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三洋貿易【3176・プライム】自動車内装部材等ニッチな高付加価値商材扱う専門商社


新長期経営計画「SANYO  VISION  2028」が始動

人的資本・事業・DXに5年で200~300億円投資


 近年、戦略的なM&Aが着実な利益貢献へ繋がり、成長を遂げている三洋貿易。23年9月期は売上・利益ともに前期比2桁増の増収増益で過去最高を更新した。今期より新長期経営計画「SANYOVISION2028」が開始。事業投資や人的資本投資など、5年間で200億~300億円の成長投資を予定している。


 

新谷 正伸 社長

Profile◉しんたに・まさのぶ

1958年6月、東京都生まれ。82年早稲田大学理工学部卒業、同年4月三洋貿易入社。2012年三洋貿易執行役員兼Sanyo Corporation of America社長、13年取締役事業本部長等を経て、18年代表取締役社長就任(現任)。座右の銘は「人事を尽くして天命を待つ」。




 

「一商品一仕入先」がモットー

自動車関連の売上が約四割を占める

 

 三洋貿易は、1947年の旧三井物産解体に伴い、同社神戸支部の有志により設立された。国内で初めて合成ゴムを輸入したのを皮切りに、ゴム製品、自動車内装部材、塗料・インキなどの化学品、機械資材など、希少性の高い商材を扱うニッチトップとしてポジションを確立。海外10カ国に16拠点を配置し、グローバルに成長を続けている。

 現在の注力市場は、「ファインケミカル」「モビリティ」「サステナビリティ」「ライフサイエンス」の4市場。セグメント別売上高は化成品31・3%、機械資材38・4%、海外現地法人29・4%で、約四割は自動車関連にあたる。強みは、数十年の取引で築いた仕入先との強固なパートナーシップだ。同社のモットーは「一商品一仕入先」。国内にない商材を発掘・輸入し、国内への紹介・拡販、アフターサービスまでをいわば仕入先メーカーの営業部隊に近い立ち位置で行なってきた。2つ目の強みは、営業員の約半数が理系出身であること。同社では基本的に汎用品を扱わない。営業が高い専門性を備えているからこそ、顧客ニーズに合わせて商品の企画・開発を仕入先と協働し、量産・アフターサービスまで一気通貫で提供できる。また汎用品を扱わないからこそ、同業よりも高い利益率を実現しているのも強みの1つだ。





23年過去最高業績更新

新規事業やM&Aで布石を敷く

 

 前長期経営計画「VISION2023」最終年度にあたる23年9月期は売上高が前期比10・2%増の1225億9600万円、営業利益は同26・7%増の67億4000万円で着地。日系自動車メーカーの生産回復や、過去に実施したM&Aが着実に利益成長へ貢献し、売上・利益ともに過去最高を更新した。

「前長計の連結経常利益目標75億円はコロナ禍の影響もあり71億円に留まりました。ROE目標15%は11・8%。自己資本比率63%と高水準になったことも要因です。海外拠点売上成長率目標10%は特に中国・ASEANが伸び、12・9%で達成しました」(新谷正伸社長)

 同社では今後に繋がる布石として、20年に事業開発室を開設。同開発室から事業化に至った一つには、22年に岐阜県瑞浪市に開設した自動車業界関係者向けのEV展示場がある。日本未発売車含むEV車10台分の分解部品や完成車4台が並び、EV車のCTスキャンデータも閲覧可能。最先端技術調査の場として注目を集めており、自動車・部品・部材・化学メーカーから4000名以上が来場している。

 また昨年10月には、DXの内省化・IT化の加速・AI時代への対応を目的に、システム会社をM&Aで取得。またバイオ事業強化のため、22年・23年と続けて2社を買収した。



28年までの新長計がスタート

最重要投資は人的資本

 

 同社では今期より、新長期経営計画「SANYO VISION 2028」が始動した。財務目標は、28年9月期末にROE10~12%、営業利益90億円、営業利益率5・1%、営業キャッシュフロー黒字、成長投資200~300億円、自己資本比率50%以上、PBR1倍超。収益基盤強化に向け、既存事業の成長、新規ビジネスの開拓、連結経営体制の強化、投資案件の推進を掲げている。

「成果を出した前長計とコアは変えず、更に深化させた内容になりました。成長戦略の一つであるM&Aへの方針は20年以降一貫しています。『既存事業とのシナジー効果』『海外展開加速』『成長分野』のうちどれかが該当することが条件です。買収先の経営陣には当社のエースを送り込み、各社の良さは活かしつつも、財務を可視化し、研修などで理念を共通化させています。買収先は未上場企業が多いので、グループに入ることでプライム上場企業のバックグラウンドによる信用や、海外展開の拠点を得ることができる。利点を活用し、グループ会社自身の成長、ひいてはグループ全体の成長に繋げてほしいと考えています」

 新長計では事業投資、DX関連投資、人的資本投資のため、5年間で200~300億円の成長投資を予定。特に人的資本投資を最重要部分としている。

「M&Aの成功も、既存事業の成長や新規事業立ち上げも、人材が資本となります。そこで人的資本強化のため今期から『Sanyoアカデミー』を開設しました。今までも研修はありましたが、社員に十分に目的が伝わっていませんでした。アカデミーでは『自燃(じねん)型人材、自分で動ける人材の育成』を目的に、社員を4つの年代に分けてセミナーや海外研修などのインプットの場を設けます。今期スタートを切ったばかりですが、大手総合商社以上に育成に力を入れていきます」(同氏)

 同社では株主還元に関しても新長計の財務目標に織り込んでおり、継続的な増配・安定配当を基本とする方針だ。


 

2023年9月期 連結業績

売上高

1,225億9,600万円

10.2%増

営業利益

67億4,000万円

26.7%増

経常利益

71億4,900万円

13.5%増

当期純利益

48億3,000万円

12.4%増


2024年9月期 連結業績予想

売上高

1,260億円

2.8%増

営業利益

60億円

11.0%減

経常利益

62億円

13.3%減

当期純利益

40億円

17.2%減

※株主手帳24年2月号発売日時点




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