連事業の売上構成は、レディスアパレル44・7%、ベビー・キッズ21・4%、テキスタイルOEM14・8%、ホームウェア10・4%、メンズ4・2%、その他4・5%。アパレル分野では、120人を超える自社デザイナーによるマーケットリサーチ・企画・デザインから、中国・ASEANにある約200の提携工場への生産発注、大型センターによる品質管理・物流までを一貫して手掛ける。強みは、「Disney」や「EDWIN」などのライセンス商品。取引先は全国の量販店や専門店で、中でもしまむら(8227)は納品先の3割強を占める主要取引先だ。なおテキスタイルでは国内自社工場で生産した毛織物などをメーカーや商社に販売している。

 営業利益率65%の不動産賃貸事業や、化成品・合成樹脂の販売を行なうマテリアル事業は、売上比率こそ低いものの、同社の利益を下支えする事業である。



60年代に洋装へ転換

量販マーケットを創造


 同社の創業は1751年。初代兵右衛門が絹織物の卸売業を創業したのが始まりだ。1875年に名古屋に本店を移設してからは、名古屋銀行(後の東海銀行)開設、学校開設、日本初の国際ホテル開業、橋の寄進など、名古屋の名門として地域に貢献してきた。呉服の繊維卸を主業としてきたが、転機は1962年。伊藤忠で勤務していた七代目が、和装から洋装への大転換を図った。カリフォルニアのアパレルブランドからマーチャンダイザー、デザイナー、生産担当を招聘し、洋服のものづくりを習うところから始めたという。国内で量販店が次々に誕生した60年代後半~70年代初頭には、ジャスコ(現:イオン)やユニーなど、各社の合併を仲立ちし、量販マーケットを創造。その後拡大する量販店への卸の布石となった。長い歴史の中ではオイルショックによる業績悪化、バブル期の好調など、波の浮き沈みを経験してきた。

「単体での過去最高売上は93年に1014億円、営業利益は91年に33億円に届きました。ダナキャランのライセンス商品がヒットした時代ですね。近年の売上は2016年に843億円までいきましたが、以降は停滞気味です。量販店用製品を作り出してから50年経ち、社内全体が安定に慣れ、世の中のスピード感の変化に出遅れてしまったことが要因です。昔は半年掛けて製造していたものを、45日で納品する時代になりました。22年の20億円超の赤字は、シェア奪回のために売上増を重視したため、物流などのコストが上がってしまったためです。そこで黒字化への道筋を立てました」(滝一夫社長)

 同社では前期より、3か年計画として「リバイタライズプラン(黒字体質復活計画)」をスタートさせた。その結果、23年2月期は売上高が前期比15%増の618億1300万円。営業利益は4期ぶりに黒字回復し、9400万円で着地。中でもアパレル・テキスタイル関連事業は、売上高が前期比14・4%増の561億4600万円、営業損失も前期26億4200万円から3億9800万円に大幅縮小し、復活の兆しを見せている。


黒字体質復活計画始動

潤沢な資金力で新事業挑戦


 黒字体質復活計画に則り、前期までは適正利益の確保・原価上昇分の販売価格改定によるトップラインの立て直しや、希望退職者募集・海外拠点統廃合といった固定費削減により、赤字脱却への布石を打った。今期は卸売事業における採算性の見極めと、「低利率の受注を追わない」など適正利益を確保する営業スタンスを徹底。また生産コスト上昇への対策として東南アジアでの生産比率拡大に取り組んだ。その結果、経費率は大幅に改善されている。24年2月期第2四半期時点では売上高が前年同期比6・3%減の中、売上総利益率は同3・3%増となった。通期では売上高が前期比2・9%減の600億円、営業利益は同323・5%増の4億円を計画している。

「企画・生産・販売・クオリティコントロールの各部署で業務改革のアクションプランを作り、DXを進めています。まずはPDCAサイクルを確実に回し、マネジメントする者の意識も変え、当たり前のことを当たり前にやっていくこと。その延長で利益がついてきます」(同氏)

 また同社では不動産賃貸やコメダ珈琲店のFC、化粧品や高級自動車の販売、物流業務の受託など、非繊維分野にも参入し、次なる柱の開拓を進めている。自己資本比率64・2%と資金力があるからこそ、新事業への柔軟な挑戦が可能だ。

「新事業は8割が失敗して当然ですが、残りの2割が今後の成長材料となるなら、挑戦を続けたい。もちろん創業以来扱ってきた生地分野は第一です。現在はヨーロッパメゾンへの販売が伸びていますので、世界が驚くような新素材の開発に向け積極的に投資しています。今後の詳細は、来年度中に発表する予定の中期経営計画をご覧になっていただきたい」(同氏)





 

2023年2月期 連結業績

売上高

618億1,300万円

15.0%増

営業利益

9,400万円

黒転

経常利益

3億300万円

黒転

当期純利益

-2億8,200万円

赤縮


2024年2月期 連結業績予想

売上高

600億円

2.9%減

営業利益

4億円

323.5%増

経常利益

4億円

31.7%増

当期純利益

4億円

黒転

※株主手帳24年2月号発売日時点




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