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高速【7504・プライム】食品包装資材専門商社

国内52カ所展開のスケールメリット発揮

購買力・提案力高めシェア拡大に挑む


 高速は食品包装資材の専門商社であり、業界唯一の上場企業だ。同業界には地場で展開する中小企業2000社が林立しているが、同社は本社のある東北を中心に国内52カ所に広域展開し、トップシェアを獲得している。世帯数の増加や、中食・テイクアウト・デリバリーのニーズ増加により、包装資材マーケットは年々伸長。同社も増収増益を続けている。業界市場規模1兆6000億円~2兆円のなか、業界最大手の同社のシェアは5%ほどであり、今後も開拓の余地は十分だ。赫裕規社長に今後の成長戦略を聞いた。

 
赫 裕規 社長

Profile◉てらし・ゆうき 

1971年8月生まれ、宮城県出身。95年、積水化成品工業に入社。2000年、高速入社。08年取締役連結事業本部長、10年富士パッケージ(現・高速シーパック)代表取締役社長、13年高速代表取締役副社長に就任。

14年代表取締役社長に就任、21年代表取締役社長執行役員に就任(現任)。





 

23年3月期は売上高8期連続、

利益は5期連続で過去最高更新



 スーパーにある肉や魚のトレイや弁当容器、おにぎりやサンドイッチのパック、シールラベルやお菓子の紙箱。これら「食品包装資材」は通常、スーパーでは1店につき500~600種類も使用する。しかし小型化が進むスーパーのバックヤードに、これだけの種類の資材をケース単位でストックするスペースはない。そこでスーパーや食品工場は、商社を介して必要な時に必要量の資材を調達するのが業界のスタンダードとなっている。

 同社は、業界トップの食品包装資材専門商社だ。包装資材をメーカーからケース単位で仕入れ、倉庫で小分け・ピッキングして顧客に配送している。競合は地場に根付いた中小企業がほとんどで、国内に約2000社が存在する。そのうち広域展開しているのは1%に当たる20社前後。同社は東北を中心に全国52カ所に展開している。

 「食品包装資材マーケットは毎年2~3%の伸長を続ける成長市場です。背景には世帯数の増加や、女性の社会進出による中食(※)やデリバリー・テイクアウトの増加があります。市場規模は1兆6000億~2兆円で、当社のシェアは5%ほど。規模のメリットを活かして営業していくことで、更なる開拓の余地は十分にあります」(赫裕規社長)

 23年3月期の連結業績は、売上高は前期比7・7%増の988億5000万円。8期連続で過去最高を更新した。営業利益は同8・4%増の40億800万円で、5期連続で過去最高益を更新。今期も増収増益の見込みだ。セグメントは単一だが、売上は食品容器40%、フィルム・ラミネート20%、紙製品・ラベル13%、機械・設備資材・消耗材18%、段ボール製品5%、その他2%で構成される。主要顧客は売上の4割を占める食品スーパーマーケット、2割が食品加工業、その他が農・水産加工業や小売業など多種多様なローカル企業だ。




規模のメリット活かした強み

調達・提案・物流・開発力


 同社は1966年、レジやレジ記録紙の販売会社として創業した。食品包装資材分野に参入したのは72年。業界内で後発であったことや、もともとレジの販売店だったことを背景に、地域密着を基本とする同業とは営業方針が異なり、エリア拡大を積極的に行なってきた。物流が増えれば近隣に新たな営業所を増やし、スーパーの出店に伴って一緒に新地域に出店するなど、いわゆるエリアドミナント戦略を展開してきた。その結果、現在では業界でも抜きん出た営業所数による情報・物流ネットワークを構築できた。

 同社にはスケールメリットを活かした4つの強みがある。1つ目が「商品調達力」。同社の仕入れ先は1600社以上、取扱品目は14万点以上と、業界一の購買力がある。2つ目の強みが「営業提案力」。同社では営業所の経営を各所長に任せており、調達する商品もマーチャンダイジング戦略も所長に権限を委ねている。そのため会社からのトップダウンではなく、顧客本位での提案が可能だ。また広域展開により、顧客と情報量が多いため、たとえば顧客Aとはエリアが重ならない遠方の顧客Bの成功事例を共有することもできる。同社では企画・デザインを含めた商品開発、売り場づくりまで踏み込んだ提案を行っている。

 そして3つ目の強みが「物流力」だ。営業拠点52カ所に加え、グループ会社の営業拠点22カ所、工場9カ所で全国に地域密着型の物流ネットワークを構築している。4つ目の強みは「商品開発力」。同社ではグループ企業に食品包装資材メーカーを数社保有しており、顧客からの要望を商品化に繋げている。

 仕入れ先メーカーとの共同開発も行っており、近年では環境に配慮したバイオマスプラスチック40%配合のカトラリーがヒットするなど、成果を挙げている。



年3~5%の売上高成長継続

商品開発とM&Aを強化



 現在、同社では21年度から25年度までの中期経営計画が進行中だ。同計画における25年度の売上高目標1000億円プラスアルファは今期達成予定。営業利益目標40億円プラスアルファは前期達成済みだ。

「今後も年平均3~5%の売上高成長率を維持していく目標が事業展開の柱としてあります。専門商社としてのオーガニックグロースに加え、メーカービジネスや商品開発の拡大による利益貢献、そしてM&Aによるグロースの3軸による成長で、現在のマーケットシェア5%を10%まで伸ばしていきたいです」(同氏)

 グループ内メーカー、および取引先メーカーとの共同開発製品は、同社にとって利益率の押し上げ要因となっている。今後は特許製品の開発や、同社が総代理店となれるような製品の開発が目標だ。そうした製品を未開拓地域の同業商社に卸せるようになれば、売上の大きな拡大が見込める。

 M&Aに関しては、04年~13年まではM&Aで事業を拡大していた実績がある。多くの同業で後継者問題が発生していた時期だったこともあり、10年間で10社・年商260億円分を買収した。14年以降は2社に留まっているが、今後もシナジー効果の高い同業のM&Aを再び積極的に行っていく計画だ。




連続増配にこだわり

今期で20期連続増配へ


 同社では前期時点で19期連続増配を達成しており、前述の中期経営計画でも「創業60周年にあたる25年度に22期連続増配」を目標に掲げている。

 「急拡大しないかわりに地道な成長を実現できるビジネスモデルですので、配当も少しずつでも着々と積み上げていきたいです。配当性向は23年3月期に31・9%でしたが、近年の状況からすると少ないのではというご意見もあります。中計が終わったら検討したい」(同氏)


▲同社が開発した食品包装資材


 

2023年3月期 連結業績

売上高

988億5,000万円

7.7%増

営業利益

40億800万円

8.4%増

経常利益

42億4,000万円

8.8%増

当期純利益

29億7,800万円

11.9%増


2024年3月期 連結業績予想

売上高

1,030億円

4.2%増

営業利益

41億5,000万円

3.5%増

経常利益

44億円

3.8%増

当期純利益

30億8,000万円

3.4%増


※株主手帳23年10月号発売日時点




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